一晩だけイケメンの話

 「ただしイケメンに限る。」

 漫画とかドラマとかにある出会いって、この一言に尽きると思う。

 普通の男に落ちることなんて、ないと思ってた。

 「信じられない!!あのクソ野郎!」

 もうすぐ30になるのに、結婚考えてた彼氏にフラれた。

 でも何と23の女と付き合うらしい。会社の新人に手を出したんだと。

 しかもそれを初デートのおしゃれなイタリアンで言われた。

 「色々あり得なさすぎて笑えるわ…。」

 

 駅まで無駄に遠いから、綺麗な夜景を見ないといけない。

 すっごく虚しい気分。足を引きずるように駅に向かう。

 「ぎゃ?!」

 最悪なことに何でもないところで転んでしまった。いつもより高いヒールで来てしまったからだ。

 「もう、やだ…。」

 泣きそうになった。その時、

 「大丈夫ですか?」

 顔をあげるとそこには、

 イケメンでもないけど不細工でもない普通の男の人がしゃがんでいた。

 たぶん日中会ってたらお互い何も思わずに、記憶にも残らないと思う。

 でも今夜は

 ・彼氏にフラれた

 ・夜景が綺麗な街

 ・転んで身も心もズタボロ

 なんて最悪で最高の条件が揃ってしまっていたから。

 今の私には、彼が漫画やドラマとかに出てくる最高のイケメン。

 「大丈夫じゃ、ないかもです…。」

 ああ、どうか、今晩だけイケメンなあなた。

 私を恋に落としてください。

 以上、らずちょこでした。

 ※この物語はフィクションです。

 ここまで読んでくださった皆様に感謝を。

 ではまた次回。

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