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1つの国と王の話

 その国の王様は変わっていました。王なのに庶民と変わらない服を着て、庶民と変わらない食事をし、庶民と同じように暇があれば畑を耕したそうなのです。

 「皆のことを理解するには、皆と同じことをせねば。」

 王様はいつもそう言いました。お陰でよその国から来た使者は、本当にこの人が王様なのかと大臣たちに聞くのでした。

 何と暗殺者は王様と間違えて他の貴族を狙ってしまったという逸話もあるほどでした。

 街の皆はそんな王様が大好きでしたが、大臣たちは複雑でした。王様にこの国の代表者としてふさわしい服を着てほしいのです。

 「威厳のある服を着てください。あなたは王なのです。」

 皆、口を揃えて言いました。王様はそんな大臣たちの気持ちも分かっていましたが、信念は変えませんでした。

 「本当に王になってしまったら、皆私から離れていくだろう。」

 王は、全てを手にいれられますが、その代わり孤独になることを彼はよく知っていました。

 王であるこの人物は、あまりにも寂しがり屋過ぎたのです。

 だからこそ、誰よりも好かれましたが、王としては失格だったのです。

 以上、らずちょこでした。

 ※この物語はフィクションです。

 ここまで読んでくださった皆様に感謝を。

 ではまた次回。

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