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2本のワインの話

 どうも、らずちょこです。

 ワインはお好きですか?自分はアルコールには弱いくせにワインの味が好きでついついお店で頼んだり専門店に行ったりています。

 今回はそんなワインのお話です。
 ※この話はフィクションです。

- 話しても話さなくても

 女性はとあるお店であるワインを見つけた。「サクラシラーズ」という名前の、綺麗な桜のラベルがついた赤ワインだ。

 店主いわくこのワインは1944年にオーストラリアで捕虜となっていた日本兵が逃走をはかり、約200名が殺害されたカウラ事件の死者を弔うために植えられた桜をモチーフに作られたらしい。※詳しくはカウラ事件とサクラシラーズで検索

 その話を聞いてからだとますますこのラベルに深みが出てくる。なんて切なくもいい話なんだろう。
 せっかくだから職場の皆と飲むときに持っていこうと思い、女性は1本購入。

 しかし、当日。持ち込んだサクラシラーズは無造作に開けられ、何の情緒もなく飲まれていく。

 
 待って、ねぇ待って。このワインにはすごくいい話があってだな。それ聞いてから飲んでほしいんだが。どんだけ酒好きなんだ。

 ただ、皆がこのワインを美味しいと言いながら飲んでいると不思議と「まぁ、いいか。」と思えてきた。

 この人たちは純粋に美味しいお酒が飲めればそれでいいのだ、そしてサクラシラーズはこの人たちのお眼鏡にかなった。実にシンプルでこれはこれでいい。うんちくに頼ろうとした自分を恥じた。

 そう思っていたら、いつの間にかサクラシラーズが無くなっていた。女性はその日、通販サイトを漁ったらしい。

- きっとまた会いに来る

 ある男性が何かいいお酒はないかと探していたらワイン専門店を見つけた。

 まだその時はワインの美味しさを知らなかったが、何となくその店の雰囲気に惹かれて入店。

 店内を見回していたら、見慣れないラベルのワインがあった。店主に名前を聞くと「カラムリ・プリミティーヴォ」というワインらしい。

 細長いラベルがカッコよく、味が分からないのにも関わらず気になってしまった。

 店主にその事を話すと
 「それはきっとワインが呼んでるんでしょうね」
 とにこにこ微笑んだ。そういうことあるの?

 店主はまた続けた。

 「ワイン好きにはね、1本試しに飲んだら他を探して同じワインを飲まないってスタイルの人が多いんですがね。このワインだけはリピーターが多いんですよ。何度でも飲みたくなるって。」

 そういうものなのか?ワイン初心者の男性にはピンと来なかったが、それでもそれぐらい美味しいものなら飲んでみたい。そう思い購入。

 家に帰って適当なつまみと一緒にワインを開けた。
一口飲んでみたら思っていたより数倍飲みやすくて美味しい。

 初心者には向かない味なのかと不安だったが酸味と渋さのバランスがよく、何より風味がとても綺麗なものだった。

 確かにこれは何度でも飲みたくなるなぁ、つまみともよく合う。

 1本飲み干した頃にはすっかりカラムリ・プリミティーヴォの虜になっていた。

 それ以降その男性はワインはカラムリ・プリミティーヴォしか飲まなくなっていた。店主の言葉が本当かどうか分からないが、少なくとも1人、リピーターが生まれたのだ。

 後日、後輩に美味しいワインを聞かれた男性は

「カラムリ・プリミティーヴォがいいぞ。」
 と話した。またリピーターが生まれる予感がする。

 案外見た目で選んだりするといいワインと出会ったりしますよね。

 ここまで読んでくださった皆様に感謝を。
 ではまた次回。

 

 

 

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