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1人の赤い髪の話

 初めてその女を部屋にあげたのは真夜中だった。

 電気を消すと、月の光とカーテンのおかげで青い光が差し込んでくる。

 少し低めの位置で結んだ女の赤い髪が、青い光に照らされた。

 「金魚みたいだ。」

 女に気づかれないように呟いたつもりだったけど、気づかれたのかこちらを向いた。

 金魚が水槽の中で泳ぐように、女の髪が青い光の中漂った。

 「綺麗だ。」

 柄にもなく素直に褒めた。女はにこりともせず、ただ冷たく、

 「聞き飽きてる。」

 とだけいって、髪を結んでいたゴムを外した。

 金魚が人魚になったようだった。燃えるような赤が、青白い肌を隠す。

 この人魚と一生海を漂うのも悪くないな。

 2人同時に腰かけられて、波打つようにきしむベッドの音を聴きながら、そう思った。

 人魚の胸からは、とくとくと、落ち着く音が聞こえて、本当に海を漂ってるようだった。

 以上、らずちょこでした。

 ※この物語はフィクションです。

 ここまで読んでくださった皆様に感謝を。

 ではまた次回。

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