涙の糸 -22-

 いつも、朝はコーヒーの匂いとワリマの声で目が覚める。

 しかし、今日はコーヒーの匂いもワリマの声もしない。

 「まだ寝てるのか…?」

 そう思ってワリマのベッドに向かう。まだ目を閉じて横になっているワリマがいた。だが、なんだかおかしい。ずっと

 「やめて…やめて…!」

 と繰り返している。悪夢でも見てるのか?

 「ワリマ?」

 少し大きめな声で呼ぶと、パチッと目を開けて、すぐに壁際まで逃げていった。

 「落ち着け、俺だ。」

 「あ…。」

 ワリマの怯えた顔なんぞ初めて見た。目に薄く涙をためて、震えながらこちらを見ている。

 あぁ、久しぶりに見たな。この感じ。

 これは、今から暴力されることに怯えてる顔だ。


つづく

以上、らずちょこでした。

※この物語はフィクションです。

ここまで読んでくださった皆様に感謝を。

ではまた次回。

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