イベント見聞録|ハイブリッドは真のスタンダードになれるのか 空飛ぶタクシーに乗って、世界のイマイマを探しに行ってみた(SXSW 2022)
こんにちは。あるいはこんばんは!
コミュニケーションデザイン事業本部の舘山です。
いきなりですが、日本語でオールタイム使える挨拶ってぱっと出てきませんよね。
レイのnoteは「こんにちは。あるいはこんばんは!」ではじまることが暗黙のルールみたいになっていますけど、英語なら「Hi!」とか「Hello!」とか、たとえ今何時だろうと気軽に使える挨拶があります。
今回私はそんな「Hi!」が飛び交うビッグイベントSXSWにオンラインで参加してきましたので、レポートしたいと思います。
そもそも、SXSW 2022
SXSWの基本的な概要は、昨年の記事を見てもらうとわかりやすいかと思います。
イベント見聞録| オンラインイベントは”南南西に進路を取る”か? (SXSW Online 2021)
SXSW 2022は、2022年3月11日~20日の10日間開催され、今年は3年ぶりにオースティンに戻ってきました。また、昨年に引き続きオンラインも併催となったため、SXSWとしては初のハイブリッド開催です。
現地では従来通り無数のセッションやピッチ、展示、映画祭や音楽ライブなどなど、まさに街一体となってのお祭りが行われていたのですが、今回私が参加したのはオンライン。
オンラインでも、限定的ではあるものの基調講演や各種セッションへの参加が可能で、映画や音楽ライブも時間が合えば視聴可能です。一部コンテンツは翌日にはアーカイブとして公開されるため、自分の好きな時間に見ることができます。
展示に関してはほとんど出展概要の閲覧ができるのみで、あとは各出展者がどれだけWebを作り込むかに委ねられている印象でした。また、昨年に引き続き「VRChat」を使ったメタバース空間も設けられていました。
オンラインの参加料金は、正規で約519ドル。10日間参加可能ですが、ちょっとお高いですよね。
海外の展示会は日本に比べると参加者負担が大きいイメージがあるので、文化の違いといえばそれまでなのでしょうけどオンライン限定と考えるとうーんと言った感じもします。
日本でもハイブリッドイベントが選択肢としてスタンダードになりつつありますが、やはり今はまだオンラインとリアルのどちらかに重心を置くことが多いので、どうしてもどちらかはオマケになってしまいがちですよね。
どれくらいオンライン側にパワーをかけるのか、体験価値をどう設定するのか、このあたりは私たちも毎度毎度悩む部分ではあります。
私自身は特にテクノロジーに明るいわけでも、英語がわかるわけでも、もっと言うと音楽や映画にもそこまで精通しているわけではないので、唯一?親和性のある「イベント」全体の仕立てや演出、あとは日本との違いみたいなところを特に注目してみました。
オンラインで体験できること
オンライン参加者は諸々の登録を済ませた後、SXSW SCHEDULEをベースとして探索をはじめます。
このページはリアル参加者も使うようで、
SXSW 2022で展開されているほぼすべてのコンテンツが以下のようにスケジュール化されています。
さすがSXSW。超膨大なプログラムが時間刻みで展開されています。
オンラインで視聴可能なコンテンツには「ONLINE」のタグ付けがされ、
さらに「VOD」のタグがあるものは後日アーカイブとして見ることができます。
膨大なプログラムから自分に合ったコンテンツを見つけるためのソート機能はとっても充実しています。
興味のあるコンテンツには★マークをつけることで、自分だけのタイムテーブルをつくることができます。
ただせっかくですから、掘り出し物を見つけたいじゃないですか。
そんなときはライブチャンネル「Channels」を見ると、3つのチャンネルで次々自動的にコンテンツを流してくれます。
時差の関係上、日本時間の深夜~早朝がコアタイムとなるのでどうしてもリアルタイム参加できないことが多いのですが、このライブチャンネルは何時でも放送しているので、自分の好きな時間に「ながら見」で参加できるのがありがたいです。
また、「SXSW SOCIAL」といって出展者や参加者とオンラインでマッチングできるSNSのようなものもありました。
名刺交換に近しい役割があるので、新しいビジネスチャンス創出の一助になりそうです。
そして「ONLINE Expo」では出展カテゴリーごとに小間図のようなものが閲覧でき、それぞれのブースで何が展示されているかを見ることもできました。(情報量はちょっと寂しめ)
言語はすべて英語で、多言語対応はしていません。
今どきはGoogle自動翻訳もあるのでニュアンスはある程度わかるため特に不便は感じませんでしたが、常々こういう海外のコンベンションに参加するときは英語がわからないといけないなあと思う次第です。(とかいいながらも、簡単で高度な翻訳機能の登場をずっと心待ちにしている駄目な私)
展示に関しては「VRChat*」を使ったメタバース展開もされています。
こちらの体験談はまた後述しますが、オースティンの街並み?を歩きながら、 VRコンテンツを体験できる空間です。
ここまでざっくりと主な機能や展開をご紹介しましたが、情報量はさておき盛りだくさんのイベントです。
ユーザビリティとしては、ひとつひとつはとても見やすく、丁寧な作りだと感じた一方で、ページ同士の動線はあまりよくない印象でした。
特に「VRChat」に関しては参加者自身でアクセスしたうえで、
ホストと呼ばれる事務局担当者をフォロー、許可されれば空間に入る権利をもらえるというもので、こちら事務局作業も手動です。
「VRChat」の構造上、仕方がないのかもしれませんが、手動承認ということでタイムラグもありますし、何よりSXSWのアカウントと紐付ける必要が無かったので、ぶっちゃけチケットを購入しなくても入れる感じがありました。このあたりは日本人的な違和感なのかはわかりませんが、国内ではあまり受け入れられない動線設計かな?と思いました。
日本のオンラインコンベンションでもメタバース空間が用いられることはありますが、専用ソフトのインストールが必要だったり、イベントとは別にアカウントを作る必要があったりなど手間がかかるのは課題だと思います。
メタバース空間であることが体験価値向上にも繋がりますが、同時に体験ハードルも上がってしまいがちなので、個人的には勝手の良いプラットフォームの登場に期待しています!!
オンライン・セッションやライブの演出は?
ここからはセッションやライブ演出の環境について紹介していきたいと思います。
こちらがオンライン上でのセッション視聴画面です。
シェアボタンがあったり、チャット欄やQAがあったりなどオンラインならではの機能が盛り込まれていました。
ステージ環境はシンプルそのものです。
大きな会場であってもロゴバナーを背負いながら、登壇者はソファセットや簡単な演台でプレゼンテーションしていました。
カメラアングルは会場によってまちまちですがステージのヨリやヒキで4カメ程度でしょうか。
SXSWだからなのかはわかりませんが、基本的に全編カメラ映像で占められています。
日本のコンベンションだと資料映像が主で、カメラ映像は間をつなぐために使われるケースが多いと思うのでスタイルの違いを感じた部分でもあります。
ライブコンテンツ主体のイベントなので、これくらいのボリュームが丁度いいのかもしれませんね。
音楽ライブ会場は大型のステージもあれば、テントのようなところもあります。
私が見たものは、アーティストが勝手に登場してそのままパフォーマンスが始まるような進行でした。
ライブパフォーマンスにのせられ急に踊りだす観客たち。
何を見せられているのだろう...とオンラインだからなのかふと冷静になる私。
やはり基本的にはリアル参加者に向けてセッションやライブが展開されていたので、どうしてもオンライン参加者は置いてきぼりに感じることもありました。
まさにハイブリッドイベントの課題と言える部分がSXSWにもあったような気がします。
メタバース空間に潜入せよ
そんな置いてきぼり感を感じない、どこにいてもリアルのようにコミュニケーションできるのがメタバース空間ですよね。私としても、盛り返したいところです。
前述の通り、SXSWでは「VRChat」上にメタバース体験専用の「ワールド」が展開されました。
実は今回、Rayからは私の他にも若手社員が「視察団」として送り込まれています。
どうせ行くならみんなで行こう!ということで弊社にある「Oculus Quest*」を装着して潜入してまいりました。
「Oculus Quest」の没入感はスゴイです。
いつか「レディ・プレイヤー*」で描かれていたような、メタバース空間で生きる世の中になるのでしょうか。
まずは、バーにしけこんで作戦会議です。
「ワールド」内の移動手段はいくつかあります。
例えばタクシーを呼ぶことができて...、
乗り込めば、「ワールド」を空中散歩できます。
さらに道端に落ちている傘を拾うと、これはこれで自由に空中を飛び回れます。
遊び心がありますね!
謎のトランポリンみたいなものもあって、ぴょんぴょんとび跳ねているだけで楽しいです。
「ワールド」中に張り巡らされたチューブ型の移動装置では、
行き先を選ぶと瞬時に連れていってくれます。
大型の劇場では会期中いくつかのショーが行われた......はず(時間の都合で見られず)。
隠れ家的なクラブもあります。
中にはアーケード仕様の「ストリートファイター*」もありました(笑)
「ワールド」からは出展スポンサーなどによる常設の体験型コンテンツにジャンプすることもできます。
EV(電気自動車)関連の事業を展開する「Wallbox」の展示空間は、部屋のようなアセットの中にシアターが複数設置され、ブランドやプロダクトのムービーが上映されていました。
キャプチャした画像は平面的ですが、「Oculus Quest」を装着して体験することで、360°メタバース空間に包み込まれます。
映像だけではなく音楽も立体的に聴こえるので、本当に空間に入り込んでいるような没入感を得られます。
なかなか手にすることがないものですが、機会があればぜひ体験して頂きたいです!
「ワールド」の盛況感ですが、同時接続人数の影響なのか、それとも時間帯が悪いのかはわかりませんが、ちょっと寂しい感じでした。
人がたくさんいたらもっと面白いだろうな。
SXSW 2022をオンライン体験してみて
さすが世界有数の大規模イベント!
オンオフ問わず活用し、カスタマイズできるインターフェースや、
出展者や他の参加者とつながれるコミュニケーションツール、会期が終わっても余韻のように復習できるアーカイブなどなどなど、工夫が散りばめられていて、イマイマのハイブリッドイベントとしての完成度はとても高かったと思います。オンラインならではの体験ができるメタバース空間においては、そこら中に遊べる要素がたくさんあって、空飛ぶタクシーや映えるスポットなど、直接的に何かを訴求しているわけではない細かい部分までこだわりが息づいていました。
これがどんどん発展していけば、本当に街を歩いているような感覚と自由度でバーチャル体験ができるようになるのかも、とワクワク期待もわいてきます。
一方で、昨年は参加できていないので断言ができませんが、
恐らく、前回の完全オンライン実施の方が、よりそれぞれのコンテンツを楽しむことができたのでは。とも感じました。
どうしてもリアルがあるためにリアル優先の設計にはなっていたので、「いつでもどこからでも参加できる」はずなのに、オンラインでは見られない、知りきれないものがたくさんありました。
例えば、無数に展開されていた視聴型のセッションやコンテンツの中にはオンラインでは見られないもの、見ることはできるけどアーカイブ化されないため時間を合わせないといけないものが結構あり、更にタイムテーブルがリアルとオンラインで共用のため「これはオンラインで見ることはできないのか」と視覚的にわかってしまうことで少し損した気分になります。
ライブを楽しんでいる人たちを画面越しに見ていると、リアルで参加したかったなあ、という思いがこみ上げてきます。
あとは時差の障壁も感じました。
私は昼間普通に働いているので、寝る時間を削りに削っても通しでライブ参加することは難しいです。
「いつでもどこでも参加できる」はずなのに、自分が行ける時間は閑散期、というのは勿体なく感じました。
来年以降はどうなっていくのかわかりませんが、機会があれば次は現地で参加したいですね!!
ハイブリッドイベントはどこに向かうのだろう
半ば強制的に流行しだしたハイブリッドイベント。
初期の頃は「参加できない、呼べない人のため」のバックアップとして、リアルイベントで叶えられなくなったことの”押さえ”として発想されることが実は多かったと思います。
ただ、個人的な感覚ですが、最近ではそういったネガティブな理由ではなく、自然というかニュートラルにハイブリッドを検討する機会が増えているような気がします。
恐らく、様々な制約や規制が緩和されたとしても、ハイブリッドは普通のこととして定着していくのでしょう。
これからの当たり前(ニューノーマル!)に適応していくためには、
多様化するコミュニケーションに柔軟に対応し、いつ、どこから、どうやって参加しても新鮮で満足いく体験が用意されている、私たちにはそんな体験設計を考えていくことが求められていくのだろうなと、改めて感じさせられる機会となりました。
メタバース空間に入ったとき、海外の方が「Hi!」と話しかけてくれました。
こちらは昼間で、現地は夜中。
言語も時空も超え、「Hi!」ひとつで違和感なく交流できる、バリアフリーでボーダーレスなコミュニケーションがとれることに、新鮮さと同時にリアルイベントに感じていたような生っぽい感覚を思い出しました。
やっぱり、イベントはロジカルでは語りきれない、熱量や情緒を感じられるのが醍醐味だ!
それがリアルだろうとオンラインだろうとハイブリッドだろうと。
そんなことをふと考えながら、私も精いっぱいグローバルに「Hi!」と返したのでした。
おしまい。See You at SXSW 2023!!