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なぜエンジニアリングマネージャー含む全マネージャーが権限委譲に苦しむのかを20年間考え続けてどう組織を再設計およびエンジニアリングしたかの方法まとめ【後編:問題解法編】

前編に続いて、後編となる本記事は
ゆめみ Advent Calendar 2019 の25日目の投稿となります。

皆さん、ところで、「中学校の頃って、朝ごはん食べてました?」

朝早く起きて、学校に行くまでの準備に追われて時間がない中で

「朝ごはんをしっかり食べなさい!」

と、親から言われたら、きちんと食べると思います。

「ご飯を一粒残さず食べなさい!」

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と言われても、頑張って食べると思います。

では、

「利き手ではない手で箸を使って一粒残さず食べなさい!」

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と言われたら、とても大変な状況になりますよね。。。

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このように問題設定をわざわざ難しくしてしまっているという状況を前編では説明しました。

では、この状況ではどのような解法をとればよいのでしょうか?

解法 「問題設定の容易化」とは?


それが「問題設定の容易化」であり、解法の1つとしては、
おにぎりを用意する」が考えられます。

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おにぎりであれば、当初の目的である

・ご飯を一粒残さず朝ごはんを食べる
・学校に間に合う

を達成することが容易になります。

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いざとなれば、学校におにぎりを持って行って、後から食べるという事もできるかもしれません。

利き手ではない手でご飯を食べれるようにする

という目的は、例えば、家や学校でメモを取るときに

「利き手ではない手で取るように訓練する」

という別の状況、手段で達成するができます。

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つまり、そもそもの目的に立ち返って、達成したい状態を踏まえた上で、問題設定を簡単にする事が解法のポイントです。

ある意味、発想の転換に近いかもしれません。


前編では、マネージャーが権限委譲で苦労するという問題を取り上げました。

「承認プロセスにガンガン慣れさせられた」後に、「人事評価と権威勾配がある中で、自ら意思決定しろ」という難題に挑戦するという事を部下は強います。

一方で、マネージャーは部下が難題に挑戦するように、さらに上のマネージャーから強いられている


そもそも「権限委譲の目的」は何だったのでしょうか?


それは、以下のように前編で述べました。

① 部下がより自己完結して仕事を進められるようになる
② 部下が適切なタイミングで相談できるようになる
③ 部下が大きな意思決定をする時は誤りを少なくしたい

これを踏まえて、問題設定の容易化をするにはどうすれば良いと思いますでしょうか?

解法 「問題設定の容易化」とは?


解法を導くためのヒントは、上記の①、②に書いてあります。

つまり、部下が①、②を上手くできるようになって欲しいというのが権限委譲の主な目的であるので、それができるように訓練の機会を多く用意するというのが「問題設定の容易化」という事になります。

つまり、普段から相談して、周りから助言をもらった上で自分で意思決定をするという権限委譲レベル5「助言する」を基本的な意思決定プロセスとして採用するが解法となります。

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実際に、ティール組織の「自主経営」を取り入れている企業に共通した方法としては、「承認プロセス」の代わりに、下記の「助言プロセス」が採用されています。

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ティール組織においての助言プロセスでは

誰もがどのような意思決定でも行う事ができる
但し、意思決定の前に、以下から助言を求める事として

1)深く影響がある全ての関係者
2)その分野の専門家

とされています。


ここで「承認プロセス」ではなく「助言プロセス」を意思決定プロセスの基本として採用するというのは、パラダイムシフトと言えます。

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なぜパラダイムシフトかというと、承認プロセスでは、上司から部下に権限委譲が必要でした。そして、この権限委譲に苦労するのが難題でした。

一方で、助言プロセスでは、そもそも部下も権限を持っているため「権限委譲の必要がありません!

つまり、「問題設定の容易化」が実施されるのです。

問題設定が容易化されれば、問題を解くのはとても簡単です。


例えば、下記の目的のうち③をどのように実装するかという問題について考えてみます。

① 部下がより自己完結して仕事を進められるようになる
② 部下が適切なタイミングで相談できるようになる
③ 部下が大きな意思決定をする時は誤りを少なくしたい

助言プロセスでは、部下が意思決定を行う事ができるので、上司としては部下が経験がない大きな投資判断で失敗してしまう誤りを防ぎたいと考えるのは想像できます。

この場合、上司も助言プロセスで意思決定をすれば良いのです。つまり、以下のように部下の意思決定に制約を設けるような意思決定を部下からの助言をもらいながら行います。

投資予算の制限を設ける


この実装方法を発展させると、現在承認プロセスを基本的な意思決定プロセスとして採用しており、職務権限規定により各種制約が多い企業でも、助言プロセスを基本的な意思決定プロセスにするというパラダイムシフトを実際に実装レベルで行いやすいです。

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つまり、上図のように、助言プロセスに対して制約を与えるような(職務権限規定のような)ルール自体を助言プロセスで変更管理していく考えになります。

はい、助言プロセスへの移行完了ですね!

容易化された問題設定とはいえども、実際には、企業それぞれのビジネスモデルや、外部環境、文化などに基づいて、丁寧に実装をしていく必要はありますが、根本的な思想は変わらないです。


以下では、新しい時代における組織設計思想について述べます。

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まず、従来の企業においては、「組織設計」という大きな意思決定プロセスは、経営者や人事責任者など組織設計を行う人が現場を観察したり、現場からの提案を承認して組織設計を外部の立場から行うという「従来の組織思想」に基づいていました。

ところが、「自己組織化」された組織では下図のようになっています。

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会社というゲームをプレイするプレイヤーである社員がいて、仕事を面白いゲームとして楽しめるようにデザインするゲームマスターの役割は、人事や経営者だけではなく、プレイヤーである社員もルールブックに沿った上で担う事ができます。

そのルールブックを用意してあげるのがゲームシステムデザイナーです。結果として、ゲームシステムは自分自身をセルフデザイン(自己組織化)するように外部からは観察されます。

社員は、プレイヤーにもゲームマスターにも、ゲームシステムデザイナーにもなる事ができて、助言プロセスを通じて、ルールブックの変更や、組織設計も行う事ができます。

助言プロセスを基本的な意思決定プロセスとして採用する際には、このような新しい時代に沿った思想をルールブックに反映させる事が大事だと考えています。

以上が権限委譲における苦悩についての問題解法と、その実装において重要となる思想のお話でした。

最後に、ゆめみでの実装例を紹介した記事をご案内しますので参考にして頂ければと思います。

助言プロセスによる給与決定の方法について下記の記事の最後の方で記載しています



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