見出し画像

氷が割れる


ワタシが傷付くのは怖いから、

アナタを傷付けるのも怖いから、

誰もいない世界を望んだ。


日ごとに孤立していけば、

誰もワタシに 話しかけない。

誰もワタシを 見ない。

誰もワタシに 触れない。

誰もワタシを 知らない。


1人になるのはアナタと2人になるより簡単で、

喜びも挫折もなく、

出会いも別れもなく、

白でも黒でも、

ましてや透明でもないワタシがあるだけ。


無情で穏やかな水面のような意識は、

人は何故 苦しいのか?

人は何故 悲しいのか?

人は何故 生まれてきたのか?

人は何故 愛するのか?

それらの意味も理由も、

存在しない求められない世界の中だけにあった。


逃げ出したでもなく、

そこから追い出されたでもなく、

それを望んだのはワタシ自身。


そしてワタシは夢の中でも1人になった。


ワタシは孤独なのだろうか?

『もういいよ』という声が聞こえる…


ワタシは、

静かな水面の意識に薄い氷の膜を張り、

躓くだけだった小石を、

初めて拾って投げてみた。


割れた破片は唇を切り、

一滴の赤い血が喉を伝う…


その滴に溺れる前に、

アナタのいないこの夢から目を覚まそう。


written by raydra

画像1

photo  by shin's kaleidoscope art works









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?