全裸の呼び声 -35- #ppslgr
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全裸の呼び声 -35- #ppslgr

 夕夜が入り交じる黄昏時は、古来から逢魔が時とも呼ばれ、奇妙怪異の跋扈が増す時間とされていた。されてはいたのだが。

「いくらなんでも多すぎる」

 最終処分場のすり鉢廃棄物迷路からなんとか抜け出た二人を襲ったのは、今まで何処にいたのかというほどのドブヶ丘怪異のあらし、あらしである。
 あの子牛めいたサイズの蜘蛛足ネズミなどはまだ可愛いほどで、大型トラックばりの異常成長アメリカザリガニ、殺人ドローンを思わせる大型蚊やら、ドブナイズド変異した生物は枚挙に暇がない。

 二人が進んだ跡には奇怪生物の死骸が、あちこちに散乱しては小型の分解生物(これも多種多様過ぎて、もはや正確に把握する気にもなれないほど)がハイエナもドン引きする速度で食いつぶしていくので、早々に骨だけが残されていく。改造生物ホラーゲームでも、もうちょっと死体が残っているだろう。

「この状況下で歩き回るのは現実的じゃないねぇ」
「まったくもって同意見だ。これで酒呑んで路上酩酊死するとか、いったいどんな神経してんだか」

 とはいえ、流石にそんな度胸のある人間は限られるのか、徐々に宵闇の勢力が増してにつれて入れ替わるように人影は見かけなくなっていく。そして、そこかしこにひしめく気配は明らかに人外の物だ。

 近代的建物の並びに反してまともに明かりがついている電灯はなく、物陰のそこかしこから名状しがたいささやきが、絶え間なく溢れい出て一行の耳朶をおびやかす。幾何学的シルエットに、時折いびつな影が見え隠れした。

「宿を取ろう」
「賛成」
「とはいえ、まともな宿があればの話だが……」

 ドブヶ丘に、あたかも現代日本でございと立ち並ぶ建物の、どれ一つとっても民家か商店か飲食店か、風俗店か、そのいずれとも奇妙にずれていて判別がつかないのである。本来、サービスを提供している店舗であれば時代と業種に合わせたデザインがあるものだが、この街にはそれが全く存在しない。まるで、文明から隔離された幼児が、都会を初めてデッサンしたような認知のズレで、それがまた実に居心地が悪いのであった。

「ここじゃWeb検索してヒットするかどうか……」
「レイヴン、あれは、ホテルじゃないかい?」
「は?」

 アノートの細やかな指先の指す方角。奇妙な建物達から頭一つ抜けて、長方形のそのビルはあった。頭にはご丁寧に『HOTEL』の看板を掲げてこそいるが、灯はまるでついていなかった。

「……アレ、元からあったか?」
「どうだろう、私もここの建物はイマイチ細かく覚えられないし、確証がないや」
「さてはて、いかなるおもてなしだか」

 レイヴンは自称ホテルを見上げながら、蜘蛛の巣を払うかのようにカタナをふるった。飛びかかってきた蜘蛛足ネズミが、真っ二つになってドブ水に突っ込む。

「まあ、のってみないか?路上よりはマシかも、だ」
「ふむう。そうだね。おばけ屋敷ならそれはそれで手がかりがあるかもだし」
「だといいんだが、いや、良くないな……」

【全裸の呼び声 -34-:終わり|-35-へと続く第一話リンクマガジンリンク

注意

このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。

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