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花嫁は兵器に、そして世界は異世界に

結婚式場は森に、恋人は巨大ロボットに、そして自分はその中に。
つまるところ、織雅正紀の今置かれた状況はその様な理不尽だった。

「鎧武者?が一杯来ます!」

正紀の入った花嫁型の箱の内では、最愛の恋人の声が反響し、モニタには言葉通りに木々をへし折り迫る、赤甲の巨人武者の姿があった。

「不味い不味い不味い、早く逃げて沙織!」
「それが、身体が」
「えっ、何、そういう事?」

正紀はいつかのアニメで観たように、肘掛けのレバーを握って拳を上げる。
と、滑らかに視界が上がった。敵と目が遭う。アクセルを踏み込む、敵が迫る!

「こっちじゃない!」

曲がるよりも先に、花嫁は武者のベアクロー捕縛によって拘束!

「きゃっ!」
「ほう、鹵獲前に装者を見つけたか。だがウヌらは残らず我らの物となる定めよ」
「……沙織を」
「む?」
「物扱い、するなっ!」

正紀の踏み込んだアクセルは、花嫁衣装のスカートフリルより噴射炎を伴って加速。勢いのままに振り上げた膝が武者のアゴを撃ち抜く!

「わ、私今お膝を殿方に」
「今は気にしない!」

右から振るわれた長ナタをしゃがみこんでかわすと、アイ字バランスめいた脚撃で雑兵を蹴り上げる!返すヒールで左方雑兵の頭部を踏み砕く!コマの如く回転を伴って振り抜かれたすねが断頭斧と化して囲いの兵を切り裂いた!

「わわわ、私は何てことを……!」
「ゴメン、でも君をこんな風にしたのは」
「そう、我だ」

足軽機達が海割りのように列を解いた先、黒い竜飾マントの魔術機が宣言する。漆黒の魔術機を前に、花嫁機はスカートを翻して突貫する!

「ぶつかっちゃいます!」
「愚かな、ぐぅっ!?」

手をかざした魔術機の目の前で、花嫁の姿が消えた。
ついで、かの者の頭部が踏み抜かれ、花嫁は魔術機を踏み台に高く跳躍!全身のフリルから青い焔を伴って高く、高く翔んだ!次いで大樹を蹴り、コンクリのビルを踏む!

空を跳ぶ二人の視界下では、大都心の灰が緑に移り変わっていた。

【続く】

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