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世界は生き物で回ってる

 人類がお外に出なくなってから、街はネコの物になった。
 街の中は、外に出なければいけない人が1で、ネコちゃんが9だ。外にでかけた人たちも、ネコちゃんをもふもふしてから目的を済ませているという。不要不急の要件しか今の所ない私はとてもうらやましい。うちにもダイフク(3歳、オス)がいるけど。たまには他所の子ももふもふしたい。
 この現象は全世界で起こってるそうで、ネコちゃんを主軸に、シベリアではシベリアンハスキーが元気に無人犬ソリを引き、インドでは暴れ象さんが公園に突っ込みそうになってなだめられ、カナダでは鹿が踊り狂って出くわした人を混乱させており、てんやわんやだそうだ。
 どうも、生き物たちはやっぱり人間が怖いようで、人間がいなくなった途端に我が世の春を謳歌せんとほうぼうに姿を見せているとの事だ。
「にゃーん」
「ダメよ~ダイフク、お外に出たらお迎えにいけないからね」
 もし外に出ちゃったら、追いかけざるを得ないけど。ダイフクを室内に残して、ベランダから春の名残桜をコーヒー片手に堪能する。ふわりと、桜吹雪が私の視界をおおった。
「わぷっ」
 突風?にしてはそんな風感じなかったといぶかる私の視界を、今度は白くてすべすべした感じのタイルっぽい壁面が塞いだ。ちょっと待って、ここ十階なんだけど。
「アレ?ニンゲンいなくなったって聞いたけど、いるじゃん」
 深くおなかに響くような大きな声と共に、タイル地は素早くゆきさり戻ってくるとそのお顔を私に見せてくれた。狛犬をちょっと前後に引き伸ばした様な感じのお顔は、多分龍って生き物だと思う。初めてみたけど。
「いますよーちゃんと」
 我ながら間の抜けた切り返しだと思うけど、ちょっと想定外の事態過ぎて頭が回らなかったのだ。
「いるんだー、失敗しちゃった。ボクの事は見なかったことにしてくださいね」
「わかりましたー、あ、記念写真もダメ?」
「ダメですー」
「ダメかー」
 とても残念だけど、撮影不可って言われたら守るしか無い。被写体にはちゃんと許可を得て撮影しないとね。
「それじゃー、ニンゲンさん。さよーならー」
「アッハイ、さよならー」
 白い龍は、とってものんびりしたお声で別れを告げて青空に飛び去っていった。目があったのは私だけだったのか、路上にはそもそも人影もない。
「龍の人も普段は人間避けてるのねぇ」
 人間が怖いのは、どの動物も一緒らしい。

空想日常は自作品のワンカットを切り出して展示する試みです。
要するに自分が敬意を感じているダイハードテイルズ出版局による『スレイト・オブ・ニンジャ』へのリスペクト&オマージュになります。問題がない範疇だと考えていますが、万が一彼らに迷惑がかかったり、怒られたりしたら止めます。

現在は以下の作品を連載中!

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ロボットが出てきて戦うとかニンジャとかを提供しているぞ!

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