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全裸の呼び声 -44- #ppslgr

 巨大轢殺マグロすらも串刺し殺出来る巨大銛が、摩天楼にそびえる巨大タコを真正面から刺し貫いた。外観としては即死であろう一撃を受けてなお、タコは空中にとどまろうともがいては果たせず、目の前のビルにすがる。その間輝ける全裸男は器械体操パルクール仕草によって、銛をつなぎとめる鎖の上へと登りたった。

「アガッ……アガガッ……」
「フム、まだ息がある。思いの外しぶとい」

 けたたましい金属の擦過音を轟かせ、銛が引かれる。当然のことながら引き込まれるオク・ダーク!

「やめっアガガッやめっ」
「そうはいかない、殺し合いなら窮地の自分だけ助けてもらうのはアンフェアでは?」
「おっ、オニーッ!」

 命乞いは不可能と見て、巨大タコはようやく生え戻したわずかばかりの触腕を目の前の細い影へ打ちはなつ。その様は猫がカマキリを狩る様子にもにて絶望的な質量差、丸太以上の一撃がアノートへと迫る。

 だが、目標に当たる寸前のところで突如触腕がことごとくぶつ切りとなって屋上に落下した。超人動体視力をお持ちの方は捉えられたであろうその一撃は、アノートがふるった大ぶりなモータル殺戮チェーンソーによるものだ。かつてチェーンソーは神をも滅ぼしたと古代叙事詩にも記されている。

 天をも裂く勢いで回るチェーンソーを青眼に構えたアノートを前に、オク・ダークは一本の触手を天に掲げ威嚇する。夜闇に紛れてわかりにくくも、触手が先端でもって吊り下げるのは一人の男。

「レイヴン?」
「めんぼくない」

 足首を掴まれてぶら下げられているせいで、レイヴンはコートの裾がめくり上がって大層残念なことになっていた。先程の触手攻撃は人質を取るための牽制だったのだ。

「頼むから動かないでください!動くとこの男が夜空にランデブーだ!ああ!?」

 人質を盾に恫喝に入ったオク・ダークに向かって、アノートは間髪入れずに屋上を駆けた。高速回転で死を撒き散らす鋸が夜闇に火花を散らす。

「く、くくーっ!ひとのこころとか無いのかお前は!」

 アノートは応えない。彼の眼は闇の中ネコめいてかがやき、手にした回転チェーンソーを天高く振り上げた。人質を前にしているとは思えない決断的殺傷意思に、オク・ダークは動揺する。こいつは、ヤる。そして脅した以上は人質は投げ捨てなければならない。

「きさまっ!後悔しろよ!」
「裸ーッ!」
「露ッ!?」

 巨大タコが意を決して触手を振り上げたその時、レーザー断頭システムを思わせる蹴りが根本から触手を切り裂いた。宙を回転浮遊で舞う黒ずくめを、輝ける全裸中年男性が鮮やかな跳躍にて抱きとめ、救出する。そのままお姫様抱っこにて屋上に着地する全裸中年男性。

「……ッフ、人生色々あったが、全裸中年男性に救われたのは……これがはじめてだ」
「絶世の美女でなくて残念だったのう若いの」
「なぁに、命を拾ってもらった以上文句はない。感謝する」

【全裸の呼び声 -44-:終わり|-45-へと続く第一話リンクマガジンリンク

注意

このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。

前作1話はこちらからどうぞ!

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