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冥竜探偵かく語りき~雷竜輪切り事件~ 第九話 #DDDVM

「次は、神霊をあたってみよう」
「はい、理由をお聞きしてもよろしいですか?」

「もちろんだとも、実際に足を運んでもらうのはワトリア君なのだからね」

彼女に、アルトワイス王国内を含めた近隣地域における、祭事の記録についてあたってもらうよう頼みつつ、推理について説明を続ける。

「ワトリア君は、神霊と魔族の力の源については知っているかな?」
「はい、神霊は森羅万象の精気と、人間の信仰を。魔族は人間の怯懦、怒り、嫉妬と言った感情を主な力の源とする、と学びました」
「よろしい。彼らの実情もまた、人間族に伝承されている内容からかけ離れているわけではないんだ」
「はい、でもどうしてその事が神霊を優先する根拠になるのでしょうか?」

種明かしをすればシンプルな理由なのだが、さりとて出し渋る理由もない。なにより、こうして自分の知識を熱心に聞いてくれる者がいるというのは知の学徒として非常に喜ばしいことでもある。

「天地創造のみぎりより、神霊と魔族は互いにこの世界を求め、人間族を始めとするその他の種族を巻き込み争いを続けていた。当初は強大な力を誇った両種族だが、度重なる戦乱は着実に彼らの力を削いでいった。何が言いたいのかというと、現代においては、神魔といえどちょちょいのちょいで竜を滅ぼす、というわけにはいかなくなってしまった訳だね」
「確かに……両種族とも、見かけた、という事例すらかなり希少にさえなってしまっています」
「その通り。事ここに至って、神も悪魔も力を高めないと竜に相対出来ない点は、人間と同じ、というわけだね。そしてようやく力の源が何か、という点が重要になってくる」

推理の要点に差し掛かったタイミングで、ワトリア君の手が『アルトワイス王国祭事目録』にかかる。まだまだ信仰篤いこの国においては、大小問わず神を祀る祭事は重要なイベントだ。何せ神霊はちゃんと人々の前に姿をあらわすのだから。それが希少な機会であっても。

「力の源を、用意することが可能かどうか、でしょうか」
「大正解。魔族にとっては、人間を脅かせば力は高まる一方で、人間による反抗を余儀なくされる。数を減らしてしまった今の彼らでは、得られる力より減る同胞の方が多くなりかねない。これが、おいそれとは魔族が力を集約出来ない理由だね」
「わかりました。神霊の方は、まだ可能性がありそうです」
「うん、人間が隆盛している現代では、信仰さえ集められれば衰退した神霊でも十分な神通力を得られる。だが、一つ気がかりな点があってね」
「なんでしょう?」

会話を続けつつも、彼女が本を開いて1ページから順番に祭事の記録を私にも見せてくれる。書自体がかなりの分厚さだが、私の推論が正しければこの書の情報と照らし合わせることで、犯人はかなり絞られてくるはずだ。

「信仰を集めるのは、一朝一夕ではいかない。さらには人の心は移ろいやすいものと歴史が証明している通り、信仰もまた儚く消えやすい物だ。果たして犯行を実行可能にする様な祭事があるかが鍵だね」

【雷竜輪切り事件 第九話 終わり 第十話へと続く

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