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デスゲーム・イン・デスゲーム

黄泉辺録郎、職業はデスゲームコンサルタント。
年齢は29歳、家族構成は妻と娘の核家族。

彼のその日は、絶叫から始まった。

「異物混入!」

最高のホテルの最高のオーシャンビュースイート。
その場にふさわしからぬ絶叫と同時に、録郎はきっかり1分心臓が止まった後、再起動。端正な顔を困惑と怒りでスムージると震える手でクライアントにSNS暗号を送る。

【黒蓮】
【白薔薇】

「ふぁっっっくそ!」

白薔薇はデスゲーム開催続行だ。
最悪の事態を通告した録郎への返事は最悪のゴリ押しだった。

「落ち着け、落ち着くんだ録郎、そうだ、アレはただの見間違いだ。あの最悪のデスゲーム荒しが紛れ込んでいる訳がない……何のために巨額のコストを払っているのかと」

録郎は安定しない視界に、監視カメラ65535号の映像を入れた。

『オマエ ノ バン ダ』

「うわあああああああああ!アアアアアアアアッー!?」

ボロのフード付きコートな仮面男の唇を読んでしまった録郎は、SAN値チェックを失敗した探偵よりも無様に叫び痙攣する。床が濡れて、湯気があがった。スマホをたぐる。

「もしもし、ミス・ヘル?私この件から手を引き……」
「賠償金、払えるのかしら。あなた」
「……ッング!」

録郎の脳裏に、妻の美術品代、娘の医科大学、ついでにペットのサーバルキャットの餌などがよぎった。かけがえのない録郎の家庭。

「……お任せください、ミス・ヘル」
「良い返事よ、一流の仕事を頼むわロクロー」

通話の切れたスマホを、ギリギリベッドに投げつける。
今壊しては、仕事にならない。

「ハァーッ…落ち着くんだ録郎、第一関門のもちぷよ圧殺エリアでさえ、予定抹殺率は75%を超えるんだ。私の考案したデス・ゲームは他の奴とは違う……」
「Mrロクロ!第一関門突破されました!参加者は全員生存!」
「んぐわああああああ!」

スイートに飛び込んできた黒服角刈りの言葉に、録郎の断末魔があがった。

「どうやったんだ!?」

【続く】

#小説 #逆噴射小説大賞2020 #デスゲーム

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