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#ライトノベル

姉妹の再会

姉妹の再会

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 〈鉄仮面〉に率いられたアンデッドオークの大群は、忽然と姿を消した。
 驚くべきことに――〈鉄仮面〉が「大いなる森の意志よ、転移の門を開きたまえ」と唱えた瞬間、本当に〈聖樹の大門〉が起動したのである。屍者の大群衆は次々と水球の中に入ってゆき、オブスキュア王国から姿を消した。

「うそよ……そんなの……」

 ツインテールの少女は、愕然とそのさまを見ていた。

「聖なる森が、アンデッド

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パーフェクトイケメンスマイル(あいてはしぬ)

パーフェクトイケメンスマイル(あいてはしぬ)

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「な、なにをする気!?」
「別に」
「え?」
「特に何もせんよ。ただ転移網を使って〈化外の地〉に帰るだけだ」
「なにを……! アンデッドなんかに転移門が開けるわけないでしょ! あれはあたしたちの神聖な……」
「まだそんなおめでたい勘違いをしているのか。次までにはもう少し王国外の現実に目を向けておくことだな」
「次!?」
「私はまた来るぞ。何度でも、何度でもなァ……」

 青白い眼光が

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凶獣よ、故郷に帰れ

凶獣よ、故郷に帰れ

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「な……!」

 シャイファは瞠目する。その戦技。突きのような動きだが、その実斬撃である。両肩が高く盛り上がった甲冑を好むオークを、正面から一瞬で斬首してのける絶技。オブスキュア貴族が洗練させた対魔剣術の極地であり、これをものにしているエルフをシャイファは一人しか知らない。
 そのまま不浄なる瘴気が剣を伝ってオークの肉体へと流れ込んでゆく。
 暗緑の肉体が不随意な痙攣を起こす。

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用は済んだ

用は済んだ

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 オークの周囲を駆け回りながら、執拗に石を顔面に撃ち込む。そうしてできた隙に、ケリオスら騎士たちが斬りかかる。
 順調に、暗緑色の肌に手傷が増えてゆく。
 無論、決して油断して良い相手ではない。今までで最強格の大族長だ。だが届かない高みではない。
 その事実に困惑する。

「どういうこと……?」

 もちろん、配下の数と戦闘能力がそのまま比例するほど単純でもないだろうが――何か言い知

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着地狩りはやめろォ!!

着地狩りはやめろォ!!

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 そして――バネ仕掛けのように、解き放たれる。
 高速回転した紅い刃が絶叫を上げながら円盤を形作り、飛翔。赤黒い鎖がその後を追随する。
 円盤はシャイファたちの潜む大樹の幹を、何の抵抗もなく通過。ついでに横にあった木々も勢い余って次々と伐採してゆく。

「殿下! 失礼をば!」

 険しい声とともに、シャイファは腰を抱えられた。
 不気味な軋るような音とともに傾いでゆく大樹の幹を、ケリ

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 かつてこれほどクソくだらない理由で戦ったことなどない。守るため? 吐き気がする。ヴォルダガッダに同族への情愛などひとかけらもない。ただ、自らの目的を達するには兵力がどうしても必要であることを理性で理解しているに過ぎない。
 まさにこの義務感こそが、神統器〈終末の咆哮〉がヴォルダガッダに柄を預ける根拠でもあるのだが――しかし不快なことに変わりはない。
 そして――思い当たる。天啓のご

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愛していた。愛して、いたんだ

愛していた。愛して、いたんだ

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「黙れェッッ!!」

 反射的に〈黒き宿命の吟じ手〉を手の中に呼び戻した。
 生前の駆体が、死した肉体の中に蘇り、一瞬にして間合いを侵略。全身の関節の可動が一致し、黒き魔剣の刃先は音速の壁を突破した。
 が――

「……ッ」

 見てしまった。
 少女の頬を伝う、透明な雫を。
 おずおずと差し伸ばされた、小さな手を。
 赤く充血した、その視線を。確信と、哀しみに満ちた、そのまなこを。

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第四の錬金登録兵装

第四の錬金登録兵装

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 少年の前に、激しい雷気を帯びた環が七つ出現し、筒を形成。その中に差し込まれた白銀の大槍が甲高い唸りを上げて回転。柄からは放射状に返しのようなものが突き出ていた。

 ――キュドムッ!

 大気が激発し、異音とともに銀槍が消失――否、〈鉄仮面〉の動体視力でも捉えられぬ超々高速で射出された。
 それは銀の直線となって少年と〈竜虫〉を繋ぎ――炸裂。
 頭部から槍の侵入を許した〈竜虫〉の、

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共に泣く頬と、喉をやろう

共に泣く頬と、喉をやろう

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「焦る必要はまったくないのだ。この世界で、小生を君の世界に転移させる方法をゆっくりと探そう。なあに、異界の英雄を召喚する術式はあるのだ。きっとなんとかなるとも。三度も異世界に召喚された身にしてみれば、別に荒唐無稽な話でもなんでもない。」
「う、うぅ……っ」

 本当に。本当に、どうしてこの人は、こちらが心の底で求めている言葉を、飄々と暴いてゆくのだろう。
 フィンは、己の中で、何かが

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声さえ尽きたとき、

声さえ尽きたとき、

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 あたかもマズルフラッシュのように。
 あるいは星々が瞬くように。
 撃剣の火花が、フィンの前で狂い咲いた。
 鋼の悲鳴が、まるでひとつながりの音のごとく連続し、凄まじい密度の攻防が繰り広げられていることを伝える。
 両者の動きは、もはやフィンには見えない。ともに究極の域にある剣士たちの、殺意を重力として形成される、それはひとつの秩序だった宇宙であった。
 武に生きるものであれば、一

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君の涙が枯れ、

君の涙が枯れ、

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 煮え滾る汚泥が廻っているようなその眼に、総十郎は打ちのめされるような衝撃を受けた。

 ――駄目だ。

 痛ましくて、直視できなかった。

 ――君は、そんな目をしてはいけない。

 だが、それを口にしたところで、彼はさらに頑なになるだけだ。
 内心をおくびにも出さず、総十郎は言った。

「……ならばこうしよう。小生が合図をするまではこらえてほしい。ただ撃つだけでは、あの男は捉えら

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カイン人殺すべし。慈悲はない

カイン人殺すべし。慈悲はない

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 総十郎の腕がフィンを解放した。反射的に斬伐霊光を足に絡み付かせ、空中に姿勢を安定させる。
 そして――見た。
 その男を。
 死の化身を。
 総十郎と刃を合わせ、熾火のような眼光を放つ、仮面の剣士を。
 上背より瘴気が立ち上る。邪悪にのたうつ紋様が染め込まれた暗灰色の衣の上に、闇色のマントを羽織っている。右肩には、何か巨大な爬虫類の頭骨を加工したと思しき肩当てが装着されていた。
 

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神すら逃さん

神すら逃さん

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 唯一可能性があるとするならば、斬伐霊光でフィンの体を〈竜虫〉に縛り付け、密着状態から放つしかない。
 だが――

「シィ――ッ」

 鋭い呼気とともに放たれた一閃は、魔力の光を帯びた〈虫〉の肢に阻まれた。と同時に凄まじい速度で光翼が振り回され、総十郎は宙を揺れ動く羽毛のような体捌きで回避を強いられる。すべてがフィンの動体視力でも認識できなかった。斬伐霊光の動体センサー反応の複合処理

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やれやれだよ(半ギレ)

やれやれだよ(半ギレ)

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「またそレかよッ!!」
「ほら、ヴォルダガッダ。早く地上に降りた方がいい。君のかわいい舎弟たちは、君の指揮を待っているよ。このままほっといたら全滅だ。それはさすがに忍びないだろう? 〈終末の咆哮〉に見放されちゃうよ?」
「あのヤロウはどうすんだよッッ!!!!」

 ヴォルダガッダは激してクロガミを指差す。なりゆきについていけず、ぽかんとこっちを見ている。
 実際、なりゆきについていけ

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