マッド・ティー・チェイサー -1-
念願の稀少茶が手に入ったんですよ、と見てわかるほどうれしそうに語る執事風の品の良い優男が、このメキシコの荒くれ者共がたむろしてそうなバーのテーブルの上で開けたジュラルミンケースの中に詰め込まれていたのは札束だった。
「フムン、最近は日本円刻んでチャにするのが流行りなのか?」
ケースの中身を見て述べた俺の感想はケースを開けた本人には届いていない様子。へなへなと崩れ落ちて俺に視線を送っている。彼の瞳の中に写り込む目つきの悪い胡乱な黒ずくめの男、すなわち俺の姿。
「そんな