見出し画像

電子書籍の普及と、それから #burningthepage

本は死なない』の第十章「電子書籍の普及学」より。

電子書籍は、あとどれくらいで初期多数派の消費者層全体に普及するのだろうか。インターネットが普及に要した期間が10年だったことを考慮すると、電子書籍も2016年頃には全体の半数に普及するという見方が無難だろう。

この手の予測は、だいたい外れます。でも、遅かれ早かれ普及することは間違いないでしょう。

最近の出版業界の動向を見ていると、2014年の後半あたりに、一気に普及してもおかしくないような感触もあります。スマートフォンとタブレットの普及が、その土台になっていることは間違いありません。まだまだ不足とはいえ、コンテンツの数も揃ってきました。

誰かがマッチをすれば、導火線に火がつくことはありえるでしょう。もちろん、それに水をかけるような勢力も出てくるでしょうから、必ずしもこうなる、と断言できるわけではありませんが。

電子書籍というメディア、そして電子書籍プラットフォームが解決しなければならない問題はまだまだありますし、ビジネスモデルの構築もこれからといったところでしょう。もし視点を現在に固定するならば、「電子書籍なんてダメなんだ」ということになるかもしれません。

でも、インターネットが登場する以前に(あるいは登場してからしばらくも)、その影響力を正確に理解していた人はほとんどいなかったでしょう。電子書籍の力も、その意味でまだまだ把握されていないと感じます。

私は恐ろしく紙の本ユーザーであり、今でも紙の本を好んで購入していますが、少しずつ電子書籍で買う回数も増えてきました。そのことに違和感も特にありません。

そういう人が徐々に増えていき、発信する側もそのことを意識する。そうして、気がついたらボーダーを越えてしまっている。そんな未来がやってくるでしょう。

思考は血管の中を音楽のように流れ、電気的な衝撃となって日ごとに変化をもたらす。

インターネットによって、情報の流れは格段に良くなりました。それはコンテナの登場で、物流の世界が大きく「整った」のと似たような構造です。

でも、まだ次の一歩があり得ます。

おそらく、「電子書籍」という箱は、コンテンツ・思考・情報・エトセトラの流通に大きなインパクトを与えるでしょう。

そのインパクトによって、悪影響を受ける人もいれば、チャンスを掴む人もいます。そればかりはどうしようもありません。

私は、電子書籍の登場によって出版業界が崩壊するとか、個人が華々しい成功を収めるようになるとか、そんなシンプルな構図には興味がありません。そういう話もあれば、その逆の話もあるでしょう。

それよりももっと大きな視点で、地球上における情報の流通がどのように変化し、それが文化の発展にどんな影響を与えるのか。そこに興味があります。

おそらくその話は、5年や10年のスパンでは意味ある変化は出てこないでしょう。そうであっても、あるいはそうであるからこそ、私の関心は強く惹きつけられてしまいます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?