続・ドーナツ化
ずいぶん昔に書いたショートショートが出てきたのでnoteに転載。タイトルでわかる人には一発でわかる作品のオマージュです。
28歳を過ぎた頃、僕は自分がドーナツ化していることを発見した。
それはドーナツ的哲学における、ドーナツ的解脱とも呼べる発見だった。
「ねぇ君、僕はとうとうドーナツ化したんだよ」
僕は、つきあって3年になる彼女に打ち明けた。
「ドーナツ化するとどうなるの?」
「本能から発生する一切の煩悩が、僕の中心にある空白に飲み込まれていくんだ。僕の身体は本質ではなくなり、中心にある空白こそが僕自身の本質へと変化する。どうだい、すばらしいじゃないか」
「それだと、私に対して性欲を抱かないってこと?」
「それとこれとは別だよ」
そう、それとこれとは別なのだ。まったく。
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