見出し画像

『アンジュと頭獅王』レビュー

画像1

『アンジュと頭獅王』

吉田修一(著)

え? これって『あんじゅとずしおう』よね。ずしおうって頭獅王って書いたんだ、へえ。かっこいいんだ(てっきり厨子王だとおもってた……)
あれっ? 表紙がヒグチユウコさんじゃないの! すてき!
『あんじゅとずしおう』の現代語訳なのかなー?

と、いうのが第一印象。

開いてみると、めっちゃ素敵なヒグチユウコさんの扉絵が、和紙のようなトレーシングペーパーにうっすらと映える見返し。これは期待できます♡

そのままページをめくり本文にいたりますれば、流れ出すのは昔の講談のような名調子。

 ただ今語り申す御物語、国を申さば丹後の国、金焼地蔵の御本地を、あらあらと説明すれば、この地蔵もかつては人間でおわします。

 とは、我が国の中世に興起し、以来脈々と受け継がれてきた語り物、説教節の序詞でありますが、この金焼地蔵、人間であったときの御本地を問えば、国は奥州日の本の将軍、岩城の判官正氏殿で、

「人の幸せに隔てがあってはならぬ。慈悲の心を失っては人ではないぞ」

と説く徳高いお方でありましたが……

ああもう、調子が良すぎて引用をとぎる場所がない!!w

もうここからはずっとこの調子ですw 今の本に慣れていると一見読み辛く感じるかもしれませんが、最初のうちはルビが打たれていて、実はこれとても読みやすいんです。癖になりそうw

私の知っている「あんじゅとずしおう」はたしか小さいころに絵本で読んだ、姉弟とお母さんが人買いに騙されて離れ離れになってしまう悲しいお話だった記憶。この本も、冒頭からその記憶を呼び覚ましてくれます。「ああ、そうそう、こんなお話だったわ」と……。

でも、絵本でしたからそんなに細かいところまで記述されていなくて、いろいろとあいまいでした。いまこの本を「ああ、へー、こういうお話だったんだあ」なんて感心しながら読み進めてみれば……。

読み進めてみれば……。

あれ? ええ? なして? と、だんだんとずれてきて……。

どうやら、原作(?)ほぼその通りなのは本の中盤まで、そこからは一気にお話(と時間)がウルトラスーパー超加速します。

画像2

このドライブ感といったらものすごいですw

そして、それでも変わらぬ講談調。いやあすごいw

悲しいお話のはずがずいぶん笑わせてもらえましたw

文字も大きくてすらすら読めます。現代の童話……なの、かも、しれません。 

それでも、最初から最後まで一貫しているテーマは、人が人をおもう慈悲の心。忘れかけた日の本の、人の心と愛と言葉。いろんな意味で古典を現代に蘇らせたおもしろ(?)名著だと思います。

―――

画像3

↑私の知ってた原作本(?)と。
やっぱり厨子王だったw

―――

↑Webで冒頭試し読みできるようなので、文体の雰囲気をまず味わってくださいまし♪

―――


よろしければサポートお願いします!いただいたサポートはクリエイターとしての活動費にさせていただきます!感謝!,,Ծ‸Ծ,,