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らせんの本棚

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SF、ファンタジー、実用書からマンガ、画集、絵本などなど、アトランダムに紹介するレビュー集。神楽坂らせんが読んで「グッ!」と来た本を不定期に紹介していきます。もちろんネタバレはな… もっと読む
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#大森望

『ブロントメク!』レビュー

『ブロントメク!』マイクル・コーニイ(著) / 大森望(訳) ◇ 『ハローサマー、グッドバイ』と『パラークシの記憶』ときたら、こちらも取り上げないわけにはいきません。 『ハローサマー…』に並んでマイクル・コーニィの代表作です。 『パラークシの記憶』のあとがきで翻訳者の山岸真さんが語っていた、マイクル・コーニイの(傑作の)三大特徴が、今回もそのままがっつり当て余ります。 つまり、 ですね。 今回の舞台はアルカディアという海洋惑星で、これまた大洋に囲まれた大陸の、いくつ

『三体0 球状閃電』レビュー

『三体0 球状閃電』劉 慈欣(著)/ 大森 望、光吉さくら、ワン・チャイ(訳) 〇 主人公、陳(チェン)の14歳の誕生日。 嵐となったその夜、両親と食卓を囲んでいたところ、突然、彼らの眼前に家の壁を通り抜けて球状の雷(ボール・ライトニング=球状閃電=球電)が現れました。 うっかりその球電に触れてしまった両親は、閃光とともに一瞬にして灰となってしまいます。 その衝撃的な瞬間が陳(チェン)少年の人生を完全に方向づけ、球電現象の研究の道に進むことになるのでした。 しかし、この

『息吹』レビュー

『息吹』テッド・チャン (著) / 大森望 (翻訳) ◇ 現代最高のSF作家は誰かと聞かれたら、なかなか答え辛いところですけれど、すくなくともベストテンの中には絶対はいっていると思うのがこのテッド・チャンさま。 驚くべくことに、この長編流行りの時代に、ほぼ短編だけで勝負されていて、しかもとっても寡作な方。この『息吹』は第二短編集なんですが、第一短編集の『あなたの人生の物語』から17年でようやく二冊目。という超寡作。 だのに、出す短編が常にSFの世界的な賞を軒並み受賞し

大森望(編)『ベストSF2020』レビュー

『ベストSF2020』 大森望(編)――― いきなり別出版社の本の話ですがw 創元SF文庫で2008年から2019年まで12年間出されてきた『年間SF傑作選』の精神的(?)後継者として、あの(?)竹書房から刊行されたのが本書。2020年の年間ベストSF傑作集です。 編者はご存じ大森望さん。創元版は日下三蔵さんとペアで編纂されていたので、今度は大森望氏単独セレクションの〈ベスト日本SF〉集というカタチです。 2020年と言えば、コロナ禍が始まったばかりのころ。集められた作

『三体』レビュー

『三体』Ⅰ劉 慈欣(著) / 大森 望, 光吉 さくら, ワン チャイ(翻訳) / 立原 透耶(監修) 『三体』Ⅱ 黒暗森林(上・下) 劉 慈欣(著) / 大森 望, 立原 透耶, 上原 かおり, 泊 功(翻訳) 『三体』Ⅲ 死神永生(上・下)劉 慈欣(著) / 大森 望・ワン チャイ・光吉さくら・泊 功(翻訳) ――― 全五冊。まるっとレビュー、ネタバレ無しでいきます。 ☆ ☆ ☆ ようやく! 三体三部作完結(の日本語版)です!! いやあ、Ⅰのころからすご

『ソフトウェア』『ウェットウェア』『フリーウェア』レビュー

『ソフトウェア』『ウェットウェア』『フリーウェア』ルーディ・ラッカー(著)/ソフトウェア・ウェットウェア(黒丸 尚 訳)/ フリーウェア (大森 望 訳) ――― 天才となんとやらは紙一重。なんて言いますが、ワタクシが認めている天才のお一人に数学者でSF作家のルーディ・ラッカーさんがおります。 本名(ドイツ名)ルドルフ・フォン・ビター・ラッカー。 そう、天才です。もちろん紙一重のほうじゃないと思います。タブン……ね?w と、ゆーわけでそんなルーディ・ラッカーの代表

『危険なヴィジョン』〔完全版〕レビュー

『危険なヴィジョン』〔完全版〕①~③ ハーラン・エリスン編 ◇ 新しいコンセプトやタブー視される主題を全面に押し出したアンソロジー。 従来からの基調路線で読み手や編集に迎合した「売らんかな」な作品を集めるのではなく、SFの殻を破るような、挑戦的なSF(スペキュレイティヴ・フィクション=思弁的小説)を集めたい。と、あのハーラン・エリスンの掛け声でかき集められた、業界全体が第一次成長期だったころのSF界の精鋭作家たち。 大部数を誇るSF雑誌に「売れる作品ではない」作品たち