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らせんの本棚

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SF、ファンタジー、実用書からマンガ、画集、絵本などなど、アトランダムに紹介するレビュー集。神楽坂らせんが読んで「グッ!」と来た本を不定期に紹介していきます。もちろんネタバレはな… もっと読む
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2020年6月の記事一覧

『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』レビュー

『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』~人工知能から考える「人と言葉」~ 川添愛(著/文)花松あゆみ(イラスト) ◇ 先日こちらでも紹介した『数の女王』著者の川添愛さんによる人工知能本です。 川添さんはもともと理論言語学と自然言語処理の専門家の方。最近流行りのでぃーぷらーにんぐやお勉強ができる機械、人工知能のことを、その専門分野から見える世界について語る本を書きたかったとのことです。 ◇ で、タイトルでお分かりのように、主人公は「働きたくないイタチ」さんた

『数の女王』レビュー

『数の女王』川添 愛 著 ◇ お話は、邪悪な呪いの使い手である王妃が支配する王国から始まります。 残忍な王子を溺愛することをのぞいて、あらゆる者は王妃の呪いの対象になっています。(夫である王様も当然憎しみの対象です) そして、実の娘である美しい姉姫と、孤児としてもらわれてきた赤毛の養女、主人公のナジャも、多くの使用人同然の扱いでこき使われており、小さなころから王妃の命令で謎の「計算」をさせられていました。数年前に起こった「惨劇」の夜まで。 その惨劇で、仲間の数え子と呼

『みんなの道徳解体新書』レビュー

『みんなの道徳解体新書』パオロ・マッツァリーノ (著) ――― この著者のパオロ・マッツァリーノさん、インターネットの黎明期(?)から「スタンダード 反社会学講座」という、知る人ぞ知るテキストサイトを作られていた方です。あんまりおもしろいサイトなので本になったのは知っていましたが、いまサイトを見たらスゴイ沢山の本を出されてますね。これはかたっぱしから読まなくちゃですわ(ファンですw) さて、気になるこの本の内容です。 皆さん、きっと「道徳の時間」というやつを小

『昆虫おもしろブック』レビュー

『昆虫おもしろブック』矢島 稔 (著), 松本 零士 (著) ◇ 昆虫学者の矢島 稔先生と言えば、「こども電話相談室」の昆虫関係の質問を引き受けている方なので、声はラジオで聞いたことあるかも? (子供よりへたしたら昆虫に向けての)愛のある回答で有名です。 そしてあの松本零士先生が挿絵を描かれているのです。が、挿絵は挿絵なのですが、両方の先生が同列に著者になっています。 単に文章の補足としての挿絵ではなく、松本零士先生は松本零士先生で、しっかり自分の世界で昆虫につ

『砂の妖精』レビュー

『砂の妖精』ネズビット・ブラント イーディス(著) / 石井 桃子(訳) ◇ イギリスの田舎、チョークや砂利の採掘場のある辺鄙な砂だらけの地方の丘の上のみすぼらしい一軒家に、お母さんに連れられて、幼い赤ん坊と四人の兄弟姉妹が引っ越してきたのは、今から100年以上も前のこと。 100年の昔でも、都会のロンドンあたりになると、建物や道路は、大人たちが好む「まちがった形に」まっすぐきっちりと作られていて、ぐねぐねと自然な「正しい形」になっていませんでした。 子どもたちが安心