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らせんの本棚

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SF、ファンタジー、実用書からマンガ、画集、絵本などなど、アトランダムに紹介するレビュー集。神楽坂らせんが読んで「グッ!」と来た本を不定期に紹介していきます。もちろんネタバレはな… もっと読む
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2020年3月の記事一覧

『プログラミングガールズ!2 ソフィア ロボット・レースに参戦』レビュー

『プログラミングガールズ!2ソフィア ロボット・レースに参戦』 高橋 由季 (イラスト), 石戸 奈々子 (監修), Stacia Deutsch (原著), ステイシア ドイツ (著), 美馬 しょうこ (翻訳) ☆ 以前紹介した『プログラミングガールズ!1ルーシー なぞのメッセージを追え』の続巻。2巻目です。 この表紙の女の子、ソフィアはめっちゃしっかり屋さん。激務のアメフトチームのマネージャーをこなしつつ、家では4人姉妹の長女として頼りにされる日々。(小さな子

『6502とAppleⅡ システムROMの秘密』レビュー

『6502とAppleⅡ システムROMの秘密』 柴田文彦(著) ◇ かのアップルコンピュータのスティーブ・ジョブズの相棒であり、技術担当スティーブ・ウォズニアックの最高傑作と名高いAppleⅡ。 そのAppleⅡの心臓部に採用された、当時の一般的なCPUとは大きく異なった特殊な設計のCPU6502の詳細な解説。それと、いかにその6502の性能を巧みに引き出してAppleⅡが設計されたかを、丁寧に紐解いた解説本です。 スティーブ・ジョブスの伝記や、アップル創業時の出来

『旧暦屋、始めました』レビュー

『旧暦屋、始めました』仕立屋・琥珀と着物の迷宮 2 春坂 咲月(著) ◇ 以前紹介した『花を追え』の二巻目です。あちらはミステリーの優秀賞をいただいているぐらいでミステリーが大きな軸になっていましたが、こちらは、まあ若干謎解きっぽいところはあるものの、それよりもこの、和風・和服・着物の美麗な世界と、主人公の八重ちゃんとイケメン仕立て屋の琥珀の初々しいラブっぷりを楽しむのに比重が置かれてる気がします。 前作では女子高生だった八重ちゃんは奈良の大学へ進学し、それを追って

『渚にて 人類最後の日』レビュー

『渚にて 人類最後の日』 ネビル・シュート (著) ――― 今こそ読みたい? とおすすめしちゃうわけではないのですが、世界全体が見えない敵に侵されつつある今日この頃、ついつい連想して思い出してしまう本なのです。 第三次世界大戦が勃発し、世界各地で4700個以上の核爆弾が炸裂した後の話。 その戦争は短期間に終結したのですが、地球の北半球は濃密な放射能に覆われ、爆撃を受け、汚染された諸国は次々と連絡を絶ちます。ソ連、ヨーロッパ、アジア、日本ももちろん、そしてアメリカも。

『Manga マンガ』大英博物館マンガ展図録レビュー

まさかの洋書(?)、あの、大英博物館で昨年行われた『Manga マンガ展』の図録です。 届いてびっくりこの分厚さ! 学研の図鑑とほぼ同サイズ、同じような厚さで351頁ありました。(比較対象の超人図鑑は今回は関係ありませんw) めっちゃ読み応えありそうです。 なにしろマンガ展の図録ですから、編集も気合が入っているのでしょう、普段よく見かける美術展等の図録とはかけ離れた遊び心あふれる作り。表紙カバーの美麗なアシリパさんグラフィックをめくってみれば、そこには赤塚不二夫ワ

『花を追え――仕立屋・琥珀と着物の迷宮』レビュー

『花を追え――仕立屋・琥珀と着物の迷宮』 春坂 咲月 (著) ――― 仙台にすむ女子高生・八重。彼女は着物がなぜか苦手(あとでその理由は語られます)。それでも趣味は純和風で、篠笛(しのぶえ)教室に通っています。 ある夏の夕暮れに、ふとしたことから着流しすがたの美しい青年・宝紀琥珀(とものり・こはく)と出会います。仕立屋さんというその職業柄か着物にやたらと詳しい彼に巻き込まれるようにして、八重は着物にまつわる様々な謎に挑むことになるのです。 最初のうちは身近な和風小物の

『国を救った数学少女』レビュー

『国を救った数学少女』ヨナス・ヨナソン著 中村久里子訳 ――― 『窓から逃げた100歳老人』のヨナス・ヨナソンさんの第二弾、今度は老人じゃなくて黒人の女の子が主人公。タイトル通り、彼女は数学の天才。めちゃくちゃ頭の良い子なのです。 けれど、生まれた時代と場所が最悪でした。 時代は1970年代初頭、場所は南アフリカ、アパルトヘイト政策まっさかりのあの時代の、さらに悪名高いソウェト地区。 徹底的な人種差別を、南アフリカが国策としてやっていたあの時代の、最下層極貧地区のどま

『Programmer’s Pocket Reference』レビュー

『Programmer’s Pocket Reference』Kyohei Takahashi(krct)著 ――― 今回は珍しく同人誌のレビューです。 同人誌と言っても薄い本じゃないですよ?w 結構厚くて、200ページ以上あります。背表紙にも『Programmer’s Pocket Reference』と書かれています。(ポケットにはちょっと入りませんが、この背表紙があると本棚に入れた時にすぐわかって便利なのですw) 技術書典 7 (2019/09/22) とい

『窓から逃げた100歳老人』レビュー

『窓から逃げた100歳老人』ヨナス・ヨナソン(著/文)柳瀬 尚紀(翻訳) ――― もしもゴルゴ13が100歳の老人で、ライフル銃ではなくて爆弾の専門家だったら? という感じのお話ですw スウェーデンの養護老人ホームで100歳の誕生日を迎えるアラン・カールソンおじいさんは、自分の誕生会の直前に窓から逃げ出してしまいます。 お小水のしみ付きのスリッパのままで・・・>< 自分の誕生会がどんだけ嫌だったんでしょうって感じですね。 その誕生会には老人ホームの面々とホームの

『ゲームウォーズ』レビュー

『ゲームウォーズ』(上)/(下)アーネスト・クライン (著), 池田 真紀子 (翻訳) ◇ 山本弘さんのBISビブリオバトル部シリーズ④『君の知らない方程式』で紹介されていて気になった本です。 主人公は今より少し文明が進んだけれどエネルギー危機を上手く克服できなかったディストピアな未来に住む、社会の最下層の少年ウェイド。石油が枯渇しかけているこの世界では、ほぼすべての娯楽がOASYS(オアシス)というネットゲーム、バーチャルリアリティ世界で行われていました。(リア

『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』レビュー

『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー) 大森望(編) ――― みんな大好きタイムトラベル。 タイムマシン物やタイムスリップ物、いわゆる『時間SF』。SFの定番ジャンルですね~。 もちろん私も大好きなんですがw ただ、海外(特にアメリカ)では宇宙物のSFのほうが大人気で、アメリカで人気投票とかをすると宇宙SFのほうが常に上位を占めるのだそうです。 なんでか日本のほうがこういった時間SFは人気なのだそう

『日本語ということば (Little Selections あなたのための小さな物語)』レビュー

『日本語ということば (Little Selections あなたのための小さな物語)』 赤城かん子 ◇ ※『らせんの本棚①』に収録したレビューを大幅に加筆修正しました※ この本は、本の探偵をしていた赤木かん子さんが集めた、「日本語ということば」についての随筆だったり物語だったりを集めた本です。 ※本の探偵とはいっても古本屋さんが難事件を解決するわけじゃなくて、思い出の本を探してくれる人のことですね。 本を読む能力の低下とか、SNSばっかりで140文字以上読めない

『BISビブリオバトル部』シリーズ③&④(+オマケ)まとめてレビュー

東京創元社から出ている『BISビブリオバトル部シリーズ』の3巻目と4巻目一挙レビュー(+おまけ)です。 3巻目はこれ、 『世界が終わる前に BISビブリオバトル部』(表紙がまるで最終回みたいですがこっちが3巻です) 4巻目は 『君の知らない方程式 BISビブリオバトル部』こちら。もちろんどちらも著者は山本弘さんです。 ――― 実は3巻目はレビューしようか迷ったんですよねぇ。もちろん面白いことは面白いのですけど、ミステリ仕立てになっていて、1~2巻とは微妙に雰囲

『幽霊なんて怖くない BISビブリオバトル部』レビュー

幽霊なんて怖くない BISビブリオバトル部山本 弘 (著) ――― レビューや感想文を読んで本に興味を持って、実際にその本を読んで見た。という経験はたくさんあります。もちろん、私もそうなってくれたらよいなーと思っていつも本を紹介しているわけなんですけれどね。 で、レビューを見てその本を読んで「面白かった!」ってことは当然なんですが、レビューを読んでから本を読んだことで、普通にただ読んだだけじゃ気が付かない別の読み方を知って、「ああ、本当だ、やっぱりそう読める!」な