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運命と私 26

北沢はメニューを見て迷っている様子だった。

「北沢さんのおすすめってありますか?」

と聞くと、

「実は僕も初めてなんだ・・・」

「えっ?そうなんですか?」

「雑誌で見ただけなんだ・・・」

私は思わず笑ってしまった。
行きつけのお店で女慣れした人だと思っていたのに、
私の想像とは違っていた。

「なんか北沢さん緊張してると思ったんです。」

「バレました?実は僕女性が苦手でデートとかしたこと無くて・・・」

「そうなんですか?積極的だから女性慣れしてるかと思いました。」

「いやいや、ぜんぜん違うんです・・・」

北沢は私の思っていた「遊び人」でなかった。

私より1つ年上の31歳で、
製薬会社で働いていた。

私たちはワインでほろ酔いになり、
色々なことを話した。

この前も感じたけど、
北沢とは昔からの知り合いのような安心感があった。

「北沢さんもっと年上かと思った、
なんか落ち着いてるから1つ違いとは思えないな。」

「えっ!じゃ!川崎さんは30歳なの?」

「はい、来週で30歳です。」

「来週、誕生日なの?じゃお祝いしないと!」

「えっ?お祝い?
そんな年じゃないですよ。」

「先約でもあるんですか?」

「残念ながら無いです。」

「じゃ今週末ドライブにでも行きませんか?
僕運転が好きなんです。」

「私もドライブは好きです。運転は出来ないけど・・・」

「運転は僕に任せて下さい、
週末は川崎さんの好きな所に行きましょう。
山、海、どこがいいですか?」

「2択ですか?」

「いやいや、どこでもいいですよ。」

「じゃ冬の海がいいです。」

「冬の海、人が少ないからゆっくり出来そうですね、
でも寒いからゆっくり出来ないかな?
じゃ海の近くのカフェをリサーチしておきます。」

北沢は遠足に行く前の日の子供のようだった。

北沢と話していると楽しかった、
そしていつの間にか私の頭の中から「江藤」が消えていた。


つづく

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