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女性を送り込んで犯行を働くリル・ウェインのストーリーテリングを読む。【前編】(Lil Wayne - "Mona Lisa" feat. Kendrick Lamar)

Writer:@raq_reezy

リリースからしばらく経ちましたが、ビルボードも1位、初週のストリーミング回数もドレイクの『Scorpion』に次いで歴代2位を記録するなど、絶好調のリル・ウェインによる『Tha Carter V』。

前回は「Don't Cry」を解読しましたが、今回はアルバムの中でも一番の話題作「Mona Lisa」を和訳・解読していきたいと思います。

この曲では、ケンドリック・ラマーも客演として参加して、『To Pimp a Butterfly』の「u」を思わせるようなフロウを披露していますが、二人で何について歌っているかというと、リル・ウェインの創作した犯行ストーリーです。

リル・ウェインが盗みを仕掛ける側、ケンドリックが被害者の男性としてラップしています。

それでは、リル・ウェインはどのような手口を歌っているのでしょうか。

そして、モナ・リサとは。

ということで、さっそく中身の解読に入っていきましょう。

(かなり長い曲なので、前編と後編に分けてお届けします。今回はリル・ウェインの1バース目と2バース目までを解読し、後編でケンドリックの担当する3バース目を読んでいきます。)

イントロ(ケンドリック・ラマー)

I got a story to tell
You know that I cherish thee
Hope it ain't too many feelings involved

【意訳】
俺には伝えるべき物語がある
俺がお前を大切にしていることは分かってるだろ
あまり多くの気持ちが絡んでなければいいけどな

イントロではケンドリックが伝えるべきストーリーがあると語っています。

サビ(リル・ウェイン)

さて、サビでは基本的な犯行の手口が歌われています。

ということで、実際の手口を見ていきましょう(笑)。

I see niggas in this bitch, stuntin', poppin' bottles
Gettin' drunk with these bitches
Then when they leave they get followed

【意訳】
男どもは、このビッチに夢中なのが分かるぜ
踊り狂って、ボトルを次々と開ける
このビッチたちと酔っ払う
そして一緒に家に帰るとき、そいつらは尾行されてるのさ

クラブで、男たちが、ある女性に夢中になっています。彼らは盛り上がって、女性とパーティーを楽しんで、酔っ払い、その女性をお持ち帰りします。

しかし、そこで尾行している人物がいるようです。それがリル・ウェインです。

Fall asleep with that bitch and really don't know much about her
Then she let us in, we take all of your shit
And when you wake up, she help you try to find it, I love it

【意訳】
そのビッチと一緒に眠りにつく、彼女のことも殆ど知らないのに
それから彼女は俺たちを部屋へと招き入れ、俺たちは全てを盗む
お前が目を覚ましたとき、彼女は失くなったものを一緒に探してくれる
マジで最高さ

リル・ウェインは、尾行して何をするのでしょうか。

男が眠ったあとに、女性がリル・ウェインをその男の部屋へと招き入れます。男がクラブで盛り上がった女性は、リル・ウェインが送り込んでいたわけです。そして、リル・ウェインは男が寝ているうちに金目のものを盗んでいきます。

朝起きて、男は大切なものが失くなっていることに気づきます。

全てを知っている女性は、何食わぬ顔で、一緒に部屋の中を探してあげる演技をするのです(笑)。

かわいそう(笑)。

1バース目(リル・ウェイン)

さて、1バース目はリル・ウェインが犯行現場の具体的な状況を描いています。

リル・ウェインの表現のおもしろさ、巧みさが詰まっているバースです。

I be with bitches that be with bitches
That be with niggas with riches
I tell her, "Get 'em," she say, "I got you"
I say, "No, bitch, I say get 'em"

【意訳】
俺はラッパーどもや金持ちとつるんでいるビッチたちと仲の良いビッチと一緒にいる
俺は彼女に「やっちまえ」と言い、彼女は「了解」と言う
俺は「俺じゃねえよ、あいつらだよ」と言う

ターゲットとなる男たちといつもつるんでいる女性たち。そんな女性たちと仲の良い女性がリル・ウェインの犯行のパートナーです。

ここはちょっとだけ面白い歌詞になっていて、"I got you"は「了解」という意味で、リル・ウェインの"Get 'em"(やっちまえ)に対して、「了解」と答えているんですが、英語をそのまま読むと、「Get 'em」(あいつらをやれ)に対して、「I got you」(あなたをやったわ)となるので、「俺じゃねえよ」とリル・ウェインが再度言ってるわけですね。芸が細かい(笑)。

And they so pretty, and their hair lengthy
He hit it and sleep on her titties
Then she give us the word, we come through with AKs
It's a stick-up, she scream like a victim

【意訳】
俺の手先の女たちはとても可愛くて、髪は長い
あいつらは、その女たちとヤッたあと、胸の上で眠りにつく
それから彼女は俺たちを呼び、俺たちはAK47を携えて部屋に侵入する
俺たちは拳銃を突きつける、彼女たちは被害者かのように泣き叫ぶ

さて、この曲では大きく2パターンの犯行があって、ごちゃごちゃに歌われています。

1つ目のパターンは、女性がリル・ウェインたちを招き入れて、リル・ウェインたちが銃を持って強盗に入るパターンです。もうひとつのパターンは男が寝たり外出してる間に女性がリル・ウェインたちを招き入れて、こっそりと盗んでいくパターン。

まずは1つ目のパターンで、男が女性を連れ込んで楽しんで眠ったあとに、リル・ウェインたちがAK47(銃)を携えて強盗に入ります。

女性はリル・ウェインを招き入れているのですが、演技中ですので、被害者かのように恐怖に泣き叫びます。

Now you feelin' so silly
I smoke color purple, I'm up in here feelin' like Celie (ooh)
Nappy-ass dreads, what's that you say?
Watch your mouth, Milli Vanilli (ooh)

【意訳】
そうすると、お前は超焦り出す
俺は大麻を吸って、(『Color Purple』に登場する)セリエのような気分さ
汚い髪のドレッド野郎、何か言ったか?
口には気をつけな、ミリ・ヴァリニみたいな野郎がよ

男はびっくりして飛び起きて、焦り始めます。

「Color Purple」は大麻という意味と、映画の『Color Purple』のダブルミーニングになっています。セリエは映画『Color Purple』の登場人物です。

強盗に入ったリル・ウェインは、ターゲットのドレッド男を脅しつけています。

ミリ・ヴァリニは、口パクがバレて、レコーディングすら自分たちでやっていなかったことが判明したダンス・ユニットです。彼らはそれによってグラミー賞を剥奪され、芸能界を追放されました。

You can get snaked, you can get faked
Out by the bitch that you feelin'
'Cause you thought that she was an angel
That bitch ain't no angel, I treat her halo like a frisbee

【意訳】
お前は騙される、お前は欺かれる
お前が好きだったビッチにな
お前は、彼女のことを天使みたいだって思ったんだからな
そのビッチは天使じゃねえ
俺はそいつの天使の輪をフリズビーのように扱う

And you tellin' your business, she tell me your business
You tell that bitch what you feelin'
All of the beans you be spillin'
To you, she lie through her teeth cavities, fillin's

【意訳】
お前は彼女に自分の仕事内容を自慢する
彼女は俺にお前の仕事内容を全部教えてくれる
お前が漏らした全ての秘密をな
彼女は、お前に向けて歯の隙間からも埋まっていても嘘を並べる

男は、好きになった女性にペラペラと仕事内容や秘密を得意げに話しますが、その女性はリル・ウェインの犯行パートナーなので、全ての情報はリル・ウェインにダダ漏れです。

She know where you hide to tell me where it's hidden
She know when you're gone, tell me when to visit
We break in your home and take the specifics
And meanwhile, the bitch is on vacation with him

【意訳】
彼女は、俺に教えるために、お前らがどこに貴重品を隠しているかを探る
彼女は、お前が家を出ると、俺に訪問しろと伝えてくれる
俺たちはお前の家に突入して、大事なものを盗む
その間、そのビッチはお前らと休暇を満喫するのさ

今度は、ターゲットの男が女性と外出中に、その情報を得て、リル・ウェインたちが侵入して盗みを働いています。

So she don't get blamed, we don't snatch chains
We find out addresses, and we don't leave messes
You'll only know that it's gone when you check it
Then your first thought is to start second guessin'

【意訳】
だから彼女は責められない、俺たちは街中でチェーンなんて奪わない
俺たちは住所を特定して、跡形すら残さない
お前は確認したときに初めて失くなったことに気づく
お前が真っ先にすることは、後知恵で批判することさ

女性は一緒に外出しており、家にすらいなかったので、男から疑われることはありません。実話なのか、よく考えられたストーリーになっています。

街中で有名なラッパーからチェーンを奪うような小っぽけな犯行はせず、住所を特定して跡形すら残さないほどに全てを盗むという大胆な犯行を自慢しています。

She say, "What's wrong?" He say, "Nothin', keep restin'"
She say, "What's missin'?", "How you know somethin' missin'?"
He scratch his head, she say, "Get back in bed"
And she gave him some head

【意訳】
彼女は言う、「どうしたの?」、お前は言う、「何でもない、休んでて」
彼女は言う、「何かないの?」、お前は言う、「どうして、何かが無いって知ってるんだ?」
お前は自分の頭を引っ掻く、彼女は言う「ベッドに戻ってきて」
それから、彼女はフェラをした

ここでは女性が「何かないの?」と怪しまれる発言をしてしまい、誘惑して誤魔化している様子が描かれています。

Boy, you can't trust them bitches, and then she say ooh

【意訳】
坊や、彼女たちを信用しちゃいけないぜ、それから彼女はこう言う

サビ(リル・ウェイン)

I see niggas in this bitch stuntin', poppin' bottles
Gettin' drunk with these bitches
Then when they leave they get followed

【意訳】
男どもは、このビッチに夢中なのが分かるぜ
踊り狂って、ボトルを次々と開ける
このビッチたちと酔っ払う
そして一緒に家に帰るとき、そいつらは尾行されてるのさ

ここは1バース目前のサビと同じなので割愛します。

I be with bitches that know the bitches
That's with the niggas we followin'
Get them on the line, stay two cars behind
And tell them hoes, "Don't be so obvious!"

【意訳】
俺は、俺たちが追っかけている男と一緒にいるビッチとも
仲のいいようなビッチたちといる
電話で呼び出して、車は2台後ろの状態を保つ
彼女たちには「あんまり目立つなよ!」と伝える

ここでは尾行中の様子が描かれています。

尾行がバレないよう用心をして常に2台後ろの状態を保って追いかけています。

Mona Lisa, long hair, don't care
She handle the business and don't ever tell
She bite the bullet and cough up the shells

【意訳】
モナ・リサ、長い髪も気にしない
彼女はビジネスをこなして、誰にも言わない
彼女はじっとこらえて、弾丸の殻を吐き出す

「bite the bullet」は、じっとこらえて我慢するという意味のことわざです。

そのままの意味にすると「弾丸を噛む」ということなので、弾丸を噛んで、弾丸の殻だけを吐き出すという言葉遊びをしています。

She tell 'em, "Ooh, daddy, let's go to your place!"
And if he say yeah, then we meet him there
She feed him lies with his silverware
She don't want love, she just want her share

【意訳】
彼女はあいつらに言う、「ねえ、ダディ、あなたの家に行きましょうよ」
あいつらが「そうだね」って言えば、俺たちはそこに向かう
彼女は、そいつの家の銀皿で嘘をご馳走する
彼女は愛なんて必要ない、彼女はただ自分の取り分が欲しいだけ

2バース目(リル・ウェイン)

さて、2バース目に入ります。

I know a bitch named Liz
This nigga think she his 'cause she tell him that it is
So he tell her all his secrets, he tell her all his fears
And then she tell me, and I be all ears

【意訳】
俺はリズって名前の女を知ってる
このラッパーは彼女が自分の女だと思ってる、彼女がそう伝えたからさ
だから、そいつは彼女に全ての秘密を教える、彼女に全ての恐怖を伝える
それから、彼女は俺にそれを全て教えて、俺は全部聞く

今度は、リズという女性を送り込んでいます。この女性は、あるラッパーに自分たちは付き合っていると思い込ませているようです。

ラッパーは彼女のことを信頼して、またまた秘密を打ち明けています。

そして、内容は当然リル・ウェインにダダ漏れです(笑)。

And then I go and tell my people and they already know him
And then I call Liz and she say he comin' over
I say, "Good girl, just remember what I told you"
She gave me the salute, I say, "Girl, you're a soldier"

【意訳】
それから、俺は仲間たちに伝えて、仲間たちはそいつのことを全て知る
それから俺はリズに電話をして、彼女はあいつが家に来るって言う
俺は「いい子だ、俺が教えたことを忘れるなよ」と言う
彼女は俺に敬礼をする、俺は「ガール、お前は戦士だな」と言う

そして、今度はそのラッパーの方が、リズの家に来るパターンとなっています。

リル・ウェインは、ラッパーが来るタイミングを仲間たちに伝えて、リズの家の前に隠れて集合しています。

We're waitin' outside, watch him pull up
Walk up to the door and right before he knock
She open the door naked, she left it unlocked
They started French kissin' so he didn't see moi

【意訳】
俺たちは外で待つ、ターゲットの男が車を停めるのを見る
そいつはドアまで歩いて、ノックしようとしたそのとき
彼女は裸でドアを開けて、鍵はかけないまま
二人はフレンチ・キスを始めるから、彼は俺に気づかない

ターゲットの男がやってきました。

彼女はセクシーに振舞って、男の気を引き、リル・ウェインたちが男に気づかれないようにします。

And then she let him in, they stopped on the couch
Music up loud with his head in the clouds
Turn that shit down and I scared the piss out of him
Piss a nigga off, put a gun to his frown

【意訳】
それから、彼女はそいつを家に招き入れる、二人はソファーに座りこむ
音楽は大音量で鳴っていて、そいつの頭の中は雲だらけ
俺は音楽のボリュームを下げて、そいつをめちゃくちゃビビらせる
怒らせて、そいつのしかめっ面に銃を突きつける

リズが男を家に招き入れると、リル・ウェインたちが銃を持って突撃します。

音楽のボリュームを下げて、怒鳴りつけ、男をビビらせます。

Nigga, turn around, I ain't here to fuck around
I ain't here to fuck around, caught you wit' your pants down
You know what it is, put your fuckin' hands up
Liz, that's enough, you can put your hands down

【意訳】
おい、後ろを向け、俺は遊びに来たわけじゃねえ
俺は遊びに来たわけじゃねえ、ズボンを下ろしたお前を捕まえて
お前は何が起こってるか分かるだろ、手をあげやがれ
リズ、もう演技は十分さ、お前は手を下ろせよ

ズボンを下ろしてお楽しみ中だった男に、銃を突きつけて、手をあげて後ろを向くように指示しています。

リズも被害者の演技中なので、一緒に銃を突きつけられて手をあげていますが、リル・ウェインは「お前はいいよ」とリズに伝えます。

And then he looked dead at her and he shook his head at her
She a good actress and you a dead actor
You'll be dead after we get what we're after
If Liz call you daddy, she about to be a bastard, oh

【意訳】
それから、彼は驚いた顔で彼女の方を見て、頭を振る
彼女は良い女優で、お前は死ぬほど下手くそ
俺たちが追ってるものを手にした後は、お前は死ぬことになる
もしもリズがお前のことをダディって呼んだなら、もうすぐ彼女は父親のいない子どもになっちまう、ああ

男は、リズとリル・ウェインがグルであったことに気づいて、ショックを受けています。

先ほどのサビで、リズが男のことを「ダディ」(お父さん)と呼んでいましたが、リル・ウェインたちが男を殺害するので、リズは父親のいない子どもになってしまうと言葉遊びをしています。

I got way too many bitches that do anything for me, nigga
But think for me, nigga
Send her to you like she ain't for me, nigga
I hope you alone like bankruptcy, nigga

【意訳】
俺のために何でもするビッチがたくさんいすぎる
だけど、俺のために考えてくれよ
俺は、彼女を俺のためじゃなくて、お前のところに送りつける
俺はお前が破産したみたいに独りぼっちのことを祈るぜ

自分のために働く女性がたくさんいるけれど、リル・ウェインはその女性たちと自分が楽しむのではなく、その女性たちをターゲットの男たちの元に送りつけなければいけないと嘆いています。なんだ、その嘆きは。

She pour you a drink, that drink on me, nigga
She slip somethin' in it, now thank for me, nigga
Mona Lisa, I done painted the picture
Mo-mona Lisa, out the frame on these niggas

【意訳】
彼女はお前にドリンクを注ぐ、そのドリンク代は俺持ちだぜ
彼女はドリンクに何かを滑らせる、俺に感謝しろよ
モナ・リサ、俺は絵を描ききった
モナ・リサ、額縁から出てきて、こいつらに仕掛けるときさ

リル・ウェインが送り込んだ女性は、男たちに睡眠剤(?)を入れたドリンクを注ぎます。ドリンク代はリル・ウェイン持ちです。細かい(笑)。

Pussy got you out of character, nigga
You fall for these hoes off your ladder, my nigga
Take everything that you have 'til you don't even have an opinion
We have your attention

【意訳】
プッシーはお前の行動を変えさせる
お前はこいつら女のために梯子から落ちるのさ
俺はお前から全てを奪い取るぜ、お前が主張すら持たなくなるまで
俺たちはお前の注意を引いてるんだ

普段は冷静な男も、リル・ウェインが送り込んだ女性たちの前では、骨抜きになってしまう様子が描かれています。

And now you're lookin' down a barrel though, nigga
Now she lookin' for her pantyhose, nigga
We just lookin' for the casserole, nigga
But she gon' show us where you stash it though, nigga
Mona Lisa

【意訳】
そして、お前は状況を甘くみてる
彼女はパンストを探してる
俺たちはキャセロールを探してる
だけど、彼女は俺たちに、それがどこに隠してあるかを教えてくれる
モナ・リサ

キャセロールというのは、フランスの家庭料理のようですが、ここでは男の家にある大切なものという意味でしょう。

ということで

前編はリル・ウェインのやりたい放題な犯行っぷりを見てきました。

細かい描写がリアリティを高めていたり、言葉遊びがあったりと、リリシストっぷりが伝わるバースだったかと思います。

後編は、リル・ウェインに送り込まれた女性といる被害者側の男として、ケンドリックがラップします。

ということで、解読をお楽しみに!

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