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ステップを踏んで行動変革を呼びかけるワーレイの言葉を読む (Wale - "MOVIN' DIFFERENT")

Writer: @vegashokuda

今月19日、ワーレイ(Wale)新EP『The Imperfect Storm』をリリースしました。

「不完全な嵐」と題された本作のアートワークでは、灰色の雲が立ち込める街角で車の一部が燃やされる様子が描かれており、本年5月25日にミネアポリスでジョージ・フロイド氏が警官に殺害されたことに端を発する、全米で起こっているプロテスト後の街の雰囲気を想起させます。収録楽曲をみても現状を反映したコンシャスな内容のものが多いです。

そんなわけで、今回はそのEPの1曲目である「MOVIN' DIFFERENT」の歌詞を解読していきます。EP全体のトーンを決定づけるとともに、この局面での人々の「動き方」を問うような重要曲です。


サビ(McClenney)

Left to right, side to side, do you
Left to right, side to side, do you
Left to right, side to side, you do
Lovin' the way you move it baby
Let's take our time all the way

【意訳】
左から右 サイドからサイド さぁ
左から右 サイドからサイド ほら
左から右 サイドからサイド 動いて
君のその動き 最高だね
ずっと一緒に時間を過ごそう

*この部分はMcClenney「sidetoside」という曲をサンプルしたものです。ここで出てくる"move"という単語が、この曲の中では後に異なる意味を持つようになります。


1バース目

Nine in the streets, niggas ridin' in the streets
Try to police then we sob and repeat
I done seen this like a hundred million times
Seen a white riot get a black nigga shot

【意訳】
ストリートには9ミリ口径銃 男たちは走っている
警察に立ち向かってはむせび泣きを繰り返す
この光景を1億回は見てきた
白人の暴動で黒人が撃たれるのも

*人種差別へのプロテストで人々が暴徒化する様子を描いています。暴動が起こる理由としては
 1) 平和的なプロテストを何度繰り返しても世の中が変わらないことへの失望・怒りから
 2) そもそも人種差別反対を訴えたいわけではない人々が混乱に乗じて建物を破壊している
など様々考えられるようですが、特に上記2)の場合、結果としてまた新たに黒人が命を落とすことになってしまいます。

Strapped fully, yes, 'cause the pig finna ride
Blasphemy, yes, they ain't askin' for God
They ran through the stores, they ran through the spas
It's hard to get mad when it's mad niggas gone

【意訳】
ブタどもがやってくるから武器を準備してるさ
冒涜? そう 奴らは神なんか当てにしないのさ
奴らは店やスパを荒らし回った
多くの人が死んでいると 怒るのも簡単じゃない

*1行目の「ブタども」警察のことです。

*あまりに多くの人が命を落としていると、怒るエネルギーさえも湧かなくなってきます。4行目では、そうした絶望が描かれています。

Yeah, no fear of the law
Lights turnin' off, niggas head comin' off
Yeah, nigga ran through Dior
Flight Club gone in and takin' off

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