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現代のフランス料理『分子ガストロノミーはもう時代遅れ?その先の世界』 #2

はじめに

今では、エスコフィエが見直されたり新解釈されることが増えてきました。それと並行するように『分子ガストロノミー』の技術が末端まで伝わるようになり、興味を持たれるようになっています。

エスコフィエ:フランスの料理人。現在のフランス料理のバイブルといわれる『料理指針』 Le Guide Culinaire (1903) の著者。ドイツ皇帝ウィルヘルム2世をして「朕はドイツ皇帝,汝は皇帝の司厨長,そして司厨長の王」といわしめたほどの名コック。レストラン・デュ・プチ・ムーラン・ルージュに働いていた頃,ホテルリッツの経営者 C.リッツに認められてから,サボイホテルやカールトンホテルでコック長生活を送った。

エスコフィエの新解釈 

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いろいろな料理文化がSNSの影響によって、急激に発達しており料理の新時代が幕あけされようとしている時代に突入しようとしているのです。

歴史背景を振り返る


2002年 世界ベストレストラン50 開始

『第1位の推移』

2002 エルブリ

2003~2004フレンチランドリー

2005 ファット・ダック

2006~2009 エルブリ

2010~2012 ノーマ

2013 アル・サリェー・ダ・カン・ロカ

2016 オステリア・フランチェスカーナ

2017 イレブン・マディソン・パーク

2018 オステリア・フランチェスカーナ

2019 ミラジュール


2003年 noma オープン

公式インスタグラム

順位が最近では落ち続けていたが、2019年版世界のベストレストランでは、2位に返り咲いている。


2005年 食べログサービス 開始

2007年 ミシュラン東京 創刊

ミシュラン東京創刊以来、『カンテサンス』は3つ星を取り続けていることで有名になっている。

・カンテサンスチルドレン

2009年 【フロリレージュ】

2018年ミシュラン2つ星に昇格。アジアのベストレストラン50では2018年に3位を記録

2012年 【レストラン エス】

2013年 【フレンチ サクラ】

2015年 【アビス】

2016年 【レストラン レミニセンス】

2018年ミシュラン2つ星を獲得

2016年 【オルグイユ】

2016年 【クローニー】

2017年 【アルゴリズム】

2020年ミシュラン1つ星を獲得

2011年 エル・ブリ 閉店

フランスへ修行する『意味』は果たして

インターネット、SNSの普及によって殆どの人が携帯電話やパソコンで情報を仕入れる事ができる時代になった。

前回の記事で紹介したように、『ミシュラン三つ星獲得店舗』のメニューさえ、毎日把握することができる。本場のフランスで提供されている料理やレシピも簡単に手に入れる事ができます。

こんな時代に、フランスへ修行へ行ったり、ミシュラン掲載店へ修行へ行く意味は、今やあまり無いのかもしれません。

分子ガストロノミーは時代遅れ?

いまや、様々な情報が飛び交うインターネット社会の中【分子ガストロノミー】の技術を習得する術は確実に増えてきています。

今までの時代背景であれば、本場フランスへ修行しにいき、その技術を日本に持ち帰り、その技術を伝えていくという流れが基本的でした。

しかし、今や外部の人では 手に入れることが困難な情報ですらインターネットを通じて、知識を得ることができます。【分子ガストロノミーの技術】を武器にして、戦っていこうと思う料理人は数多くおり、それが技術のステータスとしている人がどんどん増えてきています。

しかしながら、分子ガストロノミーの本質を見誤って乱用し、最近の若者に多く見られる『何がしたいかわからない』料理を多く生み出している事実があります。


『本質を見誤る』インターネットの進化による代償

分子ガストロノミーによって、世界の料理はおおきく変化したといえます。しかしそれが正解と答えを導きだすにはまだ早いのです。

分子ガストロノミーの発症の親ともいえる【エル・ブリ】の料理長は、なにも称賛され続けていたわけではなく、裏では大きな批判もありました。

アドリアの「分子ガストロノミー」に加えられた添加物が客を害することになっているとして批判し、アドリアのメニューに健康への害について記載するべきだと述べた。アドリアが大量に料理に入れるこれらの着色料、ゲル化剤、乳化剤、酸化剤等は健康に大きな影響を与えると主張している

本来、美味しい料理を作ることが1番の目的にも関わらず 見た目への執着によって、別の方向に偏っていないか今一度確認する必要があるのではないだろうか。

私のビデオ11_Moment

分子ガストロノミーのあるべき姿

『海老を酸味の効いたレモン汁で食べさせたい』と考えたとしよう。この料理を高級フランス料理店で提供するのであれば、何らかの工夫が必要になるはずだ。

しかし、『伊勢海老とマイヤーレモン、この組み合わせが1番だ!それ以外ない』と思っているならば、分子ガストロノミーの技術で『レモンの泡』を作ることができれば、本来の作りたい味・構成を壊すことなく、ビジュアル的にもあっと驚かせることができるだろう。

これが過剰になってくると、海老をすり身にし、成形しなおし、泡を添えて・・・と本来あるべき姿を跡形もなく消し去り、食べ手には理解しがたい料理になることがしばしば見受けられる。

何が言いたいかというと、何事もバランスが大事であり、分子ガストロノミーを美化しすぎないことが重要だということだ。

これから起こる料理界のブーム

音楽でもなんでもそうだが、ブームというものがある。これは料理においても同じことが言えるのではないかと推察している。

冒頭で述べた、世界のレストランの歴史的背景から見ても現代の料理は、インターネットによって急速に成長し成熟してきたように思える。もちろんまだまだ分からない技術、知りえない技術がないとは言えないが、これから情報が回ってくる速度は、さらに増していくだろう。

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そして今まで以上に素材重視という言葉が飛び交うだろう。

今の時代、食材の調達も容易になり直ぐに真似をできるようになった。ここでトッププロたちはどこで差をつけるのか。調理法や技術が発達した今、素材で勝負する場面が増え、より料理が簡素化されていくのではないだろうか。

実際にその兆候はではチラホラと出始めているのではないだろうか。実際にノーマが日本で披露した料理がこちらだ

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世界一のレストランに選ばれた「ノーマ」が東京にオープンし、4万200円の賞味コースが登場した。コースにはアリが乗ったボタンエビの刺身が含まれている。
「ノーマ」が提供するこのコースは15品の料理を3時間かけて賞味するというもので、ボタンエビにアリが乗った料理まで登場する。
アリとボタンエビを組み合わせることで、アリに含まれる天然のギ酸がボタンエビに変わった酸味をもたらすという。http://japanese.china.org.cn/life/2015-02/09/content_34774728.htm

ほかにこんな料理も

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カンテサンスでは素材の良さでしか勝負できない料理も

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このようにトップシェフたちは、調理技術や独創性にとどまらず、ほかの人に手が届かない圧倒的に素材への拘りを見せつけている。このようなシンプルな料理が評価されるようになってきたのは、新たな時代が幕あけしはじめている証拠なのではないでしょうか。


『野菜の低温調理・真空調理についての意味・温度』 #3  


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