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春、新しい世界へ。


キッカケはいつだったか。そうだ、あの日私は夜に始まるあの番組を楽しみに一日を過ごしていた。
今年は、誰が優勝するのだろうか。この人かな、このコンビかな、でも私はこのコンビが優勝して欲しいな。敗者復活は誰だろう。このコンビを応援してるから勝ち上がって欲しいな。そんな様々な気持ちを抱えていた記憶が今も脳裏に焼き付いている。


午前中はソワソワしながら時間を潰し、ソワソワしながらお昼ご飯を食べ、さぁ、敗者復活戦が始まるぞ。そう意気込んで私はテレビの前で構えた。何十組もの芸人達がネタを披露するその姿に腹から笑って、誰が勝ち上がるんやろう。この人かな、あーやっぱこっちかなぁ。そんな気持ちで、テレビに齧り付いていた時聞き覚えのあるコンビが出てきた。


「さや香」その3文字。たった、3文字だけで私の耳がピクっと動く。どこかで見て、聞いたことのあるコンビ。検索して戦歴を見れば2017年のM-1グランプリに出場していたようだ。でも、違う。私はその年の戦いも見ていたが、そこじゃない。何か違うところで、このさや香という芸人と出会った記憶がある。この顔を、どこかで、この目で見たことがある。


思考を巡らせ、考えた時ピンと頭が働いた。そうだ、2年前に家族でお出かけをした地元のイオンモール。当時からお笑いが好きだった父親が、急に立ち止まって壁に掲示されているポスターを見て呟く。「さや香来るんや。すごいなぁ。」父のその小さな呟きに、父親の影響で時々お笑いを見ていた当時の私が返答した。「さや香?」「そう、さや香。おもろいんやでこの2人」「そうなん?えぇ、見たいなぁ。」ポスターの前に貼られたそのさや香というコンビに釘付けになっている私をみた父親が「じゃあ、見に行くか」そう私に笑顔で問いかけた。


その日最前列で見たさや香という人の姿は、驚くほど輝いてて、若手とは思えないほど完成されたその漫才に目を惹かれた。たった、5分。いや、もっと少なかっただろうか。そんな少しの時間しか無いのにも関わらず、そこに居る全ての人をさや香という素晴らしい空間に吸い込んでしまう。全ての人を笑顔にしてしまう。ただのショッピングモールの小さい舞台に立つ2人を見ている全てのお客さんが、2人から目を離すことが出来ない。
そんな、素敵な数分間だった。


失われてたピースをはめ込むかのように、私の頭の中で「さや香」というパズルが完成されていく。そうだ、あのさや香だ。あの日見たさや香だ。面白かったなあ、行きそうだなあ。そう思ってネタが始まるのを楽しみにした。飲み会ネタかあ。どんなんだろう。呑気にそう思っていたら2人の片方が呟く。

「か ら あ げ 4やから!」

4、、?そうだ、からあげは4だ。最初はそのネタに意味が分からなかった。これで突き通していくつもりなのか?正気か?と思ったのが本音。
でも、なんでやろう。私の顔は次第に笑顔になっていく。一人しかいないこの空間に私だけの笑い声が響いた。涙が出るほど笑った。

あーーーー、面白い。
訳の分からない。何が言いたいのかも分からない、ただただ叫んで、9や5や数字を繰り返し相方を抱き抱えている奇天烈なネタなのに、「面白い」その一言でしか表せなかった。それからだろうか、私がさや香という沼にはまってしまったのは。


今思い返せば、あの時敗者復活戦を見ていなかったらさや香に出会えてなかった。こんなにもズブズブとさや香という芸人を好きになっていなかった。劇場に通うこともなかった。あの日、私とさや香を巡り合わせてくれた赤い糸のような運命に私はさぞかし感謝している。


そんな2人を応援して3年目。2人が大阪から東京へと拠点を移す事になった。私がこれを投稿している時は、もう2人は東京に居るだろう。だけど、今のこの気持ちを一言で表すとすれば「行って欲しいけど、行って欲しくない。」そんな複雑な心境だ。


M-1グランプリ2023が終わった際、東京に行きそうだなと勘づいていた。勘づいていたけど、その予感は当たって欲しくは無かった。なぜなら、寂しいから。切ないから。そんな複雑な思いを抱えつつ私は2024年になってからも劇場へと足を運んでいた。だけど、その日は突然と現れる。

「ワーワーJAPAN」
2人の口から出てきた言葉は「東京に行く」その言葉だった。あぁ、やっぱりそうか。そう思っていたけど、私の頭の中は真っ白になり涙が溢れそうになる。大好きな2人のネタを見るのでさえ辛かった。4月からはこの2人を見ることが少なくなる。もうマンゲキ所属じゃ無くなってしまう。遠い存在になってしまう。手の届かない存在になってしまう。その事実を信じたくなくて複雑な思いを抱えながら、1時間耐え続けた。

東京進出するのを、応援しないと行けないはずなのに、応援できなかった。行かないでと本人に言いたかった。いつまでも大阪に居て。そう思ったのが本音だ。だけど、私は「さや香」のファンである以上、ふたりが決めた事、2人が進もうとしている場所、2人が決めた道を応援するのが仕事だ。


だから私は、例え今まで以上に会えなくなろうとも、大阪に帰ってくるのが難しくなろうとも、手の届かない存在になろうとも、私はこれからもさや香という存在を応援していく。ずっと2人に着いて行く。それくらい、私はもう貴方たちの虜になってしまっているのだから。


春、それは出会いと別れの季節。
私の所在地である大阪から、大好きな2人は去っていく。だけど、それと同時に2人は新しい出会い、新しい環境、新しい場所、新しいお仕事に巡り会えることが出来る。その活躍を、私はこれからもずっと見守っていくだろう。

大好きなさや香。
遅くなったけど、東京進出おめでとう。そして頑張れ。あなた達の故郷、大阪から応援しています。



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