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いま、わたしには余裕がない


 ゴールデンウィークが終わって、再び学校に行き始めた頃から何かがおかしい。それはとても小さなサインだった。なんだか「そわそわ」する。いつも急かされているような……。


夜、眠る時に自分の心臓の心拍音が聞こえる。心臓がトクトクしているなあと思う。つまり「動悸」がするってことだ。
 私の心臓は何かを告げていた。そして思った。こんな状態になったことが人生で何度もあった……と。

つまり、これは「ストレスのサイン」だ。何本もの連載を抱えていた時、夫の両親の看取りと大震災が重なった時、出張が重なって眠れなくなった時……。心臓はきゅうっとなってドキドキしていた。でもそれを私は無視してきた。
 そういう時は酒を飲んだりして「ストレス発散」とばかりに遊んだけれど、もうそれが出来るほど若くない。そもそも根本的な解決にならん。

 いま、私は余裕がないんだ。

 まずそれを自覚した。だって、夜、ベッドに横になると心臓の音が聞こえる。これは心臓からのサイン。心臓の音が聞こえる時は眠れない時。眠れないのは頭が休まらないから。

 そーだよ、私はめちゃくちゃ忙しかったんだよ。

 4月から鍼灸の専門学校に通い始めた。そもそも無謀なのだ。仕事は減らしてはいるが続けているこの3月〜4月は選挙の応援や、新しく立ち上げた法人を軌道に乗せるために忙しかった。なにもしなくても忙しいのに学校に行き始めたのだから、てんぱって当たり前だ。

「大変だってわかっていることをなんでやるの?」と女友達は言う。
「やってみなくてはわからないと思ったから」
「やってみて、わかったでしょう?」
「わかった。忙しい。私はテンパっていて余裕がない」
「どうするの?」
「……これから考える」
「あんたって、ほんとうに泥縄だね!」

 泥縄って言葉、最近使うのだろうか。「泥棒捉えて縄をなう」つまり、泥棒をつかまえてから縄を編む人のことだ。それじゃ泥棒が逃げるだろう!……だが、私はそのタイプだ。やってみて、考える。準備というものをしない。

「ランディってさ、準備ってのをしないよね? どうにかなるって人生をナメてる。それでうまくいくこともあると思うけど、やっぱ準備するって大事なんじゃないの?」
 
 確かに……。おっしゃる通りかもしれない。私がドキドキしている最大の原因。余裕がないことの最大の原因は「準備不足」なのかもしれない。そこでハタと思いついた。そうか!準備すればいいのだ。

 ゴールデンウィークが明けて、最大のドキドキの要因はテストである。テストが始まったのだ。日々の小テスト、そしてもうじき来る中間テスト。六三歳の脳みそにテストは恐怖である。暗記って若い頃から苦手。ボケが始まろうっていうこの頭に難しい漢字や意味不明の単語が刷り込まれるものだろうか?
 そもそも、なんでこんな年になってからテストにドキドキしなきゃならんのだ?あほらしい……。

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