ギターとおにいさん

いつもおにいさんはギターを弾いています。
毎日毎日弾いています。
そして、歌も歌っています。
自分で詩を書いて、メロディも考えます。
たくさんの人に歌を届けたいからです。

ギター はいつもおにいさんと一緒です。
健康診断でギターの病院に行く時以外は、おにいさんと離れません。
おにいさんは時々忘れ物をしますが、ほかのものを忘れてもギターはだけは忘れません。

ある時おにいさんは、お店で見つけたかっこいいビンテージギターのことが気になり始めました。少し欲しいな と思いました。
でも、そのことは誰にも言いませんでした。

しばらくして、おにいさんがギターを弾くと音色が変わっていました。
とても綺麗な音色で、おにいさんは驚きました。

どうしてかな？

おにいさんは、いままで感じなかったギターの変化を嬉しく思ったし、不思議な感じもしました。

でも本当はギターは何も変わっていなかったのです。
ギターとおにいさんは、いつも一緒にいるのが当たり前だったので、綺麗な音色に気づくことができなかったのです。
おにいさんは、かっこいいビンテージギターはもういらないと思いました。

ギターはなにも言いません。

ただおにいさんを見守っています。
大好きなおにいさんを。
ただおにいさんに寄り添っています。
大好きなおにいさんに。

おにいさんはみんなに歌を届けるためにどこにでもギターと一緒に広がっていきます。

おにいさんが歌うとみんなが嬉しくなります。
みんなが嬉しいとおにいさんも嬉しくなります。
おにいさんが嬉しいと、また みんなが嬉しくなります。

それからずっと、おにいさんはギターと一緒に歌を歌っていきました。