見出し画像

京都の観光ガイドでご案内する俳句とは

昨日(9/19)は俳諧に大きな足跡を残した正岡子規の命日だった。それをきっかけになんとなく、どんな俳句をこれまで紹介してきたかなぁと振り返ってみる。

まず最初に思い浮かぶのは、「名月や 池をめぐりて 夜もすがら」(松尾芭蕉)だ。これは観月の名所である広沢の池に対して詠まれた句であり、横を観光バスで通るときに、いつも説明している。

「柿主や こずえは近き 嵐山」(向井去来:芭蕉の弟子)も落柿舎(去来の家)に行った時は、ほぼ100%ご案内に入れている。去来は芭蕉が特に目をかけた弟子で、長崎出身、元武士であった。よって芭蕉がつけたあだ名が「俳諧の鎮西奉行」(センスある笑)。

京都検定的に見ると「布団きて 寝たる姿や 東山」(服部嵐雪:芭蕉の弟子)が最重要かなぁと。なぜかよく出題されるイメージ。これを出すときは、賀茂街道を走っている時かなと。

トップの写真にあるのは、伏見の西岸寺(油掛地蔵)の境内の句碑だ。「わが衣に 伏見の桃の 雫せよ」(松尾芭蕉)。これは芭蕉が西岸寺の任口上人を訪ねてきたときに、上人に会えた喜びを詠んだ。この逸話から、伏見の松本酒造の銘酒「桃の雫」が生まれている。

あとは宇治の萬福寺に入ったら出てくる句碑。「山門を 出づれば日本ぞ 茶摘み唄」(菊舎尼)。境内は完全に中国風の萬福寺と、門前には宇治の茶畑が広がっている様子を簡潔に見事に表現している。

最後に仁和寺の御室桜について。「仁和寺や 足元よりぞ 花の雲」(黒柳召波)。御室桜は背丈が低く、足元から咲き誇っていることを視覚的に美しく表現している。

俳句って短いだけに奥が深い。ガイド的にいうと、覚えやすく忘れやすい(汗)。

何より、歌にも共通するけど、一流の俳人が言葉を選び抜いて表現し、さらに(ここ重要)「時の洗礼」を経て、今に伝わってきている。それだけ多くの人々の心を揺さぶってきたからに他ならない。これからも大事にお客様に伝えていきたい。

最後に普段ガイドでは出さないものの、正岡子規が嵐山、嵯峨野を訪れて詠んだ句を4つご紹介。個人的にはきじの鳴き声と雨の音をかけた2つ目の句が気に入った。今度、雨の嵯峨野ガイドでは、ぜひ紹介してみよう。

「うぐいずの 啼けばなつかし 嵯峨の家」

「きじの鳴く 嵯峨野の奥や 雨ほろほろ」

「嵐山 葉桜あれど 若楓」

「人の目の 秋にうつるや 嵐山」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?