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手紙とコロナとレトルトカレーの話。①

【#手紙とコロナとレトルトカレーの話。】
①前置きの話

「コロナ禍で色々挑戦してるよね」
と言われることがあります。

一年くらい前から、お店の常連さんだったりスタッフだったりインターン生だったり、たくさんの人から仕事や学校や将来のことや恋愛のことなどなど、相談を受けることが増えました。

人によって受ける相談の内容は様々ですが、だいたい要約すると就職でも人間関係でも、
「何かを選択すること、何かに挑戦することに勇気が出ない、思い切って踏み出せない」
という悩みに集約されると思います。

本当に正直なところを言えば、店がピンチでどうにかしないと潰れてしまうので、あれこれもがいているだけなのですが、
「どうやったら勇気を出して挑戦できるようになりますか」
と聞かれる度に答えていることがあります。

「同じように勇気を振り絞っている仲間を作ること」
「その仲間と、前に進む為にはどうしたらいいか一緒に悩むこと」

僕にとっては、過去の偉人やもう成功してしまっている人の話は、なんだか自分と差がありすぎてピンと来ないことが多くて、
挑戦する時に何より必要なのは、現在進行系で「あの人もおんなじように悩んでるよね」
「同じ状況で諦めない人達がこんなにいるよね」
と寄り添うことや、寄り添える仲間を見つけることではないかと思います。

毎日充実していたり余裕があったり、悩みが無い人では無く、
僕がいつも相談を受けているような、挑戦する勇気や踏み出す力が足りなくて毎日悩んでいる人達と同じように、「今僕はこんなふうに勇気を振り絞っています」ということを書くために、ここ数年やっていたことや、これからやることを整理して書いてみることにしました。





ここ1年半くらいの毎日は、
朝、家でちょこっと事務作業してから、店に出勤して厨房でカレーを仕込みつつ、商社さんや百貨店さんと電話で打ち合わせをして、
昼、お店をオープンしてカレーをお出しして、
お店が終わってクローズ作業をしてスタッフを見送ったら、
夕方は外出して企画中のレトルトの打ち合わせや今あるレトルトの商談や納品をして、
夜に店に戻ってきて営業したりカレーの研究や翌日の仕込みをします。
定休日はだいたい出張したり打ち合わせしたりしています。

1番長いときで、朝の7時から夜の1時くらいまで働いています(寝坊したりサボったり仲良しのお店に遊びに行ったりもしてるけど)。


この2年余り、ずっと闘い続けている相手がいます。
「新型コロナウイルス」です。

ラージクマールは2019年の秋にオープンしました。直後にコロナ禍がやってきました。
多くのお店がそうであったように、大打撃を受けました。
今でも、1年後にこの店があるかはまだ分からない状況の中で闘っています。
乗り越えるために、レシピ公開やらデリバリーやら移動販売やらレトルトカレーやら、思いつく限りのことをやって、何度も何度も挑戦して、ことごとく跳ね返されてきました。
挑戦することを笑われることも、挑戦して結果が出ないことも、挑戦することが怖くて眠れない夜も、何度も何度も経験してきました。

まだまだどうなるか分かりませんが、ワクチンができ、感染者数が減ってきて、「ひょっとしたら、このまま収束するのかもね」という声も聞こえてくるようになりました。
うまく表現するのは難しいけど、ぼんやりと、「ただこのまま過ぎ去るのを待つんじゃなくて、このコロナ禍を克服して、人としてもカレー店としても大きく成長した、という状況でこの数年の地獄みたいな期間を終えたいなあ」と思っています。

「この数年間で、何ができたのか」を毎日考えています。
コロナのせいで、大勢の人がたくさんのものを失った数年だったと思います。
無くしたものや、手放さざるを得なかったもの、精一杯生き抜く上で変わらざるを得なかったこと、変わってしまったこと。

僕も例外なく、たくさんのものを失いました。
まずは、それを埋めるものを作ろうと思いました。
それを作り上げることができたら、その時初めて「コロナ禍を克服した」と言えるのではないだろうかと思っています。

コロナがあったからできなかったこと。
コロナがあったからこそ作れるもの。

おいしいものや便利なものは、デリバリーや通販で大抵のものが手に入ることがわかりました。
会社に行かなくても、リモートワークでできる仕事がたくさんあるも分かりました。

余裕が無くなり大変な状況の中で、明確にしにくくなったことが確実にひとつあったと思います。

「遠く離れた大切な人に会うこと」
「気持ちを伝えること」
「他人を思いやること」

それらを詰め込んだものを作ってみようと思いました。
今、そういうものを作っています。
そういうものを作り上げられて世に出せたら、「コロナを乗り越えた」と言えるのではないかと考えました。
これから、この数年を振り返りながら、それが出来上がるまでの過程を書いていこうと思っています。
今度こそ、コロナを乗り越えにいこうと思います。


②「誰かにもらったりあげたりした日の話」につづく

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