ラージクマール

神戸のカレー屋。 https://lit.link/rajkumar

ラージクマール

神戸のカレー屋。 https://lit.link/rajkumar

最近の記事

手紙とコロナとレトルトカレーの話。⑥

コロナ禍の振り返りと、新しく企画してるレトルトカレーについての長文のシリーズです。 【#手紙とコロナとレトルトカレーの話】 ⑥個人戦とチーム戦と責任の話 僕はカレー屋を経営しているので、いちおう経営者のはしくれということになります。 よくマーケティングや経営の本を読んだり講演を聞いたりもするのですが、「経営者は孤独」というフレーズをよく見たり耳にしたりします。 理由は様々だとは思いますが、 決断を迫られる場面が多いこと その結果が全て自分にのしかかってくること 失敗した

    • 手紙とコロナとレトルトカレーの話。⑤

      【#手紙とコロナとレトルトカレーの話。】 ⑤孤独と忘れられないメールと手紙の話 そもそもこの投稿シリーズは、 ①コロナ禍でなにをしていたかの記録 ②その中で開発しているレトルトカレーについての開発日誌 の二つを書こうと思って始めたはずなんですが、書きたいことだらけでなかなかレトルトのことまで辿り着けずにおりました。 今回ようやくそのあたりの話を書こうと思います。 昨年のこの時期に、「Letter」というカレーセットを発売しました。 「コロナ禍を乗り越えうるもの」として、昨

      • #手紙とコロナとレトルトカレーの話。④

        ④挑戦と勇気と命がけの仕事の話 前にも書きましたが、うちのお店にはたまに 「挑戦したいけど勇気が出ない」 「自分に自信が持てない」 「人生このままでいいのか不安」 という相談を抱えた人が訪ねてくることがあります。 多分そんな人たちにかける言葉は、 「そのままの君でいいよ!夢を追ってチャレンジしてみよう!」 的なものが模範解答なのはわかりきっているんですが、そもそも僕自身が 何かにチャレンジするたびに失敗したり後悔したりしているし、 もうすぐ実店舗をオープンして2年、間借り

        • 手紙とコロナとレトルトカレーの話。③

          【#手紙とコロナとレトルトカレーの話。】                     ③誰かを応援することを勉強した日の話 突然ですが、僕はラップが好きで(意外って言われる)、これまで音楽はもっぱらヒップホップばっかり聴いていました。 しんどい時にラッパーがよく歌っている「昔はどうしようもない境遇だったけどラップ頑張ってここまできたぜ」的な歌詞を聴くとなんだか元気が出るからです。 逆に流行っている歌とかはあんまり知らなくて、カラオケはあんまり得意ではありません(カラオケでマイナ

        手紙とコロナとレトルトカレーの話。⑥

          手紙とコロナとレトルトカレーの話。②

          【#手紙とコロナとレトルトカレーの話。】 ②誰かにもらったりあげたりした日の話 白状してしまうと、今年の春先、僕はけっこうやさぐれていました。 コロナ禍が長引き、いい加減擦り減っていたのもありますが、輪をかけて気持ちをどんよりさせているものがありました。 「時短協力金」というやつです。 時短要請に伴い、夜の営業を短縮や休業した分だけ、都や県から財政支援が得られますが、あくまで「夜の営業時間を短縮したお店」が対象なので、ランチ営業だけのお店はもらえません。 完全に自業自得な

          手紙とコロナとレトルトカレーの話。②

          手紙とコロナとレトルトカレーの話。①

          【#手紙とコロナとレトルトカレーの話。】 ①前置きの話 「コロナ禍で色々挑戦してるよね」 と言われることがあります。 一年くらい前から、お店の常連さんだったりスタッフだったりインターン生だったり、たくさんの人から仕事や学校や将来のことや恋愛のことなどなど、相談を受けることが増えました。 人によって受ける相談の内容は様々ですが、だいたい要約すると就職でも人間関係でも、 「何かを選択すること、何かに挑戦することに勇気が出ない、思い切って踏み出せない」 という悩みに集約される

          手紙とコロナとレトルトカレーの話。①

          「レシピ公開」と「僕の料理人としての伸びしろ」の話。

          月曜が定休日なので、ラージクマールとしての一週間は火曜日から始まる。 恒例になっていることが、「火曜日の朝に、その週の週替わりカレーのレシピを公開して一週間が始まる」こと。 基本的にその週に店で出すカレーのレシピをほぼほぼそのまま公開している。 レシピ公開を本格的に始めたのはコロナ禍が加速した2020年の4月。 店にお客さんは来なくなり、また緊急事態宣言中なので「来てください!」とも言えない雰囲気。以前も書いたが、僕は「自分のカレーを他人に食べてもらうことに感動して脱

          「レシピ公開」と「僕の料理人としての伸びしろ」の話。

          Kolokolさんというアイドルを応援するようになった話。

          ラージクマールをオープンして何ヶ月かしたある日のこと。 オープン景気もひと段落し、お客様の数も減り出してきて、なんか策を考えねば、とぼんやり考えていた頃、小柄な女性のお客様がいらして、丁寧にカレーを食べ、礼儀正しくお会計をし、丁寧に頭を下げて帰っていた。 「なんか可愛い人でしたね」 「ねー。地元の子かなー。あんな常連さん欲しいね」 みたいな会話をスタッフと交わして、その後しばらくそのことは忘れていた。 それからさらに数週間経った日。 ご新規のお客様から、聞き慣れない

          Kolokolさんというアイドルを応援するようになった話。

          脱サラしてカレー屋になろうと思った日の話。

          カレー屋になる前はサラリーマンだった。 一部上場企業で、比較的安定した、ホワイト企業と呼んで差し支えない職場だったと思う。                                    ただその中で、僕は同期と比べても仕事はかなりできない方だった。 決して謙遜ではなく、「どうやったらこいつが一人前になれるか」みたいなミーティングが部署内で開かれるくらい仕事のできないやつだった(いっそ殺してくれと思いながら出席していた)。 子供のころから、人に誇れるような長所も、自慢

          脱サラしてカレー屋になろうと思った日の話。

          レトルトカレーを作った話。

          2020年。コロナ禍。 打撃を受けた多くの飲食店と同じように、オープンして半年足らずのうちも潰れかけた(というか現在進行系で危うい)。 レシピ公開やらデリバリーやら移動販売やら、思いつく限りのことをやった。 いくつかは賞賛され、いくつかは妬まれ、いくつかは誤解され、いくつかは感謝されたけど、どれも「コロナ禍を乗り越える」には程遠かった。 何より、「自分の作ったカレーを人に食べて欲しい」という想いから安定を捨てて脱サラしてカレー屋になったのに、誰にもカレーを食べてもらえない

          レトルトカレーを作った話。