めぐ山

フリーランスの編集者・ライターとしてグルメ・観光・エンタメなどのジャンルでパラレルに仕…

めぐ山

フリーランスの編集者・ライターとしてグルメ・観光・エンタメなどのジャンルでパラレルに仕事をしています。

最近の記事

壁の薄いマンションで真夜中に思い出す、佐藤さん親子のこと。

真夜中に1人で起きていると、もうこの世界の人類は絶滅してしまって、生きているのは自分だけなのではないか、という安易な妄想に孤独を感じる瞬間がある。 けれど、耳をすませば薄い壁の隣の部屋からは知らない誰かの寝息や話し声が聞こえていて、世界はまだ滅んでいないことを知る。 数日家から出ていなかったことに気がついて、急に社会に参加しなくては、という謎の焦燥感にかられて慌てて外に出るけれど、結局はコンビニくらいにしかたどり着けない。24時間開いていてくれるコンビニは、夜行性の人間にと

    • まだ、あの壊れた光の中にいる。【マイ・ブロークン・マリコ】

      『マイ・ブロークン・マリコ』という漫画を知ったのは、Twitterに誰かのRTでたまたま流れてきたツイートがきっかけだったと思う。 物語は、OLのシイノが営業回り先の飲食店で、親友のマリコが自殺したというニュースを耳にするところから始まる。 あんたは どうだったか 知らないけどね あたしには 正直あんたしか いなかった マリコを長年虐げ続けてきた父親から奪い取ったマリコの遺骨を抱えて、立ち尽くすシイノがつぶやいたセリフだ。 たちまち、わたしが中学生の頃、友達が口にした

      • 行ってしまう人たちの手のひらは、お日様の匂いがする。

        久しぶりに祖父のたかしちゃんが夢に出てきてくれた。一緒に電車に乗って、どこかへ向かっていた。窓際に祖父が座っていて、こちらを振り向いて笑うと、逆光で窓の外がやたらチカチカと眩しく感じた。 若かりし頃は保険会社の営業マンとして、全国を転々と渡り歩いた祖父。私が大学を卒業する頃には、病でまともに話すこともできなくなっていた。新卒で入った会社で広告営業をしながらくじけそうになっていた私が泣きながら助言を求めると、ベッドの中からゆっくりと文字盤に指を差し出して、『し ん ぼ う だ

      壁の薄いマンションで真夜中に思い出す、佐藤さん親子のこと。

      • まだ、あの壊れた光の中にいる。【マイ・ブロークン・マリコ】

      • 行ってしまう人たちの手のひらは、お日様の匂いがする。