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贅のきわみ

ゆうべ、彼と入ったイタリアンのお店で我家にいる猫にとんでもなくそっくりな顔をした表紙を見つけた。

「後で見てみようね」と彼が微笑む。

私はニヤっとうなずき、メニューを開いた。パスタやピッツァの名前が並ぶ中、カクテルの名前に惹かれ、思わずそれを注文することに決めた。

灰いろの毛に、まるで黄いろの宝石のように輝いた目でこちらを見ている。彼が持ってきてくれてパラっと捲ると、海外の本で私には読めないもの。彼に翻訳してもらいながら、目だけのページ、しっぽだけのページ、小さいのから大きいのまで、この世のものとは思われない可愛いあれこれに、ついつい目がまあるくなる。
私があまりにも興奮していたせいか、彼が写真集と一緒に使い慣れていないフィルムカメラをつかって私と写真集を横にならべて撮ってくれた。

そんなことしてたら、あっという間にカクテルがテーブルに運ばれてきた。私は甘ったるいお酒が好きではない。もちろん、カクテルは別。だって名前がかわいいから。

料理が運ばれてくる間、私たちは店内の雰囲気に浸りながら、ゆったりとした時間を過ごした。オレンジいろのやんわりな照明につつまれた空間は、どこか懐かしく、安心感を与えてくれた。私と彼がお酒を飲んだときの会話は馬鹿げた話が多い。
彼のギャグが次々と飛び交う。馬鹿をしている彼を見るのがたまらなく好き。


たっぷりと厚いパンがのったシーザーサラダ、薄くカリッと焼かれた生地の上に、ぷりっと太ったえびが乗ってるシーフードピザ、彼いわく一番のカルボナーラ。たしかに濃厚なそれは、文句ひとつ出ない一皿だった。

さらにお酒やおつまみを買いたしてホテルに戻り、見たかった映画をよこにベッドの上におつまみをひろげてでぽろぽろ泣き、映画が終わった頃には缶は軽くなっていて、ベッドにはチーズの包み紙で山ができていた。(笑)

家に帰ると、我家の猫がいつものとおり待っていた。まるで私たちがどこに行っていたかを知っているかのように、じっと見つめている。その瞳に浮かぶ微笑みが、今日の出来事をさらに特別なものに感じさせた。

めくるめくようなその感じが、いいね、私はとても好き。

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