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[戯言戯言日記] 窓

6月14日(月)

 窓を開けるとTシャツには少し肌寒いほどの涼風が鳥たちのさえずりを乗せて吹き抜ける。どこか自分の内側でぐずぐずとくすぶっているなにかやぐつぐつと煮詰まっているなにかが冷まされて乾いていく。
 どぎつい色のプラスチックでできた植木鉢で朝顔が双葉を広げて同じ風に吹かれている。朝顔には少し、寒いかもしれない。
 家からは出ないけれど、窓を開けば世界が通り抜けていく。風は外の音やにおいを連れて入り込み、その一部を残して出ていく。同時に家の中からも、音やにおいを連れて行く。
 風が心地よいだけで気分がよくなる。ざわついていた内側が凪いでいく。わたしのわだかまりなどその程度のものだ。ただ心地よい風さえ吹けばよい。
 コンピュータを世界につなぐとそこに窓ができる。コンピュータから入ってくる世界は苦悩に満ちている。重たい状況にある人々が蠢いている。遠からず感じている人たちも悩んでいる。わたしなどわけのわからないものを書いてはうんうん唸っているだけで、あれこれ思い悩んでいるつもりではあるけれど窓の外に比べたら凪みたいなものだ。外海の荒波にもまれる木の葉のような人々を見ながら自分はそれを窓を通して覗いている。
 世界は混乱していて混乱はすぐ窓の外まで来ているのに、窓を挟んでいるだけで大きな隔たりがあるように感じられる。ここが戦線のわずか後方に過ぎないことを忘れ、自らが傍観者であるような気分になる。
 窓を開ければ外気が入り込む。内側は外側とつながる。問題はその窓は開いているのか、だ。窓は開いているのか。開いていたのか。いつから。内側はいまも内側なのか。ほんとうに。

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