[映画]女王陛下のお気に入り

 今夜のU-NEXTは『女王陛下のお気に入り』。2018年の作品である。

 英国王室を描いたコメディ作品で、王室をこんな風にしちゃっていいのかという不謹慎さに満ちた作品である。それは面白いのかと言えば、もちろん面白い。

 女王を演じるのがオリヴィア・コールマン、その側近サラにレイチェル・ワイズ、そして主人公的なアビゲイルにエマ・ストーンという三つ巴だ。女王陛下を中心に、サラとアビゲイルが女のバトルを繰り広げるというお話で、日本版には「英国版大奥」というキャッチコピーがついていたけれどこれがもう言い得て妙。まさに大奥なのだ。

 この主たる三人の芝居がもう強烈であり、それだけで二時間なんてあっという間だ。特に際立っているのが女王陛下役のオリヴィア・コールマン。彼女はどう見ても他の二人よりもだいぶ年上に見えるのだけれど、実際の年齢でいくとオリヴィア・コールマンはレイチェル・ワイズよりも若いのである。とてもそういう風には見えない。この三人の競演が作品の見どころとなるわけなのだが、いずれ劣らぬ名優であり、それはもう見応えがありまくりである。特に注目してほしいのはゲロの吐き方である。いや、書き間違いではない。ゲロの吐き方である。

 何の話かと思われるかもしれないが、この作品、実にこの主要三キャラクタ、三人の女性三人ともに嘔吐シーンがある。もちろんわざとやっているのだろう。女性がゲロを吐くシーンというだけでもなかなか珍しいのに、三人別々の女性がそれぞれにゲロを吐くというのは一体どういうことなのか。このゲロシーンはぜひ比較していただきたい。いずれ劣らぬ…と思いきや、これだけはもう圧倒的にオリヴィア・コールマンに軍配だ。リアルすぎて見ているこちらまで吐きそうになる。もちろん吐しゃ物は見えないように演出されているのだけれど、吐く芝居がうますぎるのである。本当に吐いたんじゃないかと思うような芝居で、油断するとこちらまでもらいゲロということになりかねない。わたしはこれまでにかなりの数の映画を見てきたけれど、ゲロを吐くシーンで自分まで吐きそうになったのはこれが初めてであった。映画史に残るゲロシーンとして、名ゲロ女優としてオリヴィア・コールマンを推したい。

 宮殿の造形や貴族の服装、風俗なども作り込まれていて「英国貴族」を感じられる作品なのだが、あまりにも強烈なゲロシーンが印象に残りすぎて他の要素がかすんでしまった。もはやなんの説得力もないけれど、ゲロシーン以外もいい映画なのでぜひご覧いただきたい。いやほんとに。

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