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無数の手

がったん。

私は、電車の揺れに耐えられず、盛大にズっこけた。

目には無数の手が映る。

乗っていたのが地下鉄だから、目には外の景色も光も入ってこない。
電車内のライトが手の影を強くつくりだし、私の方にまっすぐ手が伸びるのがわかる。

乗客はそれなりにいて、私を助けてくれようとしてくれている。

お化け屋敷で障子を破り出る仕掛けのようで、
バーゲンセールで商品を取り合うお客のようだった。

その手は全部、私を脅かすこともなく、敵意を向けているわけでもない。
その手は全部、私を助けようとしてくれている。

もうこれは、何年も前のこと。
だけど、忘れられない。一生、忘れることのない光景。

あの時助けてくれた、みなさん、ありがとう。
もう、がったんにも慣れ、負けずに乗れるようになったよ。

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