見出し画像

eウオレット利用が急増するマレーシア~マレーシア在住調査専門家からの報告

世界約40カ国に在住調査専門家を擁する当社、株式会社レインの、マレーシア・クアラルンプール在住専門家、Mr. E. M.から現地最新事情の報告が届きました。写真は今回の取材で撮ってきていただいた、夜市の屋台のeWallet利用ステッカーの図です。

―――

マレーシアでは確実にマレーシアでのキャッシュレス利用者が増加傾向にあり、特に2019年にはeウオレット利用が急拡大している状況にあります。もともと、マレーシア政府と中央銀行のバンクネガラは『Financial Sector Blueprint 2011-2020』において国内のキャッシュレス化を強力に推し進めており、2020年に1人当たり電子決済件数を200件とすることを掲げてきました。こうした政策により、マレーシア国内では2019年末に48の企業・銀行が電子マネーライセンスを中央銀行から付与されています。
ただ、マレーシアでeウオレットの利用が急速に進んだのは2019年からだと感じます。それまでも若い層ではある程度利用されていましたが、全国的な普及には程遠く、利用者層が限定的であったと言えます。この状況を変えた出来事として、一つには交通系プリペイドサービスのTouch'n Go(日本のSuicaに相当)が、高速道路の料金課金システムにRFID技術を導入したことを挙げることができます。このシステム導入に際して、同社はプリペイドカードとRFIDシステムをTouch 'n Go eWalletで管理するプラットフォームを構築し、期間限定でRFIDタグの取り付けなど全ての費用を無料とする戦略を打ち出しました。無料ということで多くの人が列をなしてTouch 'n Goの新しいサービスに登録、eウオレットユーザー数が大きく拡大しました。登録場所も近くのスーパーマーケットの駐車場とすることで、買い物のついでにといった心理も働いたと思います。
更には、マレーシア政府は2020年1月15日より、18歳以上で年収10万リンギット以下のマレーシア国民がeウオレットを利用すると、30リンギットの一時金を支払う政策『e-Tunai Rakyat』を実施しました。この一時金を得るために、多くの国民が殺到して申請を行い、またスマートフォンは持っているが使い方が分からない老人には孫が手助けするなどしたということもニュースになっていました。これにより、国民の幅広い層のスマートフォンがeウオレットに対応することになりました。今年3月9日の新聞記事では、登録ユーザー数は1,000万人以上に達しています。
この他にも、春節を祝う中国正月には中国人の間でアンパオ(紅包)と呼ばれるお年玉を渡す習慣がありますが、Touch 'n Goは知人にeウオレットでアンパオを送金すると最大で888リンギットのキャッシュバックが得られるキャンペーンを展開しました。このキャンペーンには中国人だけでなく、マレー人、インド人でも利用され、サーバーが停止する事態に陥るほどアクセスが集中しました。筆者は、幸運にも88リンギットのキャッシュバックをもらいました。
現在、マレーシア国内ではTouch 'n Go eWalletとBoost、GrabPayの3強が市場でユーザー獲得を繰り広げており、新規ユーザー獲得のため様々なキャンペーンが展開されています。前述した『e-Tunai Rakyat』も、この3社のみが対象となっています。
いまでは、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、レストラン、駐車場の支払いだけでなく、パサマラム(夜市)の屋台や小規模商店、公共料金の支払いなど幅広い領域での利用が可能となっています。私の周りでも美容院やフードコートのレストランといった小規模事業者が、顧客獲得のためにこうしたeウオレット対応を進めており、利便性向上や時代の変化に対応しようとしています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?