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『ラストシーン』は冬を歌わない

こんにちは。かみなりひめです。
最近は「ラブライブ!」シリーズのことばかり考えているかのように見えますが、水樹奈々も捨ててませんよ。笑

さて、最近はYouTubeでのライブ映像配信にも
積極的に取り組む水樹奈々さん。
毎月7日に7曲ペースで動画がアップされてます。

2月7日のラインナップは以下の通り。

Tears' Night(GRACE 2011)
Crystal Letter(MV)
大好きな君へ(GRACE 2011)
星屑シンフォニー(GRACE 2013)
ラストシーン(FORMULA 2007-2008)
エデン(MV)
深愛(GATE 2018)

7曲中3曲GRACEシリーズからの選曲。
GRACE自体がのライブなので、納得ですね。
加え、これらはすべてオーケストラアレンジされているというのも印象的です。

それは別にいいのですが。
私が気になったのは、この一点。

『ラストシーン』って
言うほど冬の歌なのか?

ラストシーン』。
アルバム『GREAT ACTIVITY』に収録されてます。
同じアルバムには『ファーストカレンダー』も。笑
出会いから別れまで一気に駆け抜けます。

この『GREAT ACTIVITY』の発売日は11月17日
まぁまぁといって差し支えない時期ですね。

さらに、この『ラストシーン』が歌われたのは、
LIVE FORMULA 2007-2008
LIVE FEVER 2009
LIVE GRACE 2019 OPUS.Ⅲ
と、冬の時期が多めとなっております。

さて、ここまで見てくると、

『ラストシーン』=冬

となるのも必然のような気がしてきます。
しかし、

「冬に歌われること」と
「冬を歌う曲であること」とは
別の話ではありませんか?

事実、歌詞を紐解いてみると、
案外「冬」のことは歌ってないのです。

いや、冬っぽい歌詞じゃね?」とお思いの人。
私には、冬っぽい語句が二つしか見当たりません。

見えすぎた嘘をついた
不器用な優しさが
桜舞う様に私の心に雪を降らす
二人で歩き始めたあの寒い空の下
手を繋いでたその温もりまで
嘘にしないで

確かに「」「寒い」の語が見えます。
それでも、「冬」と結論するには早すぎます。
じっくりと歌詞を見てみながら、

『ラストシーン』≠ 冬

ということを述べていこうと思います。

***********************

まず、端的に『ラストシーン』を表現すると、

「私」が「あなた」の前から姿を消す話

であると言えます。
しかし、この結末に至るまでが紆余曲折

昔きっと愛し合った
私の知らない誰かを
あなたは今夜だって
思い出にできないままでいる

あなた」は、昔の恋人に未練があると見えます。
そして、「」は「あなた」の未練に気づいていました。

見えすぎた嘘をついた
不器用な優しさが
桜舞う様に私の心に雪を降らす

およそ、「あなた」は未練を悟られまいとして、
」にも愛情を注いでいるのでしょう。
しかし、その「不器用」さが逆に仇となるのです。
かえって、「私の心に雪を降らす」のでした。

さて、ここで問いかけます。

この「雪」は、実際の景色ですか?
それとも、比喩としての「雪」ですか?

答えはもちろん「比喩」です。
そうでなければ、「心」に降雪することになります。心臓に雪が降り積もったこと、ないですよね。

ここでは、曇り空のように心が晴れず
雪のように冷えていったことを表します。

それが、「桜舞う様に」行われるのですから、
華やかさと同時に儚さをも表現するのでしょう。

ゆえに、「」は現実世界で「あなた」に好かれることを諦めてしまいます。

今引き返して
あなたの背中追い掛けて
困らせたくないから
夢の中では抱きしめていて
私をだましてほしい

あなた」からの愛情を追いかけることで、
あなた」の未練は断ち切られない。
夢の中だけで「あなた」の愛情を求めます。

でも、「私」も「あなた」に未練があるのでした。

あなたが好きだった
映画や曲やあの街も
全てを胸の奥に並べて
捨てられないまま
二人で歩き始めたあの寒い空の下
手を繋いでたその温もりまで
嘘にしないで

「私」は、「あなた」との思い出を振り返ります。
寒さ空の下」での話も、思い出の1ページ
情景ですが、今が寒いというわけではないのです。

また、ここでの「寒さ」は「手を繋いでたその温もり」を強調する効果があると考えられます。
気候は寒いが、二人には温もりがある。
ここでの主題は、過去の二人には存在し得た「温もり」の方ではないでしょうか。

二人の恋に終わりが来る事
始めからわかっていたけど
どの日か一つやり直せたなら
何か変わってたかな

ここも、「」の未練が現れています。
社会学の用語としては、「偶有性」でしょうか。
そうでありえた可能性に想いを馳せています。

しかし、「」は未練を断ち切ろうとします。

今振り返って私の姿
人ごみの中見つけて欲しいけど
もう涙なんて見せちゃいけないね
次の角曲がって行こう

角を曲がれば、「」の姿は見えなくなります。
確かに、「」のことを「人ごみの中」から「見つけて欲しい」、つまりは他の多くの人間の中から「私」を選んで欲しいという想いはあるのです。
それでも、「」は角を曲がっていくのです。
あなたの前から姿を消そうとします。

『ラストシーン』のラストではさらに、

私にできる最後のこと

と付け加えられます。
言うまでもなく、「」が「あなた」のためにできる最後のことが、「あなたの前から姿を消すことなのでした。

***********************

つまり、『ラストシーン』とはこういう話でした。

過去に愛した人に未練を持ち続けているが、
それを隠して「」と交際する「あなた」。

あなた」の気持ちに気づいている「」は、
自身の「あなたへの未練をなんとか振り切り、
あなた」が過去の恋人を追いかけられるように、
あなたの前から姿を消す話。

さて、お気づきでしょうか。

「冬」だとはどこにも
書かれていません。

想い出の片隅や、比喩として「冬」はありました。
しかし、物語の季節は「冬」でなくてもOKです。

では、なぜ「奈々ソン冬歌」に
選ばれているのでしょうか?

これは私の推測の域を出ませんが、

『ラストシーン』には
実際の景色が乏しく
ぼかされ続けていること

が要因の一つなのではないかと考えます。

降雪や「人ごみ」と、様々に設定される状況。
でも、どれも実際の景色ではなく比喩でした。

また、「あの寒い空の下」も過去の想い出
未練の対象を追いかけていく「あなた」は、
その想い出すらもいつかは消し去ってしまうかも

そのような一種の冷たさや儚さ。
それを「冬」という季節と
結びつけたのではないか?

と、考えることができるでしょう。

いずれにせよ、ファンの心を掴んで離さないバラードのひとつとして、この『ラストシーン』は位置付けられます。
LIVE ADVENTURE滋賀公演にて、夏ながらも披露されたのは、その根強い人気を物語っています。

YouTubeでの公開を機に、
またぜひ聞き直してみてください。


追伸
実は、あの「奈々ソン冬歌」には、「ぼかされる」という同じ特徴を持つ歌があります。それが『エデン』なのですが、その話はまたの機会に譲ります。

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