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K-pop ティーザーから考えるUX - 「期待感」の創造について

突然ですが、私は K-pop が大好きです。優れた音楽・パフォーマンスはもちろんですが、特にカムバック発表後のティーザーによるリリースまでに徐々に明かされていく過程の高揚感が非常に好きです。もちろん日本でもリリースまでの宣伝は多く行われていますが、韓国では特に盛んに行われている印象があります。今回はこの期待感を高める方法の一つとしてよく使われる「ティーザー」について、UXの観点から自分なりの考えをまとめてみようと思います。(※あくまで個人の見解です。)

そもそもカムバックとは

K-pop のアーティストは活動に一定のサイクルがあります。基本的には、アルバムをリリースするとそれから約一ヶ月ほど音楽番組に出演し続けます。その際のステージで披露されるのは、リリースしたアルバムに収録されている曲が中心です。この期間のことを活動期間と呼びます。それ以外の期間(この期間も次のアルバム制作や海外での活動・ライブなどのお仕事は行っています)から新しいリリースをして、再度活動期間に入ることをカムバックと言います。

ティーザーとは

多くのグループは、カムバック前になると「ティーザー」と呼ばれる短い動画を何本か発表します。Webでいうと、新しいサービスや商品のリリースに合わせて「ティザーサイト」が公開されるのと似ています。ティザーサイトについての解説はこちら↓

英語で「teaser」は「焦らす」ことを指しており、その意味の通り徐々に情報を小出しにしていく・ヒントを与えることでファンの期待感を煽る宣伝手法です。リリース前に徐々に情報が開示されていく形で行われます。

ティーザー公開によって得られる効果

こうした手法を用いることによって、実際にはどのような効果があるのでしょうか?

1. 既存ファンへのアプローチ
ティーザーでよく注目されるのが「手がかり」です。特に K-pop においては新曲の度に衣装のテイストやダンス・曲調といったコンセプトが大きく変わることが多いため、既存のファンは短い動画から雰囲気・断片的に公開される曲(またはBGM)などから情報を汲み取り想像を膨らませます。

サーカスがコンセプトと思われるMVのTeaser

また手の込んだコンセプトを持つグループは曲と曲を跨いでストーリーが繋がっていたり、細かい伏線を散りばめるなどの演出を行なっていたりします。

細かい部分など、自分ひとりでは絶対気づかなかった!と感動します。

こういった工夫が行われることで、SNSを通してファン同士で曲に関しての考察をしあい、その気づき・感想を思わず共有したくなるような状態にさせることで、活発にグループについての投稿がされる効果が期待できます。リリース後に関しても、「次はどうなるのか」といった期待感から次のカムバックを心待ちにするファンは多いでしょう。

一ヶ月に1人ずつソロ曲でデビューし、ようやく12人のメンバーが揃ったLOONA (今月の少女)の完全体Teaser

2. 新規ファン開拓も
また動画はたいてい Youtube で公開される上に数十秒と短いので、そのグループのファン以外の人も気軽に見られるようになっています。そのためカッコイイ!と話題のもの・前述したような、ファン同士の考察が盛り上がっているものも気軽に見ることができます。こうしたきっかけから、その時のカムバックのタイミングで新たにファンになる人も少なくありません。

このように、ティーザーが話題になればなるほど、既存・新規問わずファンを獲得する機会が増えていくことが予想できます。

ファンは「期待感」から生まれる

そのコンテンツのファンになる動機やきっかけは多種多様なものと思いますが、私は「期待感の創造」と、「先が気になる」コンテンツであることが重要なのでは、と考えています。K-popで言えば、体験はカムバックのステージを見る・リリースされた曲を買って聴くその時だけではなく、ティーザーが発表された瞬間から始まります。ティーザーを使った小出しの情報開示によって徐々に高まった期待は、新曲の公開をより注目すべきイベントへと昇華します。ただ突然公開をするのではなく、このような「焦らし」の手法がファンのモチベーションを高めているのではないでしょうか。

最近話題になった「PRODUCE101」なども、グループやオーディションを受けたメンバーの今後の成長への「期待感」からファンになる視聴者が多かったように感じます。

デメリット

考えられる失敗例としては、高まった期待感と結果が見合わなかったケースが考えられます。また「焦らし」が長い場合もコンテンツからの離脱が予想できます。適切な回数・期間と最終的な成果物(=新曲)のクオリティーが効果を得る前提条件となるのは当然ですね。これは他のコンテンツにも共通することだと思います。

まとめ

ほぼ趣味の領域の話を書いてしまいましたが、他のコンテンツやサービスのUXにとっても「期待感」というのは重要だと常々感じています。私もUI / UX デザイナーとしてユーザーが期待する体験価値を実現すべくサービスの改善に努めていますが、成長過程にあるサービスはまずユーザーに「使ってみたい!」「この先どうなるか見てみたい!」と思わせることが大切だと考えています。どんなに優れた中身を持っていても見て(使って)もらえなければ意味がないので、こういった手法は学ぶ部分が多いなと感じました。

あわよくば K-pop に興味が無い方も、この記事をきっかけにぜひ色々なティーザーを見ていただけると嬉しいです。ぜひワクワク感を共有しましょう。ここまで読んでいただきありがとうございました!



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