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【31時間】 #856


僕は普段は酒を飲まないのだけど
時々任意的に狂いたくなり
酒を飲む事がある

ちょうど昨日もそんな気分で
三連休の初日でしかも次の日にも
何も予定が無い
というコトが分かっていたから
お酒を買い込んであり
朝から麦酒の缶をプッシューした

普段飲まないから一缶目が一番来るし
全身が痺れる
嗚呼っ酒って奴は素晴らしいなと

でも普段はホントに飲まないのだ
飲みたいとも思わない

しかし昨日は飲むと決めていた

去年母が亡くなって
まだ自分の中で消化しきれていない部分と
何処かで家族という鎖から解放されたような部分があった

自分の中では不思議な喪失感と位置づいている


お昼を回った頃
遅い昼食を食べようと外に出た
もうかなひ酔っ払っている
泥酔とまではいかないが
自分でちゃんと酔っ払っているのが分かる

徒歩で5分程で着く蕎麦屋か
10分弱かかる街中華か
どちらにしようか迷った

近くの蕎麦屋まで行って
外にあるショーケースを見てから
判断し良ければそのままインする
よろしく無いと判断した場合は街中華に変更すれば良いのではと思った

しかし
一旦蕎麦屋まで行ってから街中華だと
全く方向が逆で
蕎麦屋まで5分として
それからまた振り出しのココまで5分
それからの10分
計20分もかかるじゃないか
それならばメニュー数の圧倒的多さの街中華にすれば失敗も少なかろう

という訳で街中華に決定した

とぼとぼと歩く酔っ払いの中年男
天気は程よく風も気持ちがいい
外に出て正解だな

さぁ街中華に着いた
『味福軒』
食ったら幸せになれるんだな

のれんをくぐり
引き戸を開け中に入ると
何組かのお客さんがおり
私と似たような中年男が中華相手に麦酒と戦っていた

私はテレビが見やすいテーブル席に陣取った
最初は天高く壁に張り巡らせてあるメニューを見ていたのだが
首をフリフリ見るのが面倒になり
目の前のテーブルにあるメニューを手に取った

こちらの方がカテゴリー分けしてて見やすい

何にするか
もちろんココでも酒はやる

悩んだ末に悩んだくせに冒険はせず
炒飯とレバニラ炒めと焼売にした
私は餃子よりも焼売が好きなのだよ

思った通りやはり最初に現れたのは炒飯だ
麦酒は一度ストップしてレモンサワーで炒飯と戦った
最初は何もかけずに戦う
半分程食べた頃に焼売とレバニラ炒めが同時に現れた
このタイミングで胡椒を少しふり醤油と酢もほんの数滴かけてやった

いわゆる味変という奴だ

さてさてお次はレバニラ炒め
久しぶりだなぁ
レバニラ炒めだと麦酒が私の中でマストなので生の麦酒を頼んだ
ここの店は麒麟だ

レバニラを口にかき込み二噛み程度で麦酒を流し込む
旨い
たまらんぞ

ココでやっと冷め始めたであろう焼売を酢を2醤油1とからしはちょびっと
味福軒の焼売は他所のよりほんのちょっとばかし大きい
その分なかなか冷めなくうっかりパクッと行くと口の中が大火傷するコトがある
なのでやや多めに冷ましてからひと口でやる
噛むと中から肉汁がジョワァ〜香りが鼻抜けし
その余韻でまた麦酒を流し込む

嗚呼っ街中華にして正解だったよ

因みにテレビは競馬中継
私は競馬をやらないのでサッパリ分からないけど
目の逃げ場としてはテレビはありがたい


スッカリお腹を満たした私は店を後にして
スーパーに寄り道した
家に菓子類が少なかったコトを先程思い出した

ココでも冒険はせずに
柿ピーとポテチ
アイスが食べたくなったので
チョコモナカ

アイスを食べながら
ほんのちょっとの近道
公園を突っ切る
これで20mくらいはショートカットできた
アイスのお陰か少し酔いが覚めた気がする

家に着いて思い出した
アイス買わなくても冷凍庫にあったよ

まぁいいか

冷蔵庫を開け麦酒にするかサワー系にするか悩んだ末に
ウヰスキーでハイボールに変更した

ソファに座り
リモコンでテレビをつけた
時計を見たらもう15時も過ぎていた
チャンネルを変えるも大した番組もやっていない
まぁ消してしまうと味気ないからそのままにした


スッカリ時間は経ったが
飲もうと決めたのは母が原因だった
先にも述べたが
時々襲ってくる不思議な喪失感が降りてきて
そんな時は誰かと居て紛らわすよりも
酒に酔う方が自分としては合っている気がしている

そんな理由だけで朝からまぁ酒を飲んでいるわけだ

でも決して思い出に浸るとかは無い
むしろそれから目を背けたいから酔っ払いたいのだ


話は飛ぶが私は小さい頃から泣き虫で涙もろい
これが酒が入ると更に拍車がかかり
バラエティ番組の再現VTRとかで大根な演技でもちょっとした感動モノだとスグに泣いてしまう

ちょうど今がそれで
子供の頃親に反抗的な態度ばかりしていた娘が結婚式の前日
両親と川の字で寝て涙を流しながら
「ありがとうお父さんお母さん」
ってのを観て今泣いています

60歳も目前に迫った中年から高年に移ろうという男がリビングでひとりで涙ボロボロって
絵にならない
残念だ
男前ならまだしも
そこら辺のゴミと大して変わらない
失敗した福笑みたいな顔の男が酒飲んでテレビみて大泣きなんて
まぁブサイクなコトよ

日が暮れ出してからは記憶が殆どない
映画を観たのは覚えている
誰かと電話で話してたような気もするけど履歴を見ても昨日は誰とも話してない
LINEやその他のメッセンジャーを見たが通話はしていない
気のせいか

一夜明けて今日
二日酔いと言うよりもまだ酔っ払っている感じがする
自分で手を当て息を吹きかけ臭いを嗅いでみた

酒の臭いがプンプンした

まぁそれはそれで仕方がない
そーなると分かっていて飲み続けた訳だから
なので今日は今日とて酒を抜き取るというコトのためだけに使おう

もう昼前
やけに空腹だと思った
作るのも面倒だったので
今日は蕎麦屋を選んだ
サッパリした物を食べたかったからだ
しかも近い

蕎麦屋に到着した
『そば処 砂松』
有名な砂場とは何の縁もゆかりもない
ただの蕎麦屋だ

不味くは無い
飛び上がるほど旨い訳でも無い
程よい

ざるを2枚にするか1枚にして
何か丼物を頼むか

ざる蕎麦1枚と親子丼に決定した

卵丼にすると味気ないし
カツ丼や天ぷら丼だと
二日酔いには重たすぎる

二日酔いの日は程よいのが良い

ココの丼物は味噌汁では無くて
すまし汁が付く
ありがたい
今日みたいなコンディションの日には
すまし汁はかなり良い
生き返る為の薬のような素晴らしい飲み物だ

先にもざる蕎麦をやっつける
私は粋な人間では無いから
そばをつけ出汁の中に全部つける
ジャブジャブしてからズルりと流し込む
私は庶民だからやや下品でも良いのだ

そばを倒した後は親子丼だ
口の中をお冷で清め
親子丼との戦いが始まった
これも昨日の炒飯と同じで
先ずはノーマルで食べる
そして半分になった頃に
一味と山椒を投入
味変

旨い旨い

胃の中が和食という日本人おかえんなさい料理を馳走になり
心も体も優しい気分になったので
そのまま近くの銭湯に向かった

『玉串の湯』
仰々しいな
ヒミコが番台に座っているのか?
いやいや普通のおばさんだった

銭湯も久しぶりだなぁ
ココの銭湯にはビリビリするヤツがある
後でしてみよう

服を脱ぎ脱ぎ
エコな自分に優しい体型を露わにし浴場へと踏み入れた

銭湯って不思議なんよなぁ
絶対に先客がおるのよ
誰も居なかった
という経験をした事が無い

もうエキストラなんじゃないの?
って感じのツルツルにハゲ上がったじいさんが湯船の右奥角に陣取っていた
絵になるねぇ

ココ壁の絵は筆じゃ無くてタイルで絵を描いてある
しかも富士山は分かるのだけど
そのすぐ横に東京タワーって
どんな構図やねん

と思いつつ
石鹸の泡で身を清め
ヒミコが溜めてくれた湯船に静かに踏み入った
私は左奥を陣取らせて頂いた 

ちょうどこのタイミングで
お父さんと小さなお子さん2人がキャッキャしながら登場した

スッカリとは行かないが
二日酔いも治まり
和やかな気持ちになった

ええなぁこんな日曜日も
しかも明日も休み
生きてて良かったよ大会に出たら
そこそこの順位になれそうな気がした

母が死んでくれたから
得るコトができた昨日と今日

私の半分は母で出来ている




ほな!

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