ライブハウス。

10月11日。
大好きなとあるバンドのライブを見に、市内のライブハウスへ。

COVID-19の感染が広まった今年の春先、「ライブハウスが危ない!」と槍玉にあげられてしまった、ぼくの大好きな現場。
いまでこそ回数は減ったけど、20代のひところは毎週のようにどこかのライブハウスに足を運んでいて、それこそ当時は水族館よりライブに行く回数の方がずっと多かったなぁ。

COVID-19の感染経路や予防対策が明らかになるにつれて「そりゃあ確かにオールスタンディングのライブなんてなかなかできないよなぁ」と思うしかなくて。
「コロナなんてただの風邪だ」という意見があるのも知っているけれど、現実に家族に高齢者がいたり、医療や介護など高齢者の方との接触が多い職業の方もいらっしゃるわけで。

今年の春~夏は毎年行っていた音楽フェスがほぼ全て軒並み中止になってしまったし、最近になってちらほらライブイベントが開催されるようになったけど、本当に行っていいのか分からなくて。

今回は「この人たちとこの人たちのファンなら間違いない」と信頼しているバンドのライブで、実際にものすごく細やかなCOVID-19対策を公表してもいたので、ついについにWithコロナ下、初のライブハウス復帰。

あぁ、帰ってきたなぁ。この場所に。

さて。
そんなライブ当日。

いつもオールスタンディングが常のメロコア/オルタナバンドだけれど、今回はCOVID-19対策で完全指定席制。それならば普段は行かないエリアで見てみたいなと、敢えて2階席でチケットを申し込みました。

「密」を避けるために、整理番号ごとの規制入場。
物販も通販限定で、ライブ前に物販ブースに長蛇の列を作る必要もなく。
ギリギリまで近くの駅で待機して、いざライブハウスに入場。
検温、IDチェック、アルコール消毒をして、ドリンクを取って2階席に上がり、自分の席へ。

眼下の1階フロアにはまるで成人式のようにパイプ椅子が並んだアリーナエリア。ディスタンス確保のため1席おきに座席が配置されて、ずっと見慣れた「超密」なライブハウスのフロントエリアとはまったく違う光景。

それでも、張り詰めつつもあたたかいライブハウスの空気、ステージを照らす赤や黄色のスポットライト、自然と胸が躍る開演前のSE。
それらは全く変わらなくて。

あぁ、帰ってきたんだなぁ。うん。

やがて開演時間が来て、バンドメンバーがステージへ。
最初にひとこと。
「2つだけ気をつけてね。
 ① 席から立たない(座って楽しむ)
 ② 大声で話さない、叫ばない、歌わない」
「拍手と笑うのは自由だから!ずっと肩の凝る日々だと思うけど、このライブ中だけはリラックスして楽しんで!」
みたいなことを言ってくれた。

それだけで涙腺が潤んでしまって。

そして間もなく演奏開始。
1曲目、2曲目は目が潤みっぱなしだった。何度か、首から下げたフェスタオルで目頭を押さえてステージが見られなかった。

モッシュも、ダイブも、ハイタッチも、シンガロングもない。
いままでのライブシーンとはぜんぜん違う。

それが受け入れられないという人もたぶんいるのだろう。
だけれど、そういう制限がある中でもどうにかして自分たちの音楽を伝える、ファンの皆を楽しませる。
そういう力強い意志を強烈に感じた。

「ルールを守る」ということ。
誤解を恐れずに言えば、ロックって、元々どちらかといえば「いかにしてルールを壊すか」というカルチャーだと思う。

ライブチケットに「モッシュダイブ禁止」って書いてあっても暴れまくったり。放送禁止用語を平気で連発したり。演る側も見る側も、どうにかして既存の体制をぶっ壊してやろう、みたいなところがあって。

だからこのCOVID-19な状況で、「コロナなんて関係ねーよ」と中指を立てて今まで通りのライブをする、という選択肢だってあったと思う。そういう選択をしているバンドも散見する。

だけどそうではなくて「いまの状況で守らなければいけないルールを守ったうえで、最大限に知恵と工夫をこらして楽しむか」ということだよね。

ファンやその周囲の人を守るために、できるだけの筋を通す。
そんな優しさと決意をものすごく感じた。
そして、ライブ自体もひたすら心から笑い続けられる楽しさで。

生音を浴びながら飲む酒が本当に美味かった。
「いつもみたいに自由にドリンク取りに行けないから」と、ライブの途中におかわりタイムを設けて、客席に野球場みたいにドリンクの売り子さんが来てくれるシステムで、そういう細かい心遣いがニクくて、それでさらに酒が進んでしまって。

改めて、自分もこの制限だらけの状況を最大限楽しんでやろう、そう思えた。
明日からまた、前を向いて歩いて行けそうです。

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