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女神の名は・・・ part.Ⅶ

みなさん、こんにちは。綺羅です。

今日もnoteをご覧いただき、ありがとうございます。


やっとカラッとした晴天に恵まれ、お洗濯物もふわっふわの肌触りと、何とも言えない香りが、私の幸福感を高めてくれます。

夏には災害級の猛暑をもたらした太陽ですが、本来は人々が活動する日中を穏やかに過ごせる様に支えてくれるものだと、認識させられるのです。

太陽の異常気象を進行させるのも、歯止めをかけさせるのも、人類次第であることを、痛く突きつけられているような気がしました。


あの日も、爽やかな快晴でした。

けれども、私の心は、今にも激しい雷雨に打ちひしがれそうでした。

そんな私に、傘を届けてくれたのは、やっぱりあの子の存在です。



こういう状態で、私ははたして、彼女たちと”仲良し”だといえるのだろうか。



空は青々としていて、太陽も照っていた。

周りの友人たちも、楽しそうに笑っていて、それでいて部活にいそしみ、申し分のない状況だ。

けれども私の心は、黒雲が立ち込めていて、いつ雨が降り出してもおかしくない状態だった。

雨が降り出すだけではなく、雷も鳴り出して、場合によっては、落雷だって起こるかもしれない。


それくらいに、私の気持ちは追い詰められていた。

悲しみ、怒り、寂しさ、つらさ・・・。

友人が悪気なく決めたことは、頭では分かっているけれど、心が全然ついていかない。

むしろ、この決定事項に怒り心頭なのがよく伝わってくる。

そう自分で自覚できるくらいに、身体が震えていた。


事の発端は、部活単位でのボランティア活動。

ボランティア特別養護老人ホームの清掃活動だった。

どういういきさつで、そのボランティア活動に参加になったのかは、覚えていない。

だが、私の学年は「全員参加」だったことは、覚えている。


当時私は、自分を入れて5人のグループにいた。

だが、ボランティア活動は2人1組と決められていたため、1人あまりが出て来る。

ちなみに「進んで1人になった」わけではない。

でも、たまたま私が部活に行けなかった時に、友人たちの間で、メンバーが決められてしまったのだ。

「2人1組のメンバーを決めるのに、期限が迫っていたから・・・」と、後で謝ってくれたのだが、それでもモヤモヤした。

私の相手は、部活内の別グループの子で、私たちのグループを”下に見ている子”だった。


知らないうちに決まった上に、相手が自分にとってしんどい相手と組になってしまって、気分は沈んでいくばかりだ。

謝ってきた友人たちには、笑ってやり過ごした。

みんなが気持ちよく過ごせることで、私で役に立てることなのだから、嬉しいと思わないといけないと、思ったから。

でも、涙をこらえきれず、静かにトイレの個室に入ってしばらく泣いた。


なんで私、こんなに悲しいんだろう・・・。



帰宅して門を開けると、彼女は規則正しくこちらに駆けてきた。

『きらちゃん、おかえり!きょうははやいんだね!!』

帰ってくるたびに、私を厳重なチェックにかけるフーちゃん。

スンスンと鼻の音を立てながら、制服にこびりついている匂いを確かめているようだった。

「フーちゃん、ただいま。お昼は晴れてよかったね~。」

私は”いつも通りに”、彼女に声をかけたハズだった。


いつもなら、チェックの後にはすぐに、柴犬特有の距離感”柴距離スキル”を発揮するのに、今日はスキルを使う様子もなく、なぜか私について回る。

『・・・・・・?』

「・・・フーちゃん?今日は”柴距離”しないの?」

『きらちゃん、きょうのきらちゃん、なんかへんだよ。どうしたの?』

学校での私を知るわけないのに、なぜ「変だ」なんて、確証を持って言えるのだろうか。

家ではただ寝て、ただのんびりいるだけのこの子に、一体何が分かるというのだろうと思った。

そんなに「悲しい」表情を、上手く隠せていないのだろうか。

・・・はぁ、困ったなぁ。

「何にも変じゃないよ。いつものことだよ。どうしてそんなこと聞くの?」

『きらちゃん、へんだもん。いつものきらちゃんじゃない。』

そういうフーちゃんは、じっと私を見つめてくる。

いつも知らんぷりして、どこかに行くくせに、どうしてこんな時に限って、私から離れないのか。

あまりにも熱心に見つめられて、スカートのポケットにグシャグシャに詰め込んだ「ボランティア活動表」を、改めて開いてみた。

私の名前だけが、友人たちの名前とは別の枠に書かれている事実が、生々しく突き出される。

『きらちゃん、それはなに?』

・・・フーちゃんに言ったって分からないのに、どうして聞いてくるの。

「・・・・・・。」

『ねぇ、きらちゃん!!』

・・・はやく、柴距離とってくれないかな、イライラしてくる。

『きらちゃん、きいてる?』

「・・・フーちゃんに、何が分かるっていうの?!私、”これでいいよ”だなんて、一言も言ってないのに!!なんで、私が我慢しなきゃいけないの?!なんで勝手に決められないといけないの?!なんで私だけが、独りぼっちなんだよ?!私、”こうなっていい”だなんて、言ってないのにぃぃいい!!」

私は気が付くと、とち狂ったように叫んでいた。

泣きながら、顔を熱くしながら、抑えていた気持ちは、収納不可能なくらいにめちゃくちゃに乱された。

フーちゃんは少しびっくりしながらも、私を見つめている。

「・・・フーちゃんに、なにが分かるの。」

こんなことを言っても仕方がないし、解決にならないのも分かっている。

なのに、感情を抑えることができなくて、何も悪いことをしていないフーちゃんに怒鳴ってしまった。

私は玄関の前で、小さくうずくまったまま、しばらく光を遮断した。

そばでは、フーちゃんが近づいてきて、手を嘗めてくれた温かさが、感じられた。



しばらくして顔を上げると、フーちゃんは10cmほど離れた前の位置で、私に背をむけて伏せていた。

「フーちゃん、怒鳴ってごめんね。怖かったよね・・・。」

おしりをちょんちょんと撫でると、フーちゃんは素知らぬ顔をしていた。

その表情はまるで「見てないから、大丈夫だよ」と言わんばかりの、大人っぷりだったように記憶している。

泣く所は見えていないけれど、私が手を伸ばせばちゃんと触れる距離感を守ってくれていた。

『きらちゃん、すこしげんきになったみたいでよかった。フーちゃんはがっこうでのきらちゃんをしらないけれど、いつもきらちゃんのことをみてるよ。』

後ろを向いた顔は、そのまま私の指を嘗めた。

『きらちゃんがかなしくなったら、フーちゃんにいっていいよ。フーちゃんはなしきいてあげる。』

その表情はどこか得意気のようにも見えた。

なんとなく上から目線の口調なのに、さりげない優しさを受けて、声を出して泣きたいほどに嬉しかった。

「フーちゃん、ありがとうね。なにか、ご褒美あげないとね。なにか食べたい?」

そう聞くと、彼女はいつも通りの自由犬に戻って、こう言った。

『チーズ、ちょうだい!!』


当たり前のように、当然のように「側にいてくれる優しさ」は、この悲しみを「その日」だけで癒してくれた。

この子がいなければ、きっと何日もこじらせていたと思う。

そう思えるくらいに、心に落ち着きが戻るのを早く感じた。


雷雨に晒されていた私に、傘を差し出してくれたのは、人間じゃなかった。

でも、彼女は人間でなくても、その温かさは、雷雨をも退けてしまう。

雷雨を越えるまで、そばで見守ってくれる、心優しき彼女。

私が自らの力で越えると信じて、待っていてくれる。

あなたがいてくれて、私はもっと強くなれそうだよ。

だから、どうか私を見守ってね。

女神の名は・・・



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それでは、今日はここまでです。

みなさん、穏やかな夕方を迎えてください。



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