鉄鍋のジャンの黄蘭青はもっとラスボスの自覚を持って欲しい。
鉄鍋のジャン シリーズが55円セール!ということで、TLではジャントークが盛り上がっているわけですが、以前読み返した所、「ほぼ最強の刺客として登場した黄蘭青って……よく考えるとこいつが1番まともじゃね?」ってことを思ったので記事を書くことにしました。
※本記事には、ジャンのネタバレが含まれます。購入後一読してからの確認をおすすめします。
なお、底本には今回セールの対象となっている。電子書籍版「エムエフコミックス フラッパーシリーズ」を参考にしています。
黄蘭青の初登場
黄蘭青というキャラクターが初登場したのは、本編最後の章である「第二回中華料理人選手権大会」です。
キャラとしては予選から出ていましたが、本格的に名前が出たのは本戦一回戦、豆腐料理の回です。
黄蘭青は百蘭王(パイランワン)なる中華の怪物の後継者であり、この大会で優勝して世界の黄蘭青になる(ついでに日本も支配下におく)ためにやってきており、ストーリーの中では最後に戦う敵役になります。まあラスボスは睦十の爺さんだろうと考えることもできますが、実質上のラスボスみたいなもの。
なんですけれども、よくよくその言動を見ると、割りと真っ当なことしか言っていないので、あまりの外道だらけの本作において「むしろこいつが1番まともなんじゃ……?」と思わせてしまう魅力があります。
例えば、2回戦の餃子勝負では、ライバルに対して的確なアドバイスをし、相手の心を完全に折るというムーブをかますわけですが、そこで出たセリフがこちら
正直な所、クチからでまかせの白々しいセリフにも聞こえますが、割と本心だと思うんですよね。何しろ圧倒的な実力があるわけですから、「どんな料理人も敵とは思っていない」というのも、今までライバルと呼べるような存在がいなかったからこその発言と考えることができます。
黄蘭青は、予言のように、次々とライバルの作る料理を当て、「料理は半歩先」といいつつつ余裕の勝ち逃げムーブをかましてくれます。
なお、ちゃんと手紙を書いて謝る程度の社会性はあるんですよね。ジャン世界では貴重な良心的な存在ですね。いや、ほかがひどすぎるからかもしれませんが。
恐怖の五番町思想
さて三回戦、調味料勝負の所で事件は起こります。この三回戦の前で、ジャンたちは、黄蘭青こそが百蘭王(パイランワン)であるということを掴みます。どうやれば黄蘭青に勝つことができるのか?
すると、睦十の爺が一言
「黄蘭青を倒す方法は一つ……本気を出さないうちに潰すことじゃ!!」黄蘭青は自分が百蘭王(パイランワン)であるということを隠しているので、実力を出し切っていない。そこにつけこんで倒せば良い。と主張します。
爺の方があくどくね???
するっと「潰す」という単語がでてくるあたり、やばすぎです。汚い……さすが五番町一族汚い……。
しかし、ジャンは、本気の黄蘭青と戦いたいがために、いきなり本人にネタバラシ。計画をおじゃんにします。
珍しくジャンが主人公ムーブしてるじゃん。と思いきやキリコは
「黙っていれば有利になったのに、勝手にネタばらししやがって!」と怒るので、キリコもなかなか酷い。これが五番町一族……!まあ、対戦相手の楊は「実力を出し切らない相手に勝っても嬉しくない」とジャンのネタバラシに納得しているので丸く収まるわけですが。
急に仲が良くなる二人
正々堂々勝負しようぜ!という普段のジャンからは想像できない言動を目にして、ジャンを気に入ったのか、黄蘭青、ジャンにわざわざ自分が「ラー油を作る」ことを伝えて本戦とは別に勝負しようと持ちかけます。
なんかめちゃくちゃ爽やかなライバルになっているんですが……!?すっかりジャンのことが気にいったのか、幕間でもこんなやり取りをするような仲に。
「次はおまえの番だ!どんなラー油を作るのか楽しみに見てやるからな」
「フフッまかせてよ!!キミに負けないヤツを作ってみせるから!」
いや、めっちゃ仲良いな。ここだけ漫画のカラーが違うんですけど……?黄蘭青、戦いの末に仲間になったライバルとかじゃなくて、もう最初からジャンのこと気にいってますからね。
なお、黄蘭青、基本的に褒めるところは褒めてくれるので
こんな風にキリコのことも褒めてくれます。人間ができてる。
黄蘭青は大体の料理人の行動は先読みできるんですけど、ジャンやキリコ、それから楊の料理は読むのが難しいという描写がありますので、そういう意味でも彼らは黄蘭青にとっての「最初のライバル」なのかもしれません。
なお、3回戦では、楊を下し、「キミの料理は読めなかった。でも圧倒的な実力で下せば良いよね」みたいなことを言って悔しがらせるので、ちょっと嫌味なライバル感が出してきます。
数少ない悪役ムーブ。(ゆうほど悪役か?)
サメ料理対決!
準決勝はサメ料理対決。大会の前に、ジャンは、黄蘭青の身体に自分と同じような傷が刻まれていることを知ります。
ジャンも黄蘭青も、中華の狂人に虐待されて中華料理マシーンとして育てられたという同じ過去を持っていたんですね。ジャンは「お前だけには絶対に負けない!」って思うんですが、黄蘭青にとってもジャンは同じ境遇を分かち合える人物だなんですよね。そりゃ仲良くなるわ!
二人でサメのプールに飛び込み、サメを蹴り出してのこのコマなんか、完全に苦楽をともにした相棒って感じですからね。
黄蘭青、ラスボスの自覚を持て!!!普通に頼れる相棒だろ!!
ジャン!僕のも見てよ!みたいな黄蘭青、単純に同じ実力のやつがでてきてくれて嬉しいんだと思います。ジャンが自分の想像を越える工夫をしてきたときは、心底嬉しそうに笑いますし、ジャンのことが好きすぎる。
まあ、そんな黄蘭青ですが、準決勝では「しゃぶしゃぶにした結果、お客がきっちり2秒お湯にくぐらせてくれない」という問題が発生し、ここで初めての敗北。
決勝戦で再びジャンとキリコの前に立ちはだかるのです。
いかがでしたでしょうか、ラスボスのくせにやっていることは、普通に真っ当なライバル黄蘭青のことが分かっていただけたでしょうか。
一応、彼も日本制圧!とか言っているので、完全な善人かというとそうではないですけど、料理に麻薬を盛ったり、包丁に酸をかけて破壊したり、腕を折ったりしない黄蘭青は、作中の基準では極めてまっとうな料理人ではないでしょうか。え?他がひどすぎる?事実ですが……。
最後になりますが、「すごく真っ当な野望を持つ男、黄蘭青」のセリフを見てお帰りください。
ラスボスとしての自覚を持て!