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5Gを単なる高速化と侮ることなかれ

2020年はいよいよ第5世代移動通信システム(5G)が本格的に市場に投入されると言われています。日本の携帯事業各社は春には5Gのサービスを本格的に始動すると言われています。

「いよいよ5G」と謳われるようになって耳にタコが出来た頃かと思います。消費者の感覚だと、3Gが4Gになった程度の変化を想像しがちです。しかし、どうやら5Gはそれ以上の衝撃的な変化をもたらしそうです。

ドコモが5G+QRの改札機を開発

5Gによる技術革新の象徴のような記事がありました。ドコモが東芝インフラシステムズと協力して、5Gを利用した自動改札を開発したようです。

今回のシステムはQRコードのリーダ(カメラ)を装備。コードを読み取ると、5Gネットワークを通じてクラウドサーバーに送信し、IDを元に乗車券処理を行ない、その結果を自動改札に戻す。改札本体には、計算や処理の機能は持たず、サーバーからの指示に従い開閉動作を行なうシンプルなものだが、5Gの低遅延特性を活かし、通常の自動改札とほぼ同等の0.2秒で処理が完了する。

衝撃的だったのが、QRコードを利用した認識にも関わらず、0.2秒という処理速度を実現している点です。0.2秒というのは記事中にもありますが、Suicaの基盤となっているFelicaと同等です。そこに加えて、処理自体はインターネット上で行っているというのだから仰天しました。

端末の安価化と、演算のクラウド化、それを繋げる5G

このシステムの素晴らしいのは、端末がほぼ何もしていない点です。端末というのは2つあります。ひとつは改札機であり、もうひとつはQRコードを表示するスマートフォンなどです。QRコードなので紙でも問題ないのでしょう。

引用した記事を読解すると、おそらく改札機で行っているのは「QRコードの読み取り」「WEB上の決済システムへの問い合わせ」「問い合わせ結果の受信」「受信結果に応じて扉の開閉」の4点だけです。

「QRコードの読み取り」は超高速化を実現する上で相応のカメラと画像処理性能が必要かと思います。しかしWEBに問い合わせてその結果を受け取って改札の扉を開くのは、とても簡素なプログラムのはずです。簡素な演算しか必要ないので、改札機は安価なコンピュータを組み込むだけで済みます。

端末を簡素化した一方で、運賃の計算や決済処理という複雑な演算はどこでおこなっているのでしょうか。それはインターネット上にあるクラウドコンピューティング(=すごいコンピュータ)です。クラウドコンピューティングであれば、予算の許す限り、ほぼ無限に演算を平行化できます。きちんと設計して作り込めば何万人と利用しても、一気に処理できてしまいます。

要するに、端末で行う処理を簡素化して単価を下げ、難しい処理はクラウドでパワーをかけて処理してしまうのです。

まとめてしまえば単純な話ではあります。しかし、これを0.2秒で実現するためには大量のデータを高速で伝達させる必要があります。そこで利用されたのが5Gなのですね。

端末が安価になると、予算が回りにくい地方の改札機でも導入しやすくなります。記事によると、このシステムは福井鉄道で実証実験がされたようです。推測するに、おそらくそういった鉄道での利用を想定しているのだと思います。

5Gを単なる高速化と侮ることなかれ

5Gの登場については、消費者視点ではあまり実感を予見できるほどではないと思います。スマートフォンが5Gに対応したところで、今のWEBの使い方だとおそらく通信が高速になった満足感で消費されるでしょう。

今回の例を抽象的に理解すると、「5Gの登場はクラウド化の促進」であり、「端末の安価化」です。もしかしたらスマートフォンやタブレットも、コンピューティングやストレージをクラウド化してしまうことで、端末自体を安価で小型化できてしまうのかもしれません。

5Gを単なる高速化と侮ることなかれ、我々の常識と生活を革新しにきています。

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