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厚生労働省にアジャイル開発は難しかったらしい

日経新聞に『「アジャイル開発」阻む役所の流儀 COCOA失敗招く』という表題の記事を見つけて驚きました。本日は休刊日なのでおそらくWEB版にのみ掲載されることになる記事なのでしょうが、「アジャイル開発」という単語が一般用語の如く使われて記事が構成されています。アジャイル開発はシステム開発の専門的な用語だと思っていただけに時代の流れを感じました。

アジャイル型の開発とは日経新聞の表現を借りれば『短いサイクルで機能変更や改修を繰り返す』開発手法です。かつてアプリケーションといえば光学ディスクなどに焼き付けて販売するのが主流でしたが、現在はオンラインで購入するのが一般的です。加えてオンラインでアップデートをするのも一般的です。それ故にサービス提供者は必ずしも100%の完成品を提供する必要がなくなりました。サービスを提供しながらフィードバックを受けて追加機能開発やサービス改善を繰り返すというのが当然となっています。このサービスのサイクルに合わせて用いられる開発手法がアジャイル型の開発です。アジャイル開発の特徴は「終わり」が無いことです。サービスの価値向上だけを意識して常に改善を繰り返していくので、サービスが継続される限り続きます。

アジャイル型の開発と相対するのがウォーターフォール型の開発です。ウォーターフォールは要件定義、仕様定義、設計、開発、テストという開発工程を線形に進める開発手法です。システム開発の手順としては割と一般的であり、多くのシステム開発者はこの方法を実践しています。改善を繰り返すアジャイル型とは異なり、システム開発に「終わり」があるのが特徴です。リリース日が決まっているなど、納期がある場合には未だ主流の作業工程として使われているのではないかと思います。最初はウォーターフォール型で大規模かつ大雑把に開発して、保守フェーズはアジャイル型で改善をしていく流れが最も効果的なのではないかというのが自説です。

日経新聞の記事を読んだ感想として、システムを受注するにおいてアジャイル型の開発は適切ではないと改めて思いました。COCOAがなぜ失敗しているのかを解説する幾つかの記事を読んで察した欠陥がひとつあります。それは「フィードバック」が適切になされてなかった疑いです。本来、その役割は厚生労働省が担うことになっていたのでしょう。しかし、その厚生労働省の担当者がシステム開発を理解していなかったのではないかと推測します。それ故にアジャイル型の開発を機能させる「サイクル」が回らなかったのではないでしょうか。

アジャイル開発は受け身の体勢では機能しません。自ら現状のシステムの課題を発見しなければならず、そこにはある程度の責任感とアジャイル型の開発をする上での専門の知見や技術が必要です。そもそも受発注関係の契約体系でアジャイル開発をしようなんてのは無理なのではないかと私は思います。

改善策を提案するとすれば、厚生労働省ないしデジタル庁がシステムエンジニアやデザイナーなどの開発部隊を自組織内に持つことです。とりあえずIT人材の募集は行っているそうなので、期待はしておこうと思います。


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