2019年経営 講義ノート

第10回最後の方、第11回に抜けあり

0目次
1科学的管理法と管理課程論 (経営学の起り。古典的な科学的管理法)
 1.1テイラーの科学的管理法
1.1.1テイラーと『科学的管理法』
 1.2ファヨールの管理課程論
 1.2.1ファヨールと『産業ならびに一般の管理』
2戦略と組織〜組織は戦略に従う〜 (経営戦略を考える中でまず組織の問題に直面)
 2.1職能制組織と事業部制組織
  2.1.1職能制組織
  2.1.2事業部制組織
 2.2組織は戦略に従う by A.D.チャンドラー
  2.2.1職能制組織と事業部制組織の選択
 2.3企業戦略の不全症
  2.3.1事業戦略と企業戦略
  2.3.2日本の主要産業に何が起きているのか?
  2.3.3企業戦略とは何たるべきか
  2.3.4日本企業の何がまずいのか
 2.4松下電器(現パナソニック)の中村改革
  2.4.1松下電器の事業部制の歩み
  2.4.2事業部制の見直し
3組織の定義 (組織の問題に取り組む上でまずは「組織とはなにか」を正確に捉える動き)
 3.1バーナードの『経営者の役割』
  3.1.1組織の本質とは何か
  3.1.2構成理念としての公式組織
 3.2公式組織の成立と存続条件
  3.2.1公式組織の成立と存続条件に向けて
  3.2.2成立条件
  3.2.3存続条件
 3.3企業の境界を超える組織
  3.3.1組織発生論から開かれた組織論へ
  3.3.2組織の参加者と組織均衡論
3.3.3超企業・組織論の観点と現代的意義
4組織の意思決定 (「意思決定」をベースに組織はなぜ必要なのかを考察)
 4.1サイモンの『経営行動』
  4.1.1バーナードの『経営者の役割』
  4.1.2限定された合理性
  4.1.3意思決定の委任
  4.1.4組織ルーティン
  4.1.5組織ルーティンの学習の難しさ
  4.1.6一体化と権威
 4.2マーチらのゴミ箱モデル
  4.2.1組織化された無政府状態
  4.2.2組織選択の”ゴミ箱モデル”
5職務満足とモティベーション (テイラー的管理の見直し)
 5.1人間関係論と人間資源アプローチ
  5.1.1モティベーション理論(内容理論)の歴史
  5.1.2職務満足と職務遂行
  5.1.3人間資源アプローチ
  5.1.4マクレガーのx理論とy理論
 5.2外発的動機付けと内発的動機付け
5.2.1ヴルームの期待モデル
  5.2.2内発的動機付け
  5.2.3内発的動機付けとチャレンジ
 5.3未来傾斜原理と職務満足
6リーダーシップ(ここから話題転換。6-7章でリーダー、管理者の行動論を見る)
 6.1初期ミシガン研究
  6.1.1リーダーシップの普遍理論
  6.1.2初期ミシガン研究の発見事実
 6.2リッカートの3原則とシステム4
  6.2.1リッカートの三原則(=リーダーシップ・スタイル)
 6.3リーダー行動の次元構成
  6.3.1オハイオ研究のアプローチ
  6.3.2構造づくりと配慮
  6.3.3有効なリーダーシップ・スタイル
 6.4フィードラーのコンティンジェンシー理論
7管理者行動論
 7.1管理者行動論における研究方法と主要な発見事実
  7.1.1カールソンの『重役行動』
  7.1.2管理者行動論の手法
 7.2管理者の日常行動に見られる特徴
  7.2.1思考する時間がないほど断片化された活動パターンの是非(ステュアートvsミンツバーグ)
  7.2.2受動的に相手に合わせるような活動パターンの是非
  7.2.3ユニット外部への働きかけ
 7.3アジェンダ設定とネットワーク
  7.3.1アジェンダとは
  7.3.2ネットワークとは
  7.3.3アジェンダとネットワークに基づく日常行動
 7.4イノベーションを起こす管理者行動
  7.4.1創発戦略を支えるミドルマネジャー
7.4.2社内企業者としてのミドルマネジャー像
8組織風土 (モティベーション研究の延長線上。クリエイティビティを育む組織風土とは)
 8.1組織風土研究の起源
  8.1.1 Litwin & Stringer
 8.2クリエイティビティを育む組織風土⑴
  8.2.1シュンペーターの定義
8.2.2ドラッカーの定義
8.2.3マイヤーズとマーキスの定義
 8.3クリエイティビティを育む組織風土⑵
  8.3.1 クリエイティビティを育む組織風土を測る尺度
 8.4クリエイティビティを育む組織風土⑶
  8.4.1分析フレームワーク
8.4.2クリエイティビティを発揮しやすいパーソナリティ
  8.4.3組織風土
  8.4.4成果
  8.4.5分析結果
9組織文化(アメリカと日本で「組織文化」に関する問題が顕在化)
 9.1企業文化の”再”発見
  9.1.1『セオリーZ-日本に学び、日本を超える』
  9.1.2『エクセレント・カンパニー』
  9.1.3『シンボリック・マネジャー』
  9.1.4組織文化の”再”発見の意味
 9.2組織文化の定義
  9.2.1Scheinの『組織文化とリーダーシップ』
 9.3組織活性化とぬるま湯
  9.3.1体感温度仮説
  9.3.2組織のコーナリング
10組織学習(組織の成長のために必要な「学習」についての理論)
 10.1シングル・ループ学習とダブル・ループ学習
 10.2実用理論と標榜理論
 10.3組織学習と組織内地図

1科学的管理法と管理過程論
1.1テイラーの科学的管理法(経営学の始まり@アメリカ)
20c初頭の生産現場…熟練者の経営や勘に基づく。作業の速度は労働者に任されていたので、1日の作業量  
          を管理者がコントロールすることは困難。(作業量を指示しようとしても労働者が従 
          わない。労資対立)
          単純な出来高給制度を取っていたため、支払い賃金が増加した。結果、経営者が賃
          率の切り下げを頻繁に実施した。
          組織的怠業の発生。

1.1.1テイラーと『科学的管理法』
・課業管理(タスク管理。IEの手法として現在も活用されている。)
 公正な量の仕事を各作業者に割り当てるべき
 →最も優秀な作業者の仕事を解析(時間研究、動作研究)
 →得られた仕事のやり方をもとに「課業(タスク)」を導出し、各作業者に割り当てる。

(補)レンガ積みの検証 byフランク・B・ギルブレイス
   レンガ積みに動作研究を応用し、無駄な作業を排除した。
(補)サーブリック分析 byギルブレイス夫妻
   作業の基本動作を3分類して付加価値の生まない無駄な動作を減少、排除することで効率強化を図
   った。

・差別的出来高制度(現在は否定的。人はお金の為にどれだけ動くか?→モチベーション理論で詳しく)
 組織的怠業の解決のため、金銭的インセンティブを設置。客観的な分析に基づいた課業を割り当てることで、労働者は指示通りにきちんと働けば高い賃金が得られるように、経営者は見込み違いで生産性が上がりすぎて支払い賃金が想定外に上昇し、賃率のカットを余儀無くされる、という事態を回避できるようになった。

・ファンクショナル組織(現在は否定的。指揮命令系統が混乱する。組織デザインで詳しく。)
 科学的管理が実施されると組織の問題にフォーカスが当てられるようになり、職長の負担が膨大になった。そこで、職長の機能を執行機能(現場の監督)と計画機能(科学的管理に基づいて組織パフォーマンスを向上させる)に分け、それぞれの機能をさらに4分割して職長を配置した。

(補)「科学的」とは
   テイラーは、職場の実態を「科学的」に解明することで現場に丸投げの経営者と経験と勘に頼る現
  場の親方の断絶をなくし、経営者と現場が一体となって生産性を向上させることを目指した。(マネジ
  メントの重要性の指摘)また、物理学、化学などの「科学的知見」を積極的に取り入れる上で、一定の
  知的レベルと時間を確保するため、職能別職長組織(ファンクショナル組織)を提案した。科学的管
  理の論理は、組織の問題へと帰着したのである。

1.2ファヨールの管理過程論(経営学の始まり@ヨーロッパ)
 テイラーの科学的管理法が生産現場の管理に主眼を置いたのに対し、ファヨールは『産業ならびに一般の管理』において業務全体の管理の重要性を説いた。(産業革命が背景)

1.2.1ファヨールと『産業ならびに一般の管理』
・企業の本質的な6つの職能
 (ⅰ)技術的職能(ⅱ)商業的職能(ⅲ)財務的職能(ⅳ)保全的職能(ⅴ)会計的職能
 (ⅵ)管理的職能…予測、組織、命令、調整、統制

・経営と管理の違い
 経営とは、本質的6職能の進行をすることである。一方管理とは、6職能のうちの1つであるが、他の職能が具体的な事物(財産や原材料、製造機械など)に働きかけるのに対し、管理職能は人および人からなる組織に働きかけるものである点で、他職能とは別格の地位を持つ。
 (経営者の役割はもっぱら管理的?)

・管理の一般的原理(詳しく覚える必要はない。ふーん、くらいで)
 分業、権威と責任、規律、命令の一元性、指揮の統一、個人的利益の一般的利益への従属、従業員の公正な報酬、集権化(←集権化しろ!ということではないので注意)、階層、秩序、公平、従業員の安定、創意力、従業員の団結
→厳密で絶対の原理、というわけではない。管理の問題には厳密ということもなければ絶対的ということも存在しない。原理の使い方を知ることが大切。(エビデンスに基づくテイラーとは違う世界観を持つ経営学の位置付け=経営学を学ぶ姿勢として、持論(≠科学的?)は重要!)

・管理の一般的原理が提唱された背景

・ファヨールの管理過程論のその後
 アメリカで、ファヨールの理論を受け継ぐ形で管理過程論が興隆した。その中で、Plan, Do, Seeサイクル、PDCAサイクル(byエドワード・デミング)が提唱された。これは現在でも生産現場の改善活動の基本であり、大いに活用されている。また、ファヨールが提唱した管理の一般的原理は多様な条件に対して応用され、多面的な経営課題に取り組む多様なアプローチが提唱されるようになった。アメリカのこの現状を「マネジメント・ジャングル」という。

2戦略と組織(「組織は戦略に従う」)
2.1職能制組織と事業部制組織
2.1.1職能制組織
 職能分野に分けて組織を編成する。単品、単一の事業分野にとどまり、垂直統合を行う際に採用する。

・メリット(メリット、デメリットは参考程度で)
 職能ごとの専門知識が蓄積される。
 社長のリーダーシップのもと、職能間の調整が集権的に速やかに。
 それぞれの製品を全社レベルで諸活動が集約されやすい。
・条件(デメリット?)
 社長やスタッフが現場感覚を持っていること。異なる製品の取り扱い規模が大きくなると難しくなってくる。
 各職能分野でAとBを扱うことに無理がない。

2.1.2事業部制組織(現実は完全な自己完結にせず、一部事業制が多い。)
 製品ごとに事業部が分かれる。分権化(製品Aに関してはAの事業部長が全権、場合によっては1つの企業のようになる)がなされている。多角化戦略をとり異質な製品市場分野に進出する場合に採用。

・メリット
 製品ごとの営業・販売・開発がしやすい。
 収益性が各事業部長を評価する共通の尺度となる。
 経営者の育成機会が増える。
・デメリット
 複数の事業にまたがる技術、販売の問題が処理できない。
 どの事業部にも属さない新規技術の探索、事業部への移管に難がある。

2.2『組織は戦略に従う』 by A.D.チャンドラー
2.2.1 職能制組織と事業部制組織の選択
・case1 デュポン社(組織づくりはなぜ重要か)
 WW1で垂直統合が行われたことで多角化案が立ちきえになったが、戦後多角化に再度乗り出す。
→開発部に余剰設備利用課を設置したが、販売面に注意を向けていなかった(セールス部門と開発部門の対立)こともあり、多角化部門は不振。結果、競合他社が戦後不況から立ち直る中、大幅な損失を吐いた。
→これを組織の問題として認識した。(普通マーケティングの問題にしたり、他部門のせいにしがちなのだが、自身内部に目を向けたのがすごい)
→職能制組織から事業部制組織への変革(世界初)

・case2 フォードとGM
 <フォード>by ヘンリー・フォード
 T型フォードの開発。徹底した規模の経済性を追求し、リバールージュ工場を建設したが、数年後需要は急降下し、最低効率規模が未達成の状態となった。
 フォードは黒色のみのT型フォードにおけるマーケティングの限界を理解できず、販売戦略で出遅れたことでGMにマーケットシェアで抜かれた。

 <GM>by W.C.デュラント
 持株会社General Mortersを設立したデュラントはビジネス創造に長けていたが、管理が苦手で、買収の経済性を高める組織に関心を向けなかった。組織が忘れ去られ戦略ばかりが優先された結果、最終的に戦後不況によってデュラントは退陣し、P.デュポン新社長を中心に本格的な組織づくりが始まった。子会社の社長をしていたスローンらの経営陣が組織改革を進め、フルライン製品戦略に従い、高級車事業部〜低級車事業部の事業部制組織を構築してマーケティングを進めた。(「どんな財布や目的にも応じた車を」)
(⇔黒色T型フォードに拘泥したフォード)

 まとめ
 「組織は戦略に従う」とは、「組織づくりのプロセスは成長戦略の後になるため、成長タイプの違いで組織の形も違ってくる」ということ。

2.3企業戦略の不全症
2.3.1事業戦略と企業戦略
事業戦略…個々のプロダクトが基本。変数や対象が具体的でわかりやすい。
企業戦略…テーマは明快だが、変数が何かわかりづらい(抽象度が高い。)
→長期収益の最大化という点は一緒でも、手段と動かす変数、追求するテーマに違いがある。

2.3.2 日本の主要産業に何が起きているのか?
 日本経済は自動車と電機が牽引してきたが、近年深刻な状況に陥っている。
→原因は「規模の不経済性」

規模の経済性、不経済性…限界生産性が逓増、逓減するのに対し支出は直線的に増加することで生じる。

2.3.3 企業戦略とは何たるべきか
2.3.4 日本企業の何がまずいのか

2.4松下電器(現パナソニック)の中村改革
 事業部制組織から職能制組織への逆戻し改革。チャンドラーの言い方だと事業部制が素晴らしいように聞こえるが、場合によっては一部職能制に戻した方がうまくいくこともある、という例。どちらがいいのか、というのは一概には言えない。それぞれのメリット、デメリットの顕在化に応じて振り子のようにマネジメントすることが必要。(パナソニックはその後また事業部制に戻った。)

2.4.1 松下電器の事業部制の歩み(ここは改革じゃないよ)
 日本初の事業部制。デュポンやGMよりちょっとだけ遅い。「事業ごとの自主責任経営」(松下幸之助)を打ち出し、事業部は終始責任を持った一個の企業体として事業部長のもとで単一製品を開発・製造・販売したが、事業部が増加するにつれて事業重複が問題となった。

・事業重複のメリット
 内部競争。事業が重複しながらお互いに切磋琢磨する。

・デメリット
 開発リソースの散漫な投入(ライバル事業部との協調に消極的。商品技術、調達価格情報は極秘扱い。)
 規模の経済性の問題(大量生産による製造設備の固定負担の希釈化によって単位コストが低減する)
 取引先との交渉力(事業部ごとに取引先との交渉窓口が分散)
→グループ内のアーキテクチャが不統一なのが致命的。1996年、デジタルカメラ業界に松下傘下の3社が参入したが、連携が皆無だったため、急速な高機能化の波に乗り遅れ、撤退した。

2.4.2事業部制の見直し
・新ドメイン体制
 従来の事業部よりも大きいくくりでドメインを作る。

・家電営業改革
 職能別に。各事業部の中に関連する職能部門を作った。
 新しい部署として、マーケティング本部を設立。(それぞれの事業部から事業横断的に営業機能を担う。マーケティング本部から生産部門側に口出しができるように)

3 組織の定義
 テイラー、ファヨール、チャンドラーのデュポンやGMの例は、経営を考える中で組織の問題に到達し、組織の問題にアプローチするために「組織とは何か」を問う必要が明らかになった。(見直し)
・組織の定義…バーナード『経営者の役割』
・組織の発生論と機能論…サイモン『経営行動』→第4回

3.1 バーナードの『経営者の役割』
 組織の共通点は何か。協働(組織だった活動。うまくいっている組織で起きている)の共通点は?

3.1.1組織の本質とは何か
 組織の形は多様なので、ひとまずうまくいっている組織に共通しているもの(協働)に着目。
 
3.1.2 構成概念としての「公式組織」
 協働システム(≠組織)…協働の行われている全体的な情況のこと。「少なくとも1つの明確な目的のために、2人以上の人々が協働する」(協働の起きている情況)
 公式組織…2人以上の参加者の意識的に調整された活動や諸力のシステム(協働を引き起こす何か)
 
3.2 公式組織の成立と存続条件 byバーナード
3.2.1 公式組織の成立と存続条件に向けて
 バーナードは、”仮に存在しているとするならば”、次のようなものだろうと考えたものが成立の条件と存続の条件。
・成立…共通目的、貢献意欲、コミュニケーション
・存続…能率、有効性
→このように、ある現象が目の前にある場合、発生論(その現象はなぜ生じたのか?という問いの立て方。=成立する条件は何か?)と存続論(その現象はなぜ存続しているのか?という問いの立て方。=存続する条件は何か?)の2つの説明がある。

3.2.2 成立条件
・共通目的
 組織の目的と個人の目的は違う。組織の目的は「岩を退けること」でも、個々の動機は異なる。したがって、組織の目的が個人に受容される必要があり、同時に各人の共通目的に対する理解に齟齬があってはならない。
・貢献意欲
 組織の共通目的を受け入れて、それに貢献しようとする意志のこと。
・コミュニケーション
 共通目的があっても、参加者が知らないと意味がない。また、貢献意欲があってもバラバラでは意味がない。
→3つの条件が揃っていること自体稀なケース

3.2.3 存続条件
・組織の有効性(組織人格に配慮)(組織と環境の均衡)
 目的を達成できなければ、組織は崩壊する。逆に目的を達成してしまうとまた組織は終了する。
→新しい目的の創出、より一般的な目的(経営戦略、経営理念)の提示が必要
・組織の能率(個人人格に配慮)(組織と個人の均衡)
 組織の目的の達成に必要な各参加者の貢献を確保し、維持する能力。各人の個人的な動機を満たし続けなければ各人は組織から離れ、組織は存続できなくなってしまう。

<個人の二面性(個人人格と組織人格>プラスアルファのお話
 個人は「個人化」の側面と、「社会化」の側面があり、この二面のバランスを取る必要がある。
 「個人化」と「社会化」の2つの側面をしっかりと認識しないと協働はできない。

3.3企業の境界を超える組織(あんま重要じゃない)
3.3.1 組織発生論から開かれた組織理論へ
・組織の発生論は、組織はまだ存在していない状態からの組織の成立条件を考察する。誰が組織のメンバーなのかは事前にはわからない。
・組織のメンバーは従業員である、と思われがちであるが、開かれた組織理論では、バーナードの言う組織メンバーには顧客、投資家、サプライヤーも含まれる。

3.3.2組織の参加者と組織均衡論
 バーナードの公式組織の定義では、参加者は特定されておらず、公式組織の3要件を満たしているものは皆組織の参加者とする。企業組織の利害関係者、ステークホルダーも組織の一員とみなせる。

3.3.3超企業・組織論の視点と現代的意義

 まとめ
 組織とは、モノ、カネ、ヒトではなく、それらを協働システムとして機能させる目に見えない「何か」である。組織の参加者は、組織から誘因を受けるため参加し、その見返りに貢献を行う存在で、経営者の役割は、公式組織を成立させ、維持させることである。

4 組織の意思決定(バーナード→サイモン→マーチの流れに注目)
4.1 サイモンの『経営行動』
4.1.1バーナードの『経営者の役割』
<意思決定とは?>バーナードをベースにしながらサイモンとマーチが洗練した
与えられた目的に対して最大限の成果をいかにして得るのかを考えること。(公式組織の重要な要素の1つは共通目的である。共通目的を達成することは、有効性の観点から重要である。)

<合理的な意思決定の条件>
・全ての代替案が分かっていること
・各代替案の結果が与えられていること
・代替案の結果を最も好ましいものから最も好ましくないものまで矛盾なく順序づけること
・結果の評価に基づいてもっとも好ましい代替案を選択すること
→非現実的

4.1.2 ”限定された”合理性
・選択に際して可能なすべての代替案のうち、ほんの2、3の代替案しか考慮しない
・各代替案によって引き起こされる諸結果についての知識は不完全で部分的なものにしか過ぎない。
・起こりうる結果に対する価値づけ、もしくは効用序列は不完全である。
→しかし、人間は意思決定できないわけではない。限定された合理性の範囲でなんとか意思決定をして生活している。

<限定された”合理性”の意思決定>
・状況定義
 複雑な現実世界をそのまま扱うのではなく、単純化したモデルを通して見る。="準拠枠組”をもとに現実を理解しようとする。=”色眼鏡”をかけて現実を理解しようとする
・満足化原理(最適化原理と似て非なるもの)
 逐次的に代替案を取り上げて、ある一定の水準を満たすものがあれば、それを選択する。「1000円以下のランチが食べられれば満足」という基準を設定して、大学の近場から順番に探索し、この要件を満たす最初の店に決めてしまう。
・行動プログラム(ルーティン)
 ある刺激に対して固定的な反応を形成し、意思決定を単純化することで、探索・評価のプロセスを省略する。
・意思決定の連鎖
 意思決定を連鎖させながら、限界のある人間の能力に見合った大きさにまで意思決定の問題を分解。(初めから膨大な選択肢を考えるのではなく、何回かの段階を踏んで選択を行う)
 意思決定の最後の瞬間よりも膨大な数のお店から2、3店舗に絞るプロセスが重要。問題の絞り込みのプロセスがうまく設計できれば、意思決定に限界のある人間でも合理性が持てる。

4.1.3 意思決定の”委任”
 1つ1つの意思決定を他人に委任するとさらに労力節約ができる。(タスク割当・コミュニケーション)この意思決定の連鎖プロセスの組み立てが組織マネジメントの肝である。

4.1.4 組織ルーティン
 意思決定の委任を的確に行うために、タスク割当とコミュニケーションをマニュアル化すること。
ex)無印良品
<マニュアルの効果>
・知恵を共有する
・「標準無くして改善なし」
・「上司の背中だけ見て育つ」文化との決別
・チーム全員の顔の向きを揃える
・「仕事の本質」を見直せる

<マニュアルづくりのプロセス>
 現場の問題は現場の人間が一番知っているので、マニュアル(「顧客視点」と「改善提案」を柱とする)はそれを使う人が作るべきである。
 マニュアルは行動を制限するものではなく、全社員が問題点を見つけて改善していくことが目的である。マニュアル作りのプロセスが重要。
 マニュアル作りでは、ミドルの役割が重要となる。本部だけでやると役に立たないマニュアルが、現場だけでやると費用対効果が悪いマニュアルができてしまう。

<マニュアルと理念の徹底>
 「どのように行動するか」だけしか書かれていないマニュアルがよくあるが、「何を実現するか」と言う仕事の軸をブレさせないためには、作業の意味・目的を書く必要がある。これによって会社の理念の徹底にもつながる。

<マニュアルと人材育成>
 マニュアルでは徹底した具体化が重要となるが、この際、赤の他人にも分かるように専門用語は使ってはならない。
 また、人材育成のためにも、誰が指導しても同じことを教えられるよう、「どう教えるか」明文化する必要がある。指導マニュアル。

<マニュアルは使うものではなく作るもの>
 現場の声・顧客の声→マニュアル化→運用→フィードバック→改善→運用・成果→現場の声・顧客の声…
 このように、マニュアルは最低でも月に一回は見直しを行い、常にアップデートし続けなければならない。

4.1.5 組織ルーティンの学習と難しさ(出ない)
・計画のグレシャムの法則…組織ルーティンを維持すること、回すことに気を取られ、ルーティン自体を変えていくことがおざなりになってしまう。(by マーチとサイモン)
・有能さの罠…新しいルーティンに基づいて仕事をすると一時的にパフォーマンスが落ちてしまうため、短期的にパフォーマンスの出る(経験の蓄積の効果)古いルーティンで仕事をする。結果、筋の悪いやり方に固執し、長期的にパフォーマンスがでない。(by レビットとマーチ)
・探索と活用…旧来のルーティンを活用しながらも新規のルーティンを探索するというバランスが重要。(by マーチ)


4.1.6 一体化と権威
・一体化…メンバーが組織と目的、価値を共有している状態(うちの会社としては〜考えている、という人は個人が組織と一体化していると言える。)
・権威(無関心度)…組織からの命令に対して、内容を反問せず受け入れる程度。

 まとめ
 バーナードの合理的な意思決定の理論に対して、サイモンは限定された合理性を唱え反論した。組織づくりは、限定された合理性から真の合理性に近づく上で意義がある。

4.2 マーチらのゴミ箱モデル
 サイモンによる上からのブレイクダウンによる意思決定ではなく、現場では偶然に左右されやすい。
ex) Post it (付箋)
 偶然現場で粘着物質が見つかり、製品化のために様々な意思決定の場に参加する、という一般的な「問題→解」という意思決定のプロセスとは逆のモデル。

4.2.1 組織化された無政府状態
 理論上は、意思決定プロセスにおいては目標、戦略、プレイヤーが明示されて初めて意思決定問題が設定されて解くことができるが、現実にこれらが揃うことはない。

4.2.2 組織選択の”ゴミ箱モデル”とは?
 カオスに近い状況が企業のおかれた状況だとすると、組織はどう意思決定するか
・ゴミ箱モデルから見た組織の意思決定
 選択機会…会議のような場。取り上げるべき議題を探している。
 問題…表明されるべき馬を求めてさまよっている。
 解…解くべき問題を求めてさまよっている。
 意思決定者…仕事を求めてさまよっている。

<ゴミ箱モデル=混沌とした組織プロセスの枠組み>
 通常の理論では、「問題→選択機会→解→意思決定」という形で問題解決に向かって流れるが、ゴミ箱モデルにおいてはこれらがランダムなタイミングで繋がり意思決定がなされる。

<問題解決型の意思決定>
 Post-itのケース。問題と解決案が偶然選択機会に投げ込まれる。

<見過ごし型の意思決定>
 必ずしも問題解決しない意思決定もある。(やり過ごし型も)問題はないが、解決策は入れられ、意思決定を行う。(問題を見過ごして先に意思決定を行う)
 研究発表をしたら重大な問題を見過ごしていた、など。
 ただし、必ずしも悪い意味ではない。

<やり過ごし型の意思決定>
 指示が出されてもやり過ごしているうちにたち消えになる。
 良い意味、悪い意味でのやり過ごしがある。

 まとめ
 組織の意思決定の現実とは、組織化された無政府状態である。
 現実の組織の意思決定を捉えるモデルには、ゴミ箱モデルがある。ゴミ箱モデルから、問題は必ずしも解かれず、見過ごし、やり過ごしによる決定もある、ということが見えてくる。

5職務満足とモティベーション
5.1人間関係論と人間資源アプローチ
5.1.1 モティベーション研究(内容理論)の歴史
・テイラーの科学的管理法
 生産現場のタスク分析をして、適切な量の仕事を割り当ててそれを達成できたら高い賃金を与える。
・人間関係論
 職務満足と生産現場・職場の物理的設定・組織制度などとの関連を調査したもののうまくいかなかった。実際は、職場の人間関係が大きな影響を及ぼしていた。
・人間資源アプローチ
 人間は成長や自己実現を目指す、無限の可能性を秘めた存在である。

<ホーソン実験>
 テイラー的な科学的管理法(生産性は物理的な作業条件によって決まる、とする)が浸透していたアメリカで行われた、生産性を高める作業環境や条件を探る大規模な実験。科学的管理法で言われるような綺麗な結果が得られず、人間関係論につながる結論が得られた。

・照明実験
 照明の明るさが従業員の作業効率にどのような影響を及ぼすのか調査したが、明るさによらず生産性は一貫して上昇した。
・継電器組み立て作業実験
 6名の熟練女性工員を様々な作業条件(休憩の回数・時間・タイミング、就業時間・日数、軽食の提供など)のもとで作業させたが、どの作業条件でも生産性は一貫して上昇した。

→作業環境や条件と、職務満足・生産性の間に関係がなさそうであった(科学的管理法からすると不自然)。原因を探るためにインタビュー調査を行ったところ、物理的環境や作業条件よりも、職場の人間関係や各人のキャリアを基にした従業員の感情や態度などが職務満足や生産性の向上に大きな影響を与えていることがわかった(対象者が実験において非常にリスペクトされた待遇を受けていたことが生産性を向上させた)。ホーソン実験は、作業者の心理的・情緒的要素、特にインフォーマルな組織や社会的承認が生産性を決めることを明らかにした。
 
 ホーソン実験が「職務満足→職務遂行(生産性・欠勤率)」の関係性を指摘したことは、ワークモティベーション研究の確立につながった。また人間関係論に基づく施策が導入されるようになり、従業員の欲求の満足化による生産性拡大運動が始まった。しかしこれはすぐに廃れ、人間資源アプローチに取って代わられた。
 
5.1.2職務満足と職務遂行
・ヴルームによるレビュー
 生産性の高い部門と低い部門で賃金・ステータス・会社に対する満足度に違いはなかった。職務満足がそのまま生産性の向上に結びつく、というような単純な話ではなく(ここが人間関係論が廃れた理由)、職務遂行を動機付ける要因について明らかにする必要が出てきた。(生産性を向上させる直接的な要因については現在でも議論が続いている)

<ハーズバーグの二要因論>
・動機付け要因
 職務満足をもたらす要因(職務そのものと関係)。仕事において自らの先天的潜在能力に応じて、現実の制限内で、創造的でユニークな個人として自分の資質を十分に発揮したいという自己実現の個人的欲求を満たすからこそ満足要因になる。
・衛生要因
 職務不満足をもたらす要因(職務を行う際の環境や条件と関係)
→職務満足と不満足の要因は異なっている。当時の研究は衛生要因(職務不満足のなさ)を測定していただけであり、生産性を上げる、というところまでは持っていけていなかった。

5.1.3人間資源アプローチ
・マズローの欲求段階説
 人間には生理的欲求、安全に対する欲求、社会的欲求、自我の欲求、自己実現欲求の5つの欲求がある。5つの欲求は階層的であり、低次の欲求が満たされると高次の欲求が現れ、すでに満たされた欲求は支配的でなくなる。
・人間資源アプローチ
 人間のモティベーションを喚起するには、生存の欲求(科学的管理法で言われるような課業設定と出来高給による経済人を前提とした管理方法)はもちろん、社会的欲求だけでは不十分で、人々の成長の欲求に着目し、この欲求を満足させることを考えなければならない。

5.1.4マクレガーのx理論とy理論
・x理論
 人間は、生来怠け者である。働くことを好まず、責任を回避したがるので、組織メンバーや組織目標の達成に努力させるためには命令・統制が必要である。伝統的な命令と統制、つまり「飴と鞭」で従業員にやる気を起こさせようとする管理は、x理論に基づく。
 y理論→これに沿っていくのが今後の経営者にとって重要
 人間は自分が積極的に定めた、自己実現を求めるための目標のためには進んで努力する。人間は自ら責任を負うことを好む。経営者は、y理論の原則に従い、個人の目標と組織の目標を統合すること、すなわち組織メンバーが組織目的の達成に努力することによってメンバー自身の満足も得られるような条件を作り出す必要がある。具体的には、各自に目標設定させることによる自主統制と能力開発、職務拡大、三角的経営(意思決定に関与させる)がある。

5.2外発的動機付けと内発的動機付け
5.2.1ヴルームの期待モデル
 外発的動機付けのモデル。それまでにあった研究をまとめて提示したもの。スライド見た方がわかりやすい。


0.8*(100*0.8+50*0.2)+0.2*(100*0.2+50*0.8)=84

0.2*(100*0.8+50*0.2)+0.8*(100*0.2+50*0.8)=66

0.8*(100*0.2+50*0.8)+0.2(100*0.2+50*0.8)=60
<ヴルームの期待モデルからわかること>
 人は、「報酬が個人にとって魅力的である」、「成果が外的報酬に結びつく確率が高い」、「行為が成果につながる確率が高い」場合に強く動機付けられる。

5.2.2内発的動機付け
 外発的動機付けと対比される理論。報酬が人間の動機付けの全てを決定するわけではない。
<パズル実験>
 Aさんには解いたパズルに応じた報酬を与え、Bさんには無報酬でパズルを解かせたところ、本当は面白いはずのパズルであってもAさんは休憩時間にパズルを解く時間が減少した。

・内発的動機付け 
 見た目には何の報酬もないのにその人がその行為そのものから喜びや満足を引き出し、その行為に従事している状態のこと。人間には有能感と自己決定感を感じたいという欲求がある。

5.2.3内発的動機付けとチャレンジ(キーワード「チャレンジ」)
 内発的動機付けを考えると、個人はチャレンジする機会を追求、チャレンジの征服を追求、チャレンジを効果的に処理することで有能感・自己決定感を得て、職務満足・モティベーションに繋がると考えられる。

<金銭的報酬のインパクトの強さ>
 内発的動機付けの状態では、職務遂行が職務満足・内的報酬に直結していたが、職務遂行と職務満足の間に金銭的報酬が割り込んだ状態では、金銭的報酬なしには(かつて職務そのものから同期を得ていたにも関わらず)職務満足が得られなくなってしまう。安易に金銭的報酬によって職務満足を促すのは危険である。

5.3未来傾斜原理と職務満足
<終身雇用制と職場>
 
<見通しの意義>

 まとめ
 

6リーダーシップ
 古典的な科学的管理法、ファヨール など、「経営学がどのように起こったのか」→組織づくりが重要(バーナード)→意思決定をベースにしながら「組織はなぜ必要なのか」(サイモン、ゴミ箱モデル)
 前回から話題が展開。ミクロ組織論、組織行動論。前回は職務満足やワークモチベーションの基礎。

<資質アプローチから行動アプローチへ>
・資質アプローチ
 年齢、身長・体重などの外観、知能、様々なパーソナリティ特性により有能なリーダーを識別することを企図するもの。しかし、個人的な資質だけではリーダーと非リーダーの違い、有能なリーダーとそうでないリーダーの違いを首尾一貫して説明することができなかった。
・行動アプローチ
 リーダーシップ有効性の解明を企図した。

<行動アプローチにおけるリーダーシップの定義>
 リーダーシップとは、「ある状況のもとで、部下の目標指向的行動ないしは動機付けられた行動に対して、リーダーが自らの行動を通じて行使する対人的影響力」のこと。

リーダーシップ=⑴状況
        ⑵リーダーの部下に対する行動
        ⑶部下のモティベーション
 これらの3つが重なり合う部分。裏を返せば、金銭的報酬や職務特性など、リーダー行動によらない部下のモティベーションの決定要因がある。また部下の動機付けに至らないリーダーの行動もある。リーダーシップ論は職務満足やモティベーションに密接に関係のある研究。

6.1初期ミシガン研究
6.1.1リーダーシップの普遍理論
 状況特性の如何に関わらず有効なリーダーシップがあると考える理論
↔︎リーダーシップのコンティンジェンシー理論(状況特性に応じて有効なリーダーシップが変わってくると考える理論)

6.1.2初期ミシガン研究の発見事実
 高業績部門と低業績部門のリーダー行動間に見られる相違点を分析した。

<高業績部門のリーダー行動の4つの特徴>
・従業員中心的監督(↔︎職務中心的監督)
 職務中心的監督がタスクを分解、割当し、能率的実施方法を挙げてその方法通りに遂行されるかを監督するのに対し、従業員中心的監督は部下への心配りを重視し、各自が望む方法を容認し、権限委譲や意思決定への参加を容認する。
・全般的な監督(↔︎詳細な監督)
 詳細な監督が細かな指示をして部下の自発的活動を制約するのに対し、全般的な監督は目標を明確にする一方で細かな指示はせず、部下のアイデア、経験を生かす。
・部下と一緒に仕事することは少ない。
・部下の失敗や誤りを処罰的・批判的に扱わず、経験を通じての学習機会として支援的に対処
(ただし、リーダーの行動と業績に因果関係が本当にあるのか、は注意)

6.2リッカートの三原則とシステム4
 リッカートは、好業績をもたらす有効なリーダーシップと、それと関連する管理システムの特性を体系化しようとした。リッカートはこの管理システムを4つに分類し、うちシステム4(民主主義型)の経営組織が最も業績が高い、と主張した。
<理論的枠組の概要>
⑴原因変数;リーダーシップスタイル (これらの変数の存在が、)
⑵媒介変数;上司に対する態度、信頼感… (これらの変数をもたらし、)
⑶結果変数;欠勤率、業績指標 (これらの変数を導く)

6.2.1リッカートの三原則(=リーダーシップ・スタイル)
・支持的関係の原則
 各部下が職場に持ち込む背景・価値観・期待に対して支持的に振る舞い、部下が人間としての価値や重要性を感じられるように気をつけること。
・監督の集団方式or多元的重複集団構造における集団的意思決定
 リーダー(ミドルマネジャー)は意思決定をするときに、部下の意見を取り入れる「連結ピン」としての役割を担う。(スライドの図を見る!)
・高い業績目標
 上の2つの原則のおかげで、高い業績目標を掲げても不当な達成圧力だとは受け取られず、部下に受容される。結果、媒介変数の働きを通じて生産性や品質などの成果に結びつく。


 
<集団凝集性の概念>
 リッカートの三原則がなぜ高いパフォーマンスにつながるのかを考える上で重要な概念。集団凝集性とは、成員が集団に惹きつけられている程度のこと。集団がいかに一枚岩に慣れているか、を測る。
 集団凝集性が高い集団は、いわゆる良いチームだ、という印象があるが、高い凝集性は、高い業績目標と一緒にならないと高業績は得られない。(集団で一丸となってサポタージュ(サボり)のようなことが起こる)

<リッカートの三原則とシステム4の論理>
 リッカートの三原則とシステム4は、「高い集団凝集性→高い達成目標の提示と需要→高業績・低離職率」として見ることができる。

 小括
 ミシガン研究の膨大な蓄積を総括し、集大成する理論枠組を提示した。
 システム4にまつわる尺度を整備した。
 リーダーシップにとらわれず、管理システム全体(集団凝集性、連結ピン)にも着目した。
 組織体=小集団からなる多元的重複集合

6.3リーダー行動の次元構成
6.3.1 オハイオ研究のアプローチ
 まず、現実のリーダー行動を記述・測定する尺度を開発した上で、有効なリーダーシップ・スタイルを分析した。

6.3.2 構造づくりと配慮
「構造づくり」と「役割」は、リーダー行動を測定する上で最も使われる尺度である。
・構造づくり
 部下が目標の達成に向けて効率的に職務を遂行するのに必要な構造・枠組みを部下にもたらすリーダー行動。(マニュアルづくり、納期設定など、ハード部分を整備していく役割)
・配慮
 部下との距離を作らずに、職場での人間関係を生み出し尊重するリーダー行動。

6.3.3有効なリーダーシップ・スタイルとは?
 ミシガン研究では、従業員中心的監督(人間指向)と職務中心的監督(タスク指向)を両極としてどちらが良いのか検討したが、オハイオ研究は、構造づくり(タスク指向)と配慮(人間指向)は独立した2つの次元だとし、構造づくりも配慮も高いHi-Hi型のリーダーシップ・スタイルが普遍的に有効である、と結論づけた。

 小括
 オハイオ研究では、リーダー行動を構造づくりと配慮の二次元で構成されているとし、この二次元の両方が高いHi-Hi型の有効性を指摘した。

6.4フィードラーのコンティンジェンシー理論
 リーダーシップのコンティンジェンシー理論とは、適切なリーダーシップはその時々の状況で変わってくる、とする理論のこと。
 フィードラーは、状況要因(人間関係、タスクが構造化されている程度、リーダーの職位に基づくパワーの強さ)の組み合わせに応じて、リーダーが思うままに振る舞えるかどうか、は変わってくる、とした(状況好意性)。また、リーダーシップスタイルを人間関係志向とタスク志向の2つに想定し、LPC尺度を開発した。(LPC得点の高低に応じて人間関係志向のリーダーシップかタスク志向のリーダーシップのいずれを取るかを想定する。

 小括
 唯一最善のリーダーシップがある、というよりも状況に応じて効果的なリーダーシップが変わってくる可能性がある。ただし、リーダーシップの「メニュー」は広い意味で捉えると「タスク志向」と「人間志向」のことである。

7管理者行動論(予習だとよくわかんなかったから授業ちゃんと聞いてね!)
<管理者行動論とは>
 管理者行動論は、「管理者は現実の日常行動において一体何を行なっているのか」「どのような活動、どのような人々との接触にどれだけの時間を費やしているのか」を主題とする。
 企業のミドルマネジャー(連結ピンの立場)の人は実は部下との接触時間は少なく、管理者の、リーダーとしての役割はほんの一部であることがわかった。ではそれ以外でやっているのがなんなのか、部下とリーダーの関係にとらわれずより広く管理者の行動を研究するのが管理者行動論である。

『マネジャーの仕事』by ミンツバーグ
<管理者役割の10カテゴリー>
・象徴(対人)
・リーダー(対人)
・連結役(リエゾン)(対人)
・情報探査(モニター)(情報)
・(組織内情報伝達(情報)
・組織外情報伝播(スポークスマン)(情報)
・企業者(意思決定)
・問題処理(意思決定)
・資源配分(意思決定)
・交渉(意思決定)
→リーダーシップとは、⑴状況、⑵リーダーの部下に対する行動、⑶部下のモティベーション の重なり合う部分であったことを思い出そう。このうち⑵のリーダー行動は管理者行動の一部である。管理者行動とは、これに加えて上司や同僚、社外の人々への働きかけを含む。

7.1管理者行動論における研究方法と主要な発見事実
7.1.1カールソンの『重役行動』
…経営管理論、リーダーシップ論を背景とする
手法:ダイアリーメソッド
立場:社会人類学

<発見事実>
・管理者は大半の時間を他の人々との接触に費やしており、一人でデスクワークをしている時間は極めて少ない。
・対人接触におけるコミュニケーションの手段としては、公式文書、郵便、その他のメモよりも対面接触や電話による口頭コミュニケーションのウェイトがはるかに高い。
・部下との接触ばかりでなく他部門同僚との接触や上司・経営上層、さらに社外の人との接触、つまり自分の管轄下にいないユニットの外部への対外的活動にもかなりの時間を費やしている。
・活動の流れが小刻みに断片化されており、しかも個々の活動が極めて多様で、一見すると相互に脈絡がない。
→以上の結果は、様々な分析手法によっても観察される頑健なものである。管理者行動論の独自の貢献は、時間配分割合を鮮明に数字で残したことである。

7.1.2管理者行動論の手法
・ダイアリーメソッド
 特定の記入フォーマットに、活動が生じるたび、相手、場所、活動目的、コミュニケーション手段、接触時間などを記入する。
・活動サンプリング法
 時間帯をランダムに選び、その時間内で活動報告を何度か繰り返して記録する。
・観察法
 一定期間にわたって勤務時間中の管理者の活動全てを記録する。
・臨界事象法
 具体的なエピソードに即して、際立って効果的だったと回想されたり際立って非効果的だったと回想される管理者としての行動について、自由に報告ないし記述させて、その内容分析をする。ハーズバーグの動機付けや、フィードラーのコンティンジェンシー理論に用いられた。

7.2管理者の日常行動に見られる特徴
 管理者行動論の発見事実に関する3つの論点について考えていく。

7.2.1思考する時間がないほど断片化された活動パターンの是非(ステュアートvsミンツバーグ)
<断片化→思考時間欠如→非能率?>
・断片化
 頻繁な対人接触が次々と生じるため、個々の活動の持続時間が短く寸断され、一人でいる時間が少ないこと。
・カールソンの研究
・ステュアートの研究
 断片化は、沈思黙考の時間を削る非能率だ、として断片化を最初に明確化した。

<断片化→多様な情報・人々との接触→漸進的意思決定・能率的実施>
・ミンツバーグの『マネジャーの仕事』
 優れた管理者は、多様かつ頻繁な対人接触における口頭コミュニケーションを通じて、代替案の探求・評価・分析を実施し、次々と流入する情報を相互に関連づけながら次にとるべき代替案を考え、細かな決定を次々と漸進的に下す。

7.2.2受動的に相手に合わせるような活動パターンの是非
<操り人形(パピット)か?指揮者か?>
 管理者は、職務遂行アプローチ(受動的:職務要件に従う 能動的:職務を自ら形成する)と対人接触パターン(受動的:相手に合わせる 能動的:自分から働きかける)において受動性と能動性のダイナミックなバランス(パペットと指揮者の側面の共存)を保っている。
 日常接触は一見受け身なようでありながら。ネットワークをうまく維持して戦略的課題実現に能動的に邁進している。

7.2.3ユニット外部への働きかけ
 ミンツバーグとステュアートの研究結果によると、接触相手ごとの時間配分には、トップ(上司)、ミドル(管理者)を問わず対外接触のウェイトが大きい。故に、ミドルには指揮下にある人々の動機付けだけでなく、公式の権限関係によって命令・指示を与えることが出来ない人々を動員するに足るパワー行使が不可欠である。

<上方への依存・職務共有・権限委譲>
 ステュアートの研究によると、上司への依存度は、上司との関係の管理の自覚(ボス・マネジメントができるかどうか)によって変化した。
 できる管理者は、部下への権限移譲とともに上司への上方委譲をこなしている。

<水平的コミュニケーション>
 ステュアートの水平的な依存の程度を測定した研究から、「ユニットの外回りの整備」や「対外的境界の維持(防波堤)」が重要であることがわかった。
→部下との時間が少ないように見えて、上司や、他部門とのコミュニケーションは自分のユニットの運営において合理的な行動であった。

 小括
 管理者行動論の主要な発見事実を背景に、次のような議論が起こった。
・断片化→思考時間欠如→非能率 vs 断片化→多様な接触→漸進的意思決定
・パペット仮説 vs オーケストラの指揮者 ;受動性と流動性のバランス
・部下との接触時間 vs 上方・水平的接触
⇨これらは従来のリーダー行動を「分析的で計画的な統率者」や「部下の動機付け」という観点から考察していたリーダーシップ論にはなかった新しい視点である。

7.3アジェンダ設定とネットワーク
<コッターの『ビジネス・リーダー論』>
 ハーバード大の組織変革論の権威である。アジェンダとネットワークの重要性を示した。

7.3.1アジェンダとは
・アジェンダ
 5年から20年先までを見越した長期について組織、事業分野、財務状態がいかにあるべきかを曖昧ながら描くとともに、1年から5年にかけてのより特定化した諸目標や目標艦のプライオリティ、さらに1年以内のやや詳細な活動目的リストとして管理者の頭の中に明確に描かれているものである。
 アジェンダは、管理者が独自に練り上げたビジョンやシナリオに基づく自律的な問題項目から成り立っているものであり、公式計画とは異なる。曖昧ながらより長期の見通しを持つとともに、短期の目的においてはより柔軟であり、日々あるいは月単位のレベルでは管理者職務に即してより具体的である。
 また、アジェンダは継続的に想像され、漸進的により現実的なものに修正されるものである。
→管理者は、公式計画以外にアジェンダを描き、ネットワークから流入する情報に対してその内容を漸進的に修正する必要がある。

7.3.2ネットワークとは
 ネットワークは、アジェンダの実現を目指して公式権限関係よりも広範に構築される、情報、資源、支持などで依存する人々との協力関係であり、主として直接的な対面接触によって維持される。
 管理者がネットワーク(組織図にとらわれない仕事環境)を創出することで、部下は必要な情報資源・支持が容易に入手可能となり、部下の管理者に対する有能性の知覚、ひいてはアジェンダの実現に向けた部下達の有能性をも向上できる。
→管理者は、組織図にとらわれない人的ネットワークを構築する必要がある。

7.3.3 アジェンダとネットワークに基づく日常行動
パターン1:大半の時間を他の人々との接触に費やす.
パターン2:接触相手には上司・直属部下以外の多数の人々を含む。
パターン3:話題は広範囲に及ぶ。
パターン4:GMから質問することが多い。
パターン5:会話中は大きな決定は下さない。
パターン6:冗談や仕事以外の話も多い。
パターン7:多くの議論が事業や会社にとってあまり重要でないことが多い。
パターン8:命令を下すことは滅多にない。
パターン9:(ただし、)他の人々に影響力を行使しようとしている。
パターン10:受動性。他の人々と接する時間が事前に細かく設定することは滅多にない。
パターン11:活動の断片化。短くてとりとめのない会話が普通である。
パターン12:長時間勤務

 小括
 管理者行動論はリーダー行動を日常生活の基盤に遡って明らかにできていなかった。また業績変数の関係がほとんど考慮されなかった。
 コッターは、アジェンダとネットワークの概念で断片化と受動性を含む日常生活の全パターンを首尾一貫して説明した。
 業績評定に基づき、アジェンダ設定とネットワーク構築をより強力に推進しているGMは好業績を納めていた。(高いレベルのマネジャーは部下のモティベーションのみにとらわれず、アジェンダ設定、ネットワークに注意を向けている。)

7.4イノベーションを起こす管理者行動
<『超マシン誕生』のエッセンス>
・アイディアの創出と戦略的課題
・上方へのプロモーション:経営トップの説得
・対外的プロモーション:組織づくり
・資源獲得

7.4.1創発戦略を支えるミドルマネジャー
 不確実な反響や変化の激しい環境で有効な戦略には、創発戦略(逐次的な小さな意思決定の積み重ねからやがて大きな方向づけを生む)や、進化論的戦略がある。
 ミドルマネジャーの行動・役割は、部門レベルの進化・発展の構想を戦略的課題として描くことや、上司、他部門を内包する人的ネットワークを構築して政治力を発揮することである。
 「大きな絵を描いて、人を巻き込む」

7.4.2社内企業者としてのミドルマネジャー像
<カンターの『ザ・チェンジ・マスターズ』>
 人々からイニシアティブや革新を引き出すためには、戦略的計画システムや管理システムにもっぱら依拠してそれらをもっと精緻化するだけではうまくいかず、起業者精神を持つミドルマネジャーの行動様式をもっとよく理解することが必要になってきている。

・ミクロ変化マクロ変化モデル
 ミドルマネジャーの革新的思考や実験(ミクロ変化)が、彼ら自身の気づかなかったような外部環境の突然の変化にも適応しうる新たな戦略の形成に重要な役割を果たす(マクロ変化)。

<ミクロマクロ変化のプロセスモデル>
・問題設定の段階
 情報収集・利用の過程。現場の情報(MBWA)、政治的情報、デモンストレーション・データは、曖昧なタスクを具体的プロジェクトにする道具であり、それ自体でパワー行使の道具となる。
・連合体形成の段階
・動員段階
 
<社内政治を抑圧する政治力というパラドクス>
 イノベーション、革新的成果(従来の業務を超えたやり方)を実際に上げることができるマネージャは外部に対する働きかけを行っている。

8組織風土
<概要>
・組織風土研究の起源
 モティベーション研究の延長線上
・クリエイティビティを育む組織風土について

8.1 組織風土研究の起源
 風土とは、本来「地域ごとの環境(人間生活に影響を及ぼす環境の平均的状態)」という意味であるが、社会科学における組織風土とは、「主観的な環境」のこと。

8.1.1 Litwin & Stringer
LitwinとStringerは、組織メンバーのパーソナリティと彼らの知覚する風土のマッチングが彼らの態度に影響する、との仮説を立て、MBAの学生を対象に理想の「組織風土」について尋ね、それと彼らの社会的欲求との関連を分析したところ、仮説はほぼ実証された。

<Litwin & Stringerの組織風土の次元>
1.構造と制約
2.個人的責任の重視
3.温かい支持的な雰囲気
4.信賞必罰
5.対立と対立への寛容
6.業績基準と期待
7.組織一体感とグループ忠誠心
8.危険および危険負担
こういった質問項目を一人一人に聞いて、その組織の風土を図った。

<社会的欲求>
・達成動機
 競争的基準あるいは内在的基準において人より優れようとする要求
・親和動機
 温かい友好的な関係を求めたいという欲求
・権力動機
 人を統制したり、人に影響を及ぼしたいという要求
上に挙げたような組織風土がこれらの個人の社会的欲求に影響する。実験では仮説を支持する方向の効果が多く見られた。

8.2 クリエイティビティを生む組織風土(1)
8.2.1 シュンペーターの定義
 シュンペーターは、『経済発展の理論』においてイノベーションを最初に体系づけて理論化した。「イノベーションとは、新しいものを生産する、あるいは既存のものを新しい方法で生産すること」
 
<シュンペーターの定義>(先述の定義を以下の5項目に分けて説明
1.新しい財や、財の新しい品質の開発(プロダクト・イノベーション)
2.新しい生産方法と、財の商業的取り扱いに関する新しい方法の開発(プロセス・イノベーション)
3.新しい販路の開拓(マーケット・イノベーション)
4.原材料ないし半製品の新しい供給源の獲得(マテリアル・イノベーション)
5.新しい組織の実現(システム・イノベーション)
→イノベーションには、技術革新にとどまらない広範囲のものが含まれる。
 イノベーション=新結合(new combination)
         組み合わせが新しければ全てが新しい必要はない。
 イノベーション=市場で実現され、経済的成果をもたらすもの。単なる発見や発明ではなく、また新し
         いとか何か変化したことだけでもない。

8.2.2 ドラッカーの定義(経営学的アプローチからの定義)
 ドラッカーは、経営学的アプローチからイノベーション研究の端緒を作った。企業の目的は顧客の創造であり(顧客が製品サービスを払ってくれなければ企業は存在しない)、顧客創造のための基本的活動がイノベーションであるとした。
 イノベーションの本質=より優れた、あるいはより経済的な製品やサービスを創造することを通じて新たな顧客を獲得すること

8.2.3 マイヤーズとマーキスの定義
 新製品開発活動のプロセスのあり方を実証的に探った最初期の研究である。
「イノベーションは単なる新しいアイデアや概念ではないし、新しい装置の発明でもないし、新しい市場の開拓でもない。それらすべての活動が相互に影響を与え合う総合的なプロセスである。」
「イノベーションとは、アイデア創出から問題解決を経て、最終的には経済的・社会的価値の実現絵といたる、非常に複雑なプロセスである。」

<イノベーション・プロセスと3つの関門>
・魔の川
 研究・技術開発段階から製品開発段階に移行する際に生じる困難
・死の谷
 製品開発段階から事業化段階に移行する際に生じる困難
・ダーウィンの海
 事業化段階を無事に突破して成果獲得に至るまでに生じる困難

<イノベーションの種>
・テクノロジー・プッシュ
 技術の進歩が新しい製品の開発を刺激し、結果としてイノベーションが生じる、という考え方
・ディマンド・プル(必要は発明の母ということ)
 市場のニーズが端緒になって研究・技術開発活動が刺激され、その結果としてイノベーションが生じる、という考え方
→市場ニーズも技術革新もイノベーションの必要条件で、単独では十分条件とはならない。ニーズと条件が噛み合い、刺激し合うことでイノベーションは実現する。

< 研究・技術開発のマネジメントと「魔の川」>
・研究・技術開発
 新製品を開発するための基礎となる要素技術を生み出す活動
・魔の川
 ”有望技術の創出”の関門(投資に見合っただけの有望技術を生み出すことが難しい)
 ”新技術の評価”の関門(技術の死蔵)

<製品開発のマネジメントと死の谷>
・製品開発
 顧客に売って利益の出る具体的な新しい製品を生み出していく活動
・死の谷
・顧客ニーズとの乖離

< 事業化のマネジメントとダーウィンの海>
・事業化
 新しい製品の市場を開拓・拡大すると同時に、収益を安定的に確保するための仕組みづくりを行う活動
・ダーウィンの海
 新たに参入してくる競合他社との競争に勝ち取っていくことが難しく、そうした激しい競争の中で収益を確保することが難しい。製品が有望であればあるほど新規参入も増加し生存競争が激化するので、優れたビジネスモデルの構築が重要である。

<クリエイティビティの定義>
・組織にとって(a)新規で(b)潜在的には有用な製品、実践、サービスまたは手順に関するアイデアを開発すること。
・ありとあらゆる職務、組織におけるありとあらゆる階層でクリエイティブなアイデアは生み出されること。
・イノベーションとの違い
 クリエイティビティ=アイデアの開発=イノベーションの最初のステップ

 小括
・イノベーションの定義
 アイデアの創出にとどまらず、最終的には経済的・社会的価値の実現をするもの
・イノベーションのプロセス
 イノベーションの種→研究技術開発→製品開発→事業化→成果獲得
・イノベーションの難しさ
 魔の川、死の谷、ダーウィンの海
・クリエイティビティの定義
 組織にとっては(a)
新規で(b)潜在的には有用な製品、実践、サービスまたは手順に関するアイデアを開発すること

8.3クリエイティビティを育む組織風土⑵
8.3.1クリエイティビティを育む組織風土を測る尺度
・KEYS尺度 by Amabile
スライド28枚目参照

<KEYSの構成概念>
①クリエイティビティの奨励
1.組織による奨励
2.上司による奨励
3.仕事グループからの支援

②自律性or自由
 日々の仕事において高い自律性があり、自分の仕事やアイデアについて当事者意識があり、コントロールできているという感覚を持てるとクリエイティビティが育まれる。(内発的動機づけと深く関わっている)
 
③資源
 プロジェクトに対して資源が適切に配分されていること。イノベーションに影響。

④プレッシャー(阻害要因)
 プレッシャーは2つの対立する結果を生む。過度の仕事負荷・タイムプレッシャーはクリエイティビティを損ねるが、タイムプレッシャーが重要で緊急のプロジェクトに伴う必要なものという認識を伴うと、仕事におけるチャレンジという認識により、クリエイティビティとモティベーションにつながる。
 挑戦的な仕事→クリエイティビティ上昇
 仕事負荷のプレッシャー→クリエイティビティ低下

⑤クリエイティビティの組織的障害(阻害要因)
 組織内の対立、保守主義、厳格で形式的な経営構造

8.4クリエイティビティを育む組織風土⑶
 日本のビジネスパーソン3000名の調査から見える組織風土とクリエイティビティの関係について
<分析フレームワーク>
KEYS(クリエイティビティを発揮しやすい風土)に個人特性(クリエイティビティを発揮しやすいパーソナリティ)が加わることで、成果(クリエイティビティ、イノベーション、生産性)が得られる。

8.4.1 クリエイティビティを発揮しやすいパーソナリティ
 Creative Personality Scale (CPS)
 16個の形容詞(有能、利口、知的…)について、自分に当てはまれば1、当てはまらなければ0とし、単純合計で測る。

8.4.2 組織風土(KEYS)
・上司による奨励
・仕事グループからの奨励
・組織的奨励
・組織的妨害
・十分な資源
・仕事負荷のプレッシャー
に関する問の答えの単純合計から分析する。

8.4.3 成果
・Creative Performance
・Innovative Performance
・Productive Performance
に関する問の答えの単純合計から分析する。

8.4.4 分析結果
・CPSとクリエイティビティには正の関係があった。
・CPSの高い人は、KEYSの各次元が高い段階ではKEYSの各次元が上昇することで成果も大きく反応した一方で、KEYSの各次元が低い段階ではKEYSの各次元が多少上昇してもあまり大きな反応はせず。
→中途半端な奨励は無意味。やるならとことんやらないと意味がない。プレッシャーも逆に強い方が良い結果をもたらす。
・CPSの低い人は、KEYSの各次元が低い段階ではKEYSの各次元が上昇することで成果も大きく反応した一方で、KEYSの各次元が高い段階ではKEYSの各次元が多少上昇してもあまり大きな反応はせず、むしろ成果は下がる傾向にあった。
→過度な奨励が悪い意味でのプレッシャーとなる。

9組織文化
<概要>
・企業文化の再発見
・組織文化の定義
・組織活性化とぬるま湯

9.1企業文化の”再”発見
9.1.1『セオリーZ-日本に学び、日本を超える』
 『セオリーZ』は、日本企業の米国市場での躍進を背景に、「なぜ日本企業は強いのか」「米国の企業と社会を再生するために日本企業から何を学べばいいのか」という問いに対する明確な答えを与えた。

<タイプJとタイプA>
まず、7つの観点から日本企業(=タイプJ)と米国企業(タイプA)の特徴(理念型)をあぶりだした。

<タイプZ>
・米国企業の中にも、タイプAよりもタイプJに似た企業があることを見出しタイプZと名付ける。タイプZは、細やかな人間の機微に触れた経営手法を特徴とする。セオリーZとは、タイプZ企業の経営フュ方の背景にある経営理念である。(「信頼」「行き届いた気配り」「親密さ」がキーワード)

<セオリーZの主張>
・日本型組織およびそれを支える経営理念は、日本に限定されたものではなく、むしろ米国企業が古くから実践してきたことの中に見出される。
→再生の”お手本”は案外身近なところにある

9.1.2『エクセレント・カンパニー』
<超優良企業の基本的性質>
1. 行動の重視
 現場を無視した過度の戦略分析・市場分析による「分析マヒ症候群」を避け、「まずやってみる」という実験精神を尊重する。
2. 顧客への密着
 顧客との信頼関係を築き上げ、また顧客からのフィードバックによってサービスと品質向上のアイデアを得る。
3.自主性と起業家精神
 従業員の自主性と実験精神および社内での健全な競争を尊重し、またイノベーションを生み出していく過程で生じがちな失敗を許容する雰囲気をもつ。
4.人を通じての生産性向上
 生産性向上の手段として高度のテクノロジーの採用よりも信頼関係で結ばれた従業員による貢献を重視する。
5. 現場重視と価値観に基づく実践
 上層部が現場を重視し、また基本的な理念を重視する。
6.基軸から離れない
 安易なM&Aや事業の多角化を避け、熟知した業種に固執する。
7.単純な組織、小さな本社
管理階層を薄くし、本社管理部門を小さなものにとどめる。
8.中央集権と権力分散の共存
 自主性と分権を強調する一方で、企業の中核的な価値観に関しては中央でコントロールする。

<『エクセレント・カンパニー』の主張>
・超優良企業は、日本や西独相手に好業績だが、日本の真似をしているわけではなく、日本との競争が熾烈になる前から独自のやり方で経営上の優秀さを追求・維持している。

<『セオリーZ』と『エクセレント・カンパニー』の意義>
・これまで経営理論が軽視しがちだった組織の持つ固有の文化と、それがもたらすパフォーマンスへの影響への関心が上がった。タイプZやエクセレント・カンパニーは独特の企業文化・組織文化により優れた好業績を出していた。
・セオリーZ
 タイプAからタイプZになるには、「一貫した経営理念と文化を文書化などを通して明確化し、全社的に共有していくべき。
・エクセレント・カンパニー
 同一の価値観や信念を共有した一枚岩的な組織、熱狂的ば信者を数多く要する宗教団体にも似た組織として描写した。

9.1.3『シンボリック・マネジャー』
国際競争における米国の不振を背景に、アメリカ社会と企業の再生の手がかりを米国の超一流企業の分析を通じて明らかにした。

<強い文化の構成要素>
・理念
 明確に示された基本的な経営理念や信念、価値観
・英雄
 経営理念や中核的な価値観を体現し、従業員の「お手本」となり、また従業員の行動意欲を掻き立てる役割モデルとなる人々
・儀礼と儀式 
 企業独特の価値理念や行動規範を具体的な形で示す儀礼とセレモニー
・文化のネットワーク
 会社に特有の文化的価値やメッセージの意味を伝え、それをさらに強化する上で重要な意味を持つ、非公式の情報チャネル。独自の価値や理念が全社的なものとして共有され、一体感を高めるように機能する。

<『シンボリック・マネジャー』の主張>
 経営者は一時的流行につられて昇進させるのを止める必要がある。成功するためにはその代わりに企業の中心的な価値を体現している人々を昇進させなければならない。
 米国企業の創立者たちは強い文化が成功をもたらすと信じていた。米国の偉大な会社を作り上げた原点に戻る必要がある。

9.1.4組織文化の”再”発見の意味
 これ以前も「組織には独特な文化があり、組織メンバーに影響を与える」ことは認識されていたが、経営成果に対しての影響は軽微だと思われていた。またこれ以前の主な経営学は、組織構造や組織環境などの要因をハードデータとして収集し、コンピュータで統計処理するものであった。(経営学=ハードサイエンス?)
 しかし、1980年代の日本企業の躍進は組織構造・組織環境だけでは説明できず、文化に着目した研究が主流になっていった。(異国の企業ということで文化要素に目がいったが、単なる「文化の違い」ではすまされなくなった。

9.2組織文化の定義
9.2.1 Scheinの『組織文化とリーダーシップ』
 Scheinは、各国でのコンサル・指導研究により多国籍企業はそれ自身の文化を持っており、各国のローカルな文化を乗り越えるor修正してしまうことに気づき、組織文化に関する研究を開始した。

<基礎的仮定のパターンとしての文化>
 あるグループが問題に直面し、新しい方法で解決すると、その新しい方法を学習し、発展させて新しいメンバーにもこれを教え込む。結果、あるグループに共有される行動の準拠枠や価値観となる。
 組織文化の研究対象は、人工物、心情・価値観、基礎的過程、の順にレベルが深くなっていく。

・人工物
 歩き回りながら目にし、耳にし、感じることなど。
 しかし、表面的に知る範囲では文化を理解できたとは言えない。 だけでは文化を解読できない。 に話しかけ、質問しなければならない。
・心情・価値観(標榜されている価値観)
 人工物のレベルから深く知るには、組織が価値を置く事柄について をすることが重要である。同じ価値観を標榜しながら行動の不一致がある場合があるように、より深いレベルの思考、認識が顕在的な行動を駆り立てているのではないか。
・基礎的仮定
 より深いレベルを理解するためには、組織の (創業者らの主なリーダーの価値観、信念、仮定)を考慮する必要がある。
 文化の本質は、集団として獲得された ・ ・ であり、組織が繁栄を続けるにつれてそれらが共有されて当然視されるようになったものである。

<リーダーシップの役割>
 組織文化はリーダーによって創造されるものである。逆に言えば、リーダーシップの最も決定的な機能は文化の創造、文化のマネジメント、文化の破壊である。

9.3組織活性化とぬるま湯
 日本では、オイルショックを背景に、組織活性化が叫ばれるようになった。これは、業績伸び悩みの中、高業績だった頃の活気ある組織状態を取り戻したいという意識によるが、業績の浮沈と組織の活性化状態は単純に結びつくのだろうか。組織が不活性であることは組織がぬるま湯(現在の境遇に甘んじてぬくぬくと暮らすこと)であることと同義だろうか。
 ぬるま湯と充実感についての研究では、ぬるま湯と充実感には負の相関があるように見える一方で、充実感を得ている人について見ると実は半々であった。
→充実感とぬるま湯感は同居しうる?

9.3.1 体感温度仮説
・ 性向
 現状に甘んじることなく変化を求める傾向。現状を打破して変化しようとする傾向。
・システム温
 組織のシステムがメンバーの変化を受け止め、あるいは促す仕組み、制度にどの程度なっているのかを表す指数。
・体温(組織メンバーの組織人としての変化性向)
 組織のメンバーが現状を打破して、変化をもたらそうとする意欲がどの程度あるのかを表す指数。
・体感温度(システム温-体温)
 職場の雰囲気をぬるいと感じる人の方が熱いと感じる人よりも体感温度が低い。

9.3.2 組織のコーナリング
・スローイン・ファーストアウト 
 見通しの悪いカーブに入る手前で早めにブレーキを踏んで(希望退職者募集と大量応募)スピード(システム温)を落とす(スローイン)ことで、一時的にシステム温が低下して、ぬるま湯比率が上昇する。見通しが悪いぶん満足比率は低下し、退出願望比率は上昇する。
 しかし、カーブを曲がり切る前にアクセルを踏んで(新入社員の大量募集)スピード(システム温)をあげると、ぬるま湯比率はすぐに戻る。そしてカーブ(新体制の発足)を曲がり切ってしまえば道が開けて見通しが良くなり、満足比率は上昇する。

 まとめ
・企業文化の”再”発見
 80年代の日本企業の躍進から関心が高まる。
・組織文化の定義
 組織文化を理解するために必要なこと
・組織変革とぬるま湯
 組織のコーナリング
 個人と組織の温度の差分で理解する。

10組織学習
組織学習
…新たな知識や価値観の獲得によって組織の顕在的および潜在的な行動可能性を拡大させること。組織学習は個人学習の総和ではないことに注意。

<概要>
・シンプル・ループ学習とダブル・ループ学習
・実用理論と標榜理論
・組織学習と組織内地図

10.1 シングル・ループ学習とダブル・ループ学習
・シングル・ループ学習
 組織へのロイヤルティが高く、勤勉で、協力的だが、自己防衛的な人材や組織に見られる、線型的な思考。自己完結的で、クローズド・システム。
 既存の方針を維持・継続したり目的を達成したりするプロセス。
・ダブル・ループ学習
 事象や状況にふさわしい情報と知識に基づいて行動し、自由闊達な議論、臨機応変な意思決定、変化を奨励する人材や組織に見られる非線形的な思考。他者に学ぶオープンシステム。
 自分の作動プログラム、基本方針や目標などを見直すシステム。

 ダブル・ループできない組織は、行動戦略がWin-Loseゲームに基づいた行動、面子を潰さない行動となる。一方、ダブル・ループできる組織は、常にオープンな議論に基づいて物時を決定するので、隠し事はなくなり、問題解決が図られていく。

10.2実用理論と標榜理論
<行為の理論>
・実用理論
 人々が実際の行動で使用する理論
・標榜理論
 人々が自ら信奉する考えを人前で標榜するという行為理論

<物事を行う時の思考法>
・モデルⅠ(防衛的思考)
 抜本的で破壊的な変化に対して我が身を守るために実用理論として立ち現れる。
 A.グローブの例はモデルⅠを修正できずに標榜理論を阻害する結果となった。
・モデルⅡ(建設的思考)
 標榜理論として立ち現れる(だれもが知ってはいる)が、実用理論としていることは稀。

 モデルⅠは、自分がモデルⅠに従っていることに気づかず、周囲の人も同じくモデルⅠに従っているという意見を言わない(空気を読む)ため、修正が難しい。
 実用理論は人間の意識の深いところに習慣として埋め込まれており(生来備わる自己防衛的な思考・論理)、社会化プロセスを通じて長年にわたり強化されてきたものである。
 標榜理論と実用理論が一致しないことはしばしばであり、これが原因で組織が危機になっても標榜理論と矛盾する実用理論を使い続けることになる。
→ダブル・ループ学習を妨げるものに気づかなくなる。
→ダブル・ループ学習ができるようになるためには、学習のための学習や組織への介入(αテクノロジーの例)が必要である。


10.3組織学習と組織内地図
<概要>
 元来、組織文化と組織学習には相関があるとされてきたが、実証研究には乏しく、詳しい相関分析によっても明確な関係を明らかにすることはできなかった。
→これまで「組織文化」と呼ばれてきたものは①組織文化(組織内で共有され、メンバーの行動に大きな影響を与えうる組織価値や組織特性)と②組織内地図(組織文化をメンバーが消化した上で、具体的な活動を行うために自分なりに必要かつ利用可能な形に加工し直したもの)を混同していたのではないか。
※ここでは組織学習の主体を(組織そのものではなく)組織メンバーとする。

<組織内地図の重要性>
 1996年の実験では組織文化に関わる項目と組織学習に関わる行動の項目にほとんど有意な相関関係はなかったが、組織内地図と組織学習の間には有意な相関関係があった。(「組織文化度」→「地図形成度」→「学習活発度」というパスが有意)高次学習の形成には組織文化そのものではなく、メンバー各自が組織内に漠然と存在する共有価値や特性を一旦消化し、組織目標実現のため自分なりに必要かつ利用可能な形に加工しなおすといったメンバー側の組織価値の加工度の向上によって可能になった。
→組織文化は、組織内に存在する組織価値や特性と、組織メンバーによって利用可能な形に加工された組織価値(組織内地図)に区別される。

11組織デザイン


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