人の心を動かすために必要な「ずらす」力
来てほしい、読んでほしい、買ってほしい。
私たちは日々「相手にこうしてほしい」という意識をもって仕事をしています。
しかし、最終的に人を動かすことを考えたとき、実は直線距離で突破しようとするより、少しずれた道を遠回りした方が近道の場合が多いように感じています。
例えば移住者を増やしたいと思ったとき、ダイレクトに「移住者を増やすためのイベント」をやってもなかなか響かないどころか、まず人が集まらないということはよくあります。
私も含め、まわりの友人もUターンやIターンに興味がある人たちは一定数いるにも関わらず、そうしたイベントに足を運んでいる人というのはあまり聞いたことがありません。
これは認知されていないというよりも、「行きたい」と思わせるための「ずらし」が足りていないことが多いのではないかと思っています。
多くの人はなんとなくこうだったらいいなあというぼんやりした願望しか持っていないので、突然「現地の仕事が探せるブースがあります!」「すぐに借りられる家を紹介します!」と言われてもピンとこないもの。
それよりも、あえてテーマを少しずらしてその地方ならではの文化や注目の企業・ブランドをキュレーションして紹介するイベントを重ねる方が、回り回って移住者増加につながるはずです。
そしてこの「ずらし」こそが編集の力であり、これからメディアが担っていくべきは、ブランドの魅力を自分たちの読者に合わせて「ずらす」ことで、新しいファン開拓のチャネルを用意してあげることなのではないかと思います。
ただ、そうした施策を成功させるためにはブランド側の我慢も大切で、PVやCVRといった短期的な数字を見るのではなく「この人たちの編集力に任せる」と信頼しきれる相手と組むことも重要です。
ブランドというのはもしかすると、「買う」にいたるまでの道のりの中で、たくさんの「ずらし」を重ねることで醸成されていくものなのかもしれません。
いつも伝えたいことはたったひとつで、そのたったひとつを伝えるためにいろんな「ずらし」をいれていく。そう、まるで少しずつ彫り出すことで、芸術作品をつくるように。
そんな風に、じっくり長く愛されるものを作ることに関わっていきたいなと思うここ最近です。
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(Photo by tomoko morishige)
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