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私たちが生きる「消費社会」について

年に一度、夏の時期になると青山ブックセンターさんから選書フェアのオファーをいただく。今年も8月10日から9月30日まで、私が選んだ一冊と選書理由が店頭に並んでいる。

毎月自分が読んだ本を振り返っているが、この選書の際は一年分を振り返る。普通の本屋さんではなかなか見かけなさそうな、見かけたとしても手を出しにくそうな、それでいて読んでみると世界の解像度が上がるような、そんな本を毎年選んでいる。

その中でも今年は、特に力を入れて「読んでほしい」と思う本を選んだ。

EC上には推薦コメントは掲載されていないので、ぜひ青山ブックセンター本店の売場で読んでいただきたい。

この本が刊行されたのは50年以上前の1970年であり、「消費社会」を考える上で基礎となる古典的名著である。しかし語り口が難解で概念的なこともあり、私も長らく読了することなく本棚の肥やしになっていた。

しかし今年に入ってから再挑戦してみたところ、難解だと思っていた内容が現代の事象に翻訳されたかたちでするすると自分の中に入ってきた。そして自分なりの言葉に翻訳しながら読み進めると、ジャン・ボードヤールが消費者界の到来を予見してから50年間、その構造は変わることなくむしろ強化されていることを理解した。

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(読書中にこんなに大量のメモをとったのは久しぶり。走り書きなので字が汚すぎて自分でも読めないけども。。。)

そして読了後の私に訪れたのは、消費社会という魔物に対する人間の存在の無力さであった。私たちはこれまで多くのものを積み上げてきたように見えて、ただ生産→消費→破壊のサイクルを回してきただけだったのだ。この仕組みはもはや人間の手を離れ、誰にも止められない魔物と化している。そしてこの虚構によって生み出される「憧れ」「欲望」といった副産物こそが神にとって変わる存在となり、消費は「神話」の構造をとることとなった。

通読してから改めてこの本のタイトルを見ると、その意味が痛切に感じられる。「消費社会の神話と構造」。このタイトルですべてを言い切っている、と。

宗教的な世界観から消費社会へと社会構造が変化したように、消費社会も極限まで肥大化しその構造を保てなくなってしまえば、また別の仕組みにとって変わられるのかもしれない。しかし今のところ、私たちは絶望しながらも消費社会を構成する一員として生きていかねばならない。構造自体を変える力はなくとも、自分の志向する方へ向かうよう抗っていくしかない。

そのためには、まず消費社会がどのような構造によって動いているのかを理解しなければならない。

「消費社会の神話と構造」は、そのための基本の書であると私は考えている。しかし、前述したように難解な書籍でもあり、一人で読もうとすると途中で挫折する可能性も高い。

そこで、この本を読み理解したい人向けに、私なりの解釈を思考の補助線として伝えることで、少しでも理解の一助となるような会を作ることにした。

私は学者でもないただのいち読者に過ぎないので、あえて「解説」ではなく「読書会」というかたちをとっている。イベント内で話すのはあくまで私なりの理解であり、異なる解釈もあるはずだ。
また書籍の中に「正解」や「ではどうするか」が書いてあるわけではなく、仕組みを理解した上でどう行動するかは各人に委ねられている。私自身も答えが出せていないテーマが多々散りばめられており、その「答えのなさ」も含めて会の中で参加者全員で考えていきたいと思っている。

なおこの本は10分、15分で簡単に総括できるような内容ではないため、独自に4つのテーマを設け、4回に分けて解説とディスカッションをする構成としている。前半で私なりの解釈を伝え、後半ではZOOMのコメント欄を通しててそれぞれの疑問や仮説を聞きながら意見交換をしていく。最終的に「消費者界の神話と構造」を自分で読み、それぞれの視点や思考をかたちづくることを目標としたい。

消費社会の核を捉え、表面的なトレンドに惑わされないためにも、この本を読む人を一人でも増やしていければと思う。

【イベント概要】

▶︎対象書籍
「消費社会の神話と構造」
※購入は必須ではありませんが、書籍が手元にある方がより理解が深まるかと思います。
※事前に読了する必要はありませんが、目次や序盤だけでも目を通しておいていただくことをおすすめします。
▶︎参加方法:Zoom
※URLはPeatixページに記載しています
▶︎スケジュール(全4回)
①9/27(月)18時〜19時半:「現代社会における生産、消費、破壊の構造」
②10/4(月)18時〜19時半:「“自分自身になる“とは何か?」
③10/11(月)18時〜19時半:「広告、時間、イデオロギー」
④10/18(月)18時〜19時半:「すべてが消費される世界で」

【申込ページ】

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134字

余談的小売文化論

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「知性ある消費」をテーマに、現代の消費行動や理想論と現実的な問題のギャップについて考え、言語化しています。「正解」を語るのではなく、読み手…

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