メディアとコマースの境目が曖昧になっていく時代だから
先日一部界隈で話題になった山本一郎さんの「ほぼ全部ステルスマーケティングの糸井重里『ほぼ日刊イトイ新聞』の憂鬱」という記事。
ここでなされている指摘は一企業の問題ではなく、今後メディア業界と小売業界どちらもが直面する問題なのではないかと思います。
以前「ほぼ日ブランドのすごいところ。」という記事を書いたのですが、ほぼ日自体はもともとメディアであり、そこから手帳をはじめとした様々な商品が生まれ、今や「ほぼ日」としてのブランドを確立するまでに至っています。
この流れは必然で、いいものを見つけて発信していると自分も作りたくなってくるんですよね。
それは小売の世界を見ていても、百貨店や大手セレクトショップが自分たちのオリジナル商品に力をいれていることから明白です。
MERYやキナリノといったキュレーションメディアもコマース機能を早々につけましたし、雑誌も今や通販カタログと見間違えるほど誌面上での販売に力を入れ始めています。
①発信力をもつ
②セレクトした商品を販売する
③自分たちのオリジナル商品を開発・販売する
という流れはメディアも成長し売上を大きくしなければならない以上、不可避なのです。
その先端をいっているのがほぼ日であり、現在のほぼ日サイトがステマに該当するかどうかはかなりグレーなのではないかと思います。
(※これまで私が仕事で関わってきた案件をベースにした見解です)
なぜならばここで販売されている商品はほぼ日のコンテンツとすべて連動しており、オリジナル商品(のはず)だからです。
一般的に考えても社員が自分のブログやSNSで自社の商品を紹介する際にいちいち「スポンサード」とつけたりしませんし、むしろ最近は想いを書いた後にイベントや新商品の告知をするといった流れも増えてきました。
書いた本人と対象物の関係性が直接的であり、商品の購入=宣伝した人の利益になると誰の目にも明らかなものはわざわざ「スポンサード」とつける方が不自然なように思います。
ただこれがグレーなのは、いかようにも抜け道があるからです。
例えばこのやり方がOKだとすれば、記事広告のプランにメディアの名義だけ貸すオプションを作れば、オリジナル商品として「スポンサード」の表記なしにどれだけでもステマ記事を仕込むことができてしまいます。
もしそうした企業がでてきてしまったら、最近世間を騒がせているキュレーションメディア問題と全く同じ道をたどることになるでしょう。
逆にメディア→コマースという流れではなく、コマースがメディア化するという流れも同時に起きています。
その筆頭といえるのが「北欧、暮らしの道具店」。
オンラインのショップ上で商品ひとつひとつのストーリーや使い方の例を丁寧に説明することで、そうした読みごたえのある"記事"を読んだ人が思わず購入してしまうという流れを作り一躍有名になりました。
ここはスポンサードコンテンツの作り方もうまくて、記事広告だとわかっていても思わず読んで商品を書いたくなってしまいます。
(参考:【BRAND NOTE】第3話:やさしい色合いに一目惚れ!大好きになった「暮らしに寄り添う」カメラ)
北欧、暮らしの道具店ではこうした「スポンサード」と名がついたものと別に「スタッフの愛用品」というコーナーもあります。
こちらはスポンサードコンテンツとは異なり、本当にスタッフのみなさんが愛用している商品を紹介するコーナーですが、実はすべてサイト上で販売されているもの。文末にリンクも貼ってあります。
前述の山本一郎さんの記事をベースにするなら、このコンテンツも本来「スポンサード」的な表記をするべき、ということになります。
しかしほぼ日にしろ北欧、暮らしの道具店にしろ、中の人たちが熱烈に自分たちのブランドを愛し、商品も「いい!」と思えばこそ作ったり取り扱ったりしているのであり、自社メディア内で自社の商品購入へ促すのは当たり前のように思います。
ただそこに「儲け主義」が入ってくると、猛烈なスピードで邪悪になる可能性を孕んでいる。
この2社はかなり先進的な事例ですが、すぐにこういう流れが主流になる時代がきます。
そうしたときに私たちはメディアとコマースの境界が曖昧になっていったときのルールをどう考えるべきなのか。
まだ悪用して儲けようとする人たちがでてこないうちに、儲けのために暴走する不幸が起きないうちに、それぞれが考えていくべき問題なのかもしれません。
(Photo by tomoko morishige)
私のnoteの表紙画像について書いた記事はこちら:
人のフィルターを通して見る世界
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